ウイスキーと語る

兼業農家のグラフィックデザイナーです

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夢野久作の瓶詰地獄を読んだ。読んだのは4度目ぐらいだ。記憶が虚ろだけれど、雑誌に掲載されていたのが最初だったと思う。このころ、聖書に嫌悪感を持った。

最初に読んだときも、二度目も、煮え切らない気持ちになった。意味がよく分らなかったからだ。ちょっとしたきっかけからもう一度読んで見ようと思って、読んだ。

瓶詰地獄を読みたい方は、青空文庫や、下記で読める。
http://www.geocities.jp/studiotakeda/novel/binzume_jigoku.pdf


完全にネタバレするので、まだ読んでない人は、先を読まないほうがいいかも知れない(^^;

第二の手紙で、鉛筆が無くなりかけて、もうあまり長く書けないと記している。しかしこの手紙内で1本のビール瓶を流したと書いているから、これは2通目の手紙である。

鉛筆がないのに、第一の手紙のような長い手紙を書けるはずがない。

つまり、最後の手紙は残り少ない鉛筆で書いた第三の、ごく短い手紙ということになる。「今から死にます」という第一の手紙は、最初の手紙ということになる。早い話が、兄妹は自殺を図ったが死ななかった。

ずっと前に読んだとき、わたしはそう思った。

しかし、改めて読み返してみると、第一の手紙が極めて不自然である。なぜなら、助けの船が現れた、まさにその時にリアルタイムで書いているからである。しかも両親が白いハンカチを振っている。これは幻覚で、狂気に満ちている。おそらく二人の末期だったはずだ。それに、もしも手紙の内容が真実なら、ビール瓶は回収されているはずで、島に打ち上げられるはずがない。

第一と、第二の手紙に不自然な点がもうひとつある。

まず、第一の手紙には「私たちが一番はじめに出した、ビール瓶の手紙を御覧になって、助けに来て下すったに違いありませぬ」と書かれている。

これが最初の手紙ではないという意味である。

しかし第二の手紙にも、「お父様とお母様にお手紙を書いて大切なビール瓶の中の一本に入れて、シッカリと樹脂で封じて、二人で何遍も何遍も接吻をしてから海の中に投げ込みました」と書かれている。

つまり、これが2通目の手紙だと明確に宣言されている。

あとは消去法だ。2通目の手紙が第二の手紙なら、第一の手紙は、少なくとも最初ではないことが明らかになっているから、3通目ということになる。消去法により、第三の手紙は最初の手紙である。

問題は、第二の手紙で鉛筆がなくなりかけて、もう書けないと言っている点だ。第一の手紙は、船が現れてから急いで書いているし、長文である。第二の手紙の後に書いたなら不自然だ。

ずっと前のわたしは、この矛盾を解決できなかった。

今のわたしはあっさり解決できた。第二の手紙と、第一の手紙は繋がっている。死を覚悟した後に書いているから、大切なビール瓶(水差しに使っていたと思われる)を両方とも流してしまっても構わない。一度に書いた手紙を、2本の瓶に分けて、同時に流した。助けの船が現れたのは、太郎の妄想である。


第一の手紙に、たったひとつだけしっくり来ない部分があった。

>手紙を詰めたビール瓶が一本浮いているのを、ボートに乗っている人々
>が見つけて、拾い上げて下さるでしょう。

一本浮いている? 二本じゃないの?
この矛盾にしばらく躊躇ったが、手紙を読み返してみたら、第二の手紙は、若い男性なら誰にも見られたくない内容である。とくに親には。第二の手紙だけは、別の場所に投げ捨てられたものだ。


それにしても、推理小説作家は、作品中に回答を記す責任がある。なぜこんなに短い小説を、こんなに何度も読み直さなければならないのか(笑)

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