精神科医のボードゲーム日記

Twitter:@TakeWatchGo デザイナーへのインタビューを翻訳

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(2012/5のインタビュー記事。「FORTRESS AT」で、執筆者はMatt DP)
の翻訳記事
前後編の2記事、後編はこちら

【なぜこの記事を翻訳したか】
マック・ゲルツは僕の大好きな「ナヴェガドール」というボードゲームのデザイナーです。
本当に面白いゲームだったので「どういった経緯でこの作品は生まれたのだろう」と気になり、作者のインタビュー記事(今回の翻訳記事)を読み、大変面白かったので今回訳しました。

マック・ゲルツの代表作は4作あり、制作順に「古代」、「インペリアル」、「ナヴェガドール」、そして最新作の「コンコルディア」となっています。
(2017年、「Transatlantic」という5つ目の新作が出版されました)
このインタビューでは、2012年までに出版されている前3作について語られます。
まず、未プレイ者のために、「古代」、「インペリアル」、「ナヴェガドール」の大雑把な説明をしたのち、インタビューの原文に移ります。

【①ナヴェガドール】
イメージ 1

この盤面が本当に美しい

概要:
プレイヤーたちはいっせいにポルトガルを発ち、植民地を開拓し、交易をしながら、遠路長崎を目指す。
航海、香辛料や貴金属の売買、植民地支配、人身売買など、できることがとにかく多彩。
そして自由度が高いにも関わらず、きちんとゲームとしてまとまっている。
カードシステムを全く用いていないのも最大の特徴。

プレイ人数:
2-5人

所要時間:
90-120分
所要時間のわりにプレイ感が軽く、各手番が単純なので疲れにくい。

難易度:
ある程度ボードゲームに慣れていれば問題なくプレイできる。

参考ページ:


【②古代】
概要:
イメージ 2

©New Games Order
こんな感じの盤面(筆者未プレイ)
2005年発売。リメイク版の古代IIの方が現在は購入しやすく、バランスも良いとのこと。
プレイヤーたちは紀元前時代のオリエント〜地中海沿岸の王国の支配者となり、いち早く偉人カードを一定数集めるため、他プレイヤーと交渉・外交を行う。

・資源の生産と兵力の拡大
・軍事/技術/内政
・交渉と軍事。剛柔2種の外交戦略
・古代オリエント〜地中海沿岸の舞台

重ゲー好きにはたまらないツボを突いていますね。
ルールを無茶苦茶単純化した『メガシヴィライゼーション』といった感じでしょうか。

プレイ人数:
3-6人

所要時間:
120-180分

難易度:
普通〜やや難しい

参考ページ:



【③インペリアル】
イメージ 3


概要:
舞台は19世紀末、帝国主義時代の陰謀渦巻くヨーロッパ。
「古代」のような「1国を支配する」という形ではなくプレイヤーは列強を裏で操る国際投資家となる。
大英帝国、ロシア帝国、ドイツ帝国、フランス、イタリア、そしてオーストリア=ハンガリー帝国の列強6か国が登場。
支援国を繁栄させ、時にはあえて戦争を起こさせ、己の財閥を最大化させるのが勝利目的。

古代と同じく「インペリアル2030」というリメイクが出ています。
2030年、時代のトップランナーの顔ぶれは変わり、アメリカ、ロシア、ユーロ連合、中国、インド、ブラジルの6か国で世界の覇権を争います。BRICs+欧米ですね。

プレイ人数:
3-6人

所要時間:
150-240分

難易度:
かなりボードゲーム慣れしていないと、面白さの勘どころがつかみにくいような印象。
特に「盤面にある6か国は、自分が支配する王国というわけではなく、あくまで株を大量保有している国。だから、適当なところで見限って、株を売って勝利点化しないと勝ちにつながらない」というのは、飲み込むのが少し難しいかも。

参考ページ:
「とりあえず日々ボードゲーム」 ←わかりやすいプレイレビュー
「失われた時を求めて」 ←やや辛めの評価


前振りが長くなりました。
では、インタビューに移りましょう!

