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私は、なぜか喫茶店にいた。「坂田」もなぜか、私の目の前に座っている。 「最近では、まともな呼びかけがないもんでね〜、あまり地上に降りることはないんですよ。」 神様は、私に話しかけているが、私はぼんやりとそれを聞いているだけだった。 「真剣な、そうそう・・心の篭った呼び掛けじゃないとねえ。私だってやる気が起きませんから。」 「はあ・・そうですか。」 「そりゃ、そーですよ。競馬を当ててくれとか、試験に合格させてくれとか、そんなくだらない願い事を いちいち相手にしてられますかって!わかってくださいよ、だんな〜!」 しかし、私にはまだ、信じられなかった。まさか、私の苦境を知って、本物の神様が助けに来てくれるなどという話を、信じろという方が無理である。 「貴方・・まだ、私を疑ってますね?」 さすがは神様だ。私の心は完全に読み取られているようだ。 「ええ・・もちろん読み取れますよ。貴方だけじゃない。この世の人間のすべての心を同時に読み取れます。 これが神様に力量ってやつですよ。だんな。」 私は言葉を発する必要がなかった。考えることには、すぐに返事が返ってくる。しかし、よく見ると神様も言葉を口にしている様子はない。神様の考えは、直接私の脳裏に届いてくるのだ。 「コーヒー、もう一杯飲みますか?」 それに対する返事が脳裏を過ぎった直後、私の、空になっていたコーヒーカップが褐色の液体で満たされた。 「そろそろ本題に入りましょうか?」 本題・・・。そうか・・神様には「殺人」のことも、当然お見通しなのだ。 「そう。貴方は人を殺してしまった。かつての恋人、相沢留美子さんを・・ね。」 「しかし、貴方は、自分の行いが正しかったと心のどこかでそう、考えている。」 「貴方は警察に逮捕されることになる。そのような運命が耐えられずに、私を呼んだ。」 「その通りです。相沢留美子がもう少しデリカシーのある