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さて今日は僕の弟子たちの話をしようと思います。
今学校でクラスにいるのは初心者のガキンチョ2人入れて全部で6人です。ガキンチョはかわいいけどとっても大変です。学校によっては2人先生がいて1人はガキンチョ中心に、もう1人が日本で言う音大レベルの生徒、と分けられている場合もありますが、うちの学校はホルンのクラスが出来てまだ6年位なのでそういう贅沢(?)は許されません。
一番ちっちゃいのが10歳のマティス君。ホルンを始めてまだ2年目ですが去年飛び級をして第一過程の2年目に入ってしまいました。ところがそれですっかり安心したのか今年はあんまりまじめに練習してくれない。トホホ。音色はとても良くてリズム感も抜群ですがタンギングが『?』で、毎週口を酸っぱくしていってもなかなか改善が見られず...
次が11歳のオスカー君。彼はホルン始めていま3年目ですが去年飛び級したマティス君に追い着かれてしまった。それが結構ショックだったらしくて去年の学年末試験のときは呆然としてました。彼はお父さんが教育パパで『子供の音楽の勉強を見てやれるように今年からソルフェージュを始めました!フンガー!』という感じで意気込みが違います。だから手間を惜しんで連絡帳に何も書かなかったりすると次の週『先生、先週連絡帳に何も書いてなかったのでどこを練習させてよいのか分からなくて困りました。きちんと書いて下さい。』と突っ込まれてしまいます。オスカー君はとってもかわいくて僕のコンサートを聴きに来た次のレッスンの時に耳元で『昨日先生がソリストとしてステージに出てくるの見たよ。周りの人にあれが僕の先生なんだ、て自慢したんだよ。』とか言ってくれます。彼はこつこつタイプで着実に進歩していますがリズムに問題あり。どうしたものか。
とは言っても2人のガキンチョを見ているとやっぱりホルンは(というか金管楽器は)ヨーロッパのものだなあと思います。楽器を持って初めて音を出したときにまったく無理がない。アンブシャーの形がどうの、楽器の角度がどうのというのに全く関係なく自然に音が出る。体格、体系や筋肉の問題でしょうが日本人の同じ年の子供ではこうは行かない。うちの学校には《アトリエ》というシステムがあって、9歳前後の子供たちに4週間単位でいろいろな楽器を演奏させるのですが、時々『あんた本当に今までホルン触った事ないの???』といいたくなる位に上手に吹く子(特に女の子)がいてビビリます。そういう時は結構親にプッシュして『お宅のお子さんは絶対ホルンをやるべきだ。』と言うのですがどうもフランスは管楽器がマイナーで『うちの子にはピアノやらせます。』とか『金管はうちで練習されるとうるさいのでヴァイオリンしにます。』とか言う親が多くて...
さて次はエマニュエル君。彼はかの有名なオーボエ奏者ダヴィッド・ヴァルテールの息子です。彼は今高校生でもともと違う学校で勉強していたのですが先生とウマが合わなくて『もうホルン止める。』と言い出したのをきっかけに親が二人で『とりあえずタケノリが教えている学校を見学に行って決めなさい。』と説得してうちのクラスにやって来ました。見学した日の夜お母さんから電話があって『あなたのクラスだったらホルン続けたいと言っているので来年からお願いします。』との事、今年でうちのクラス2年目です。彼は長年障害になっていた歯の矯正が今月の中旬に終わるので今とても興奮しています。『生涯で一番のクリスマスプレゼントだ!』と喜んでました。こちらはみんな歯の矯正をするので管楽器の先生にとっては結構辛い所です。これから伸びる、という時にある日何の前触れもなく矯正の装置を着けて現れてドッヒャー、ということもしばしば...
彼は今年からナチュラルホルンも始めました。いつもパワー全開のお父さんとは違ってボーッとしていますがとてもいい子です。プロになるつもりは多分あんまりないとは思うけれど生涯楽器を吹いていくタイプです。
今年から来た生徒に藤丸さんがいます。彼女はとても不思議な経緯で僕のクラスにやって来ました。去年長い闘病生活の末お父様が亡くなられて『自分の人生に悔いが残らないように。』と前からもっときちんとしたいと思っていたホルンの勉強をしにワーキングホリデーまでとって自費で勉強しに来ている頑張り屋さんです。バイトをしつつの勉強は大変そうですが一生懸命やっています。一番最初のレッスンで吹いてもらった時は、よく吹けるものの音色が...という感じでしたが最近は練習の甲斐もあって見違えるように音が良くなって来ました。
それにしてもどうして日本では音色の事をあまりうるさく言わないのでしょうか?吹奏楽で楽器を始めるととりあえず早く楽器が吹けるようになってコンクールの曲をこなさなければいけないというのがあるのかもしれませんが、音色に魅力がない人が多すぎる。フランスでは(というかヨーロッパでは)何の楽器でもまず音色が良くなければ見向きもしてもらえない。自分の出している音にもっともっと敏感になって欲しいです。
もう1人の日本人は工藤さん。彼女は国立音大で西條君のお弟子さんでした。テクニックも音楽性もあって絶対パリのコンセルヴァトワールに入れる、と思っていましたが運に恵まれず今年はうちの学校とルエイユ=マルメゾンの学校を掛け持ちしています。表現力も豊かで難しい曲もパッパとこなしますが、一番大事な基礎の部分が少々不安定。今年はそこを重点的に勉強してもらっています。彼女を見ていると昔の《器用貧乏》だった頃の自分を見ている感じがして時々ドキッとしますが... 彼女は親御さんからのプレッシャーが結構強いらしく《早く帰って来いコール》がかかっていたようですが、出来ればあと2年くらいはゆっくり勉強して欲しいな、と思っていた所、先週無事木管五重奏でポール・メイエの室内楽のクラスに合格。あめでとう!
真打は僕より年上のジャン=バティスト。彼はレ・ミュージシャン・デュ・ルーブルの同僚でトランペット奏者。前から時々ナチュラルホルンを吹いていたものの『やっぱりせめて1年間誰かときちんと勉強しよう』と決めてうちのクラスにやって来ました。ベートーヴェンのソナタから始めて今はモーツァルトの協奏曲、ギャレーのエチュード等結構大変な曲を練習しています。レッスンするには自分もナチュラルホルン毎日練習しないといけないので結構辛いですが勉強にはなります(笑)。彼は仕事先で一緒になった有名なナチュラルホルン奏者から『何でうちのクラスに来ないんだ』と詰め寄られたそうです。バロックの世界は結構狭いのでモダン楽器と両方やっている奴(僕みたいに)は結構白い目で見られます。みんな《自称スペシャリスト》だからねー(笑)。正直言って
と言ってあげたい今日この頃...
という訳でなかなかヴァラエティーに富んだクラスです。最近オルレアンのコンセルヴァトワールに来ないかという話があったりして結構真面目に悩んだんだけど(地方の音楽院の中ではレベルも高いし生徒の数もずっと多くて収入の安定にもつながる)、やっぱりコンサートで生活できるうちはそのままで行きたいかなー。カシャンはうちから30分で行けるし週1回行けばいいだけだし、やっぱり魅力的です。それに今まで面倒見てきた生徒にまさかオルレアンまで来いとは言えないしね。
もう少し年を取ったら考えよう。てその頃にはもう用無しになってるってか???ありがち...
今日の一言《亀の甲より年の功》
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