※適宜意訳・省略しています
 黒字がインタビュアー茶字がマック・ゲルツです。


以下原文
ーーーーーーーーーーーーーーーー


今回のインタビュアーはマック・ゲルツです。彼のデザインした「インペリアル」は私の中でも五指に入るくらい、素晴らしいゲームです。幸運なことに、今回はメールでインタビューする機会を得ました。


インタビューに協力いただきありがとうございます!まず最初にゲルツさん自身のことを少し教えてください。
どうしてゲームデザインをやるようになったのですか?

こちらこそ、こんな機会をいただけて嬉しいよ!
まず、僕のおおざっぱな生活から話そうか。
いま(2012年)僕は50歳。家族は33歳のカチアという妻と、5歳の息子がいて、3人暮らしだ。ハンブルクの、築100年の家に住んでいる。(訳注:欧州の石造りの家では、築100年の家というのは珍しくないのかも)
経歴としては、若いころにハンブルクの大学で経済学の学位を取って、そのあとそのままハンブルクで27歳(1989年)から働き始めた。「仕事の余暇にボードゲームを作る」というのが昔からの生活だよ。

長い間お気に入りのゲームというのはありますか?あればその理由も

正直、そういったものはない。
強いていえばチェスかな。何年もの間、チェスクラブのメンバーだったけど、僕のチェスの技能には限界があった。ただ今でも80年代に大天才のカスパロフが登場したときのことは鮮明に覚えているよ。
チェス以外だと、自分の2つ目に出した「インペリアル」はかなり気に入っている。プレイするのが本当に楽しくて大好きだね。
あとは「自分が今手掛けているゲームがそのときの一番のお気に入り」という感じ。


デザイナー名はマック・ゲルツですが、BGG(ボードゲームギーク)で登録されているプロフィールは「ウォルター」となっています。どういう事情ですか

本当はウォルター・M・ゲルツなんだよ。
ただ学校にいたころ「先祖がスコットランドから1842年にハンブルクにわたってきた移民なんだよ」と皆に言ったら、あだ名がマック・ゲルツになったんだ。
マックは気に入っているあだ名だから、商業用ペンネームとしても使っている。
(※訳注 Mc、Macは「〜の息子」という意味を持ち、スコットランド人の名でよく用いられる。原文では「子どものころ冗談で言ったのか、本当にスコットランドの出自なのか」が明記されていない)


処女作の「古代(Antike)」と、第2作「インペリアル(Imperial)」は、ドイツゲームデザイン学校の文化を踏襲しながらも、プレイヤー同士のインタラクション(相互アクション)を重視しています。
これは狙ったものなのでしょうか?

他プレイヤーとのインタラクション。競争、潰し合い、協力、攻撃、裏切り、交渉
これは、人によっては野蛮だから嫌いだったり、イライラさせられるかもしれない。
でもね、ゲームの善し悪しを決める最も重要な要素が、この「他プレイヤーとのインタラクション」だと僕は思うんだ。この要素がないとソリティアになってしまう。
僕が10代のころから、自分自身のゲームを作り始めた。君が言う「ドイツゲームデザイン学校」なんて、名前もまだない時代だった。「古代」と「インペリアル」のアイディアは、自分でゲームを作っていくうちに出てきたアイディアからできてきたものなんだよ。
最初、ラヴェンスバーガー社(訳注:ドイツ最大手のゲーム出版社)に1981年に私のデザインを3本持ち込んだんだ。そのとき彼らは「うちは経済系のゲームならもう3本持っているからね」と返事をくれた。石油:大冒険(1960)、ブローカー(1961)、ブラボー(1970)。
「この3作との関係もあるし、うちでは同ジャンルの新規ゲームの評価はどうしても辛口になる。また、戦争がテーマのものは何があっても出版しない」と言われた。(訳注:その後の経緯について記載なし)


「古代」のいちばんの特徴は「他プレイヤーとのインタラクションと交渉が完全にオープンであること」だと思います。オープンすぎるがゆえに「あまりにキングメイキング*なゲームではないか」と批判されることがあります。こういう風な仕様にしたのはわざとなのですか?

訳注:キングメイキングkingmaking
最下位の人が1位を誰にするか選べてしまうゲームを指す形容詞。
たとえば、

①3人以上用のゲームの終盤で、下位確定の人が決まった
②優勝候補もそろった
③ゲームの仕様で、1位を自由に攻撃できたり、1位に資源を自由に分け与えられる(対人インタラクションが極端に強い)

この3条件がそろうと「下位が誰を勝たせたいのか」でゲームの展開を決められるようになってしまう
最後にこうした展開になってしまうと、非常にギスギスしてしまうし、興ざめです。優勝候補も楽しくないですし、最下位確定のプレイヤーにとっても楽しめない。「何だこの幕切れは!?俺たちの2時間を返してくれ!」って感じですよね。
「王を作ってしまうようなゲーム」というあまり良くない意味で「キングメイキング」と呼ばれます。

「交渉は楽しい。しかし、全員が楽しめるものでは決してない」
これは自作ゲームを身内でやるだけでなくて出版すると決めたときに教わった、厳しい現実だ。
僕たちの仲間内では完全に問題がなくて、好評であっても、テストプレイヤーではそうとは限らないんだ。
「古代」を作るうえで、当初のデザインから大きく変更*したが、それでも交渉とインタラクションの要素は残した。
ただ最終的に「古代」はかなり受け入れられたし、世間での評価は総じて良かったよ。
(訳注:変更点について具体的な記載はないが、ドラフトの段階ではもっと交渉要素の強いハードなゲームだったと思われる)


「インペリアル」は、前作「古代」よりも高く評価する人が多い印象です。
「インペリアル」の最大の長所は、「対人要素は大きいが、オープンインタラクション系のゲームで生じる問題をうまく回避できている」というところにあると思います。これも狙ってやっているのですか?
多プレイヤーの衝突するゲームのバランスをとるのは、どれくらい難しかったですか?

「インペリアル」はいくつもの独立したメカニズムが組み合わさってできている。幸運なことにそれらのメカニズムが独立して安定している。
安定している部品が組み合わさっていることで、ゲーム全体がより安定するんだ

「僕が若いころ経済学を学んでいる」というのも、デザインに大きく影響しているだろうね。
遠い昔、経済学部の学生だったころ、需要と供給の何たるかを徹底的に叩き込まれた。
神の見えざる手があらゆる場所に働いて均衡は保たれるのだと深く理解した。
ただもちろん、実際の経済市場ではこうしたマクロ経済学の理論だけでは読み切れないは思うけど、僕のゲームデザインにはすごく役立っている。


「インペリアル」はマック・ゲルツの代表作ですが、最初これほどまでに成功すると思っていましたか?

全く思ってなかったよ。「古代」と同じだけ売れるかどうかさえ懐疑的だった。「古代」の売れ方だって、僕からみたら「過大評価されてるな」と思っていたからね。
それに、「インペリアル」はいわゆるかなりの「重ゲー」で、それも売れ線からは逆行していたしね。ただ、幸い杞憂に終わった。


「インペリアル」についてのコラムでは、「経済と軍事の2要素のユニークな関係性が素晴らしい。このゲームの一番イノベーティブな部分だ」と褒めていることが多いです。それについてどう思いますか?

プレイヤーから独立した6つの国々。
ロンデルシステムによる決定の速さ。
1対1の戦いが容易に生まれること。
これらは試作段階から変わらない、「インペリアル」の核となるコンセプトだ。


「インペリアル」は「投資家が国家間の戦争に乗じて利益を上げる」というような非常にシニカルなテーマを持っているボードゲームです。
実際に投資家が政府を支配するようなことはありうると思いますか?
現在経済危機が各国で起きていますが、経済市場が政府のポリシーに影響するようなことはあると思いますか?
( 訳注:リーマンショックが2008年で、インタビュー時期が2011年ごろ)

皮肉なテーマだね、たしかに。ただ幸運なことに「インペリアル」はただのゲームだ。
それにしても、現況の経済危機、各国政府が為替を維持しようと躍起になっている姿を見るに、「国際投資家が強い影響を持つんじゃないか」と考えるようになるのは、不思議ではないかもね。


後半では、ナヴェガドールの制作の経緯や、ゲルツがなぜロンデルシステムを多用するかについて語られます。

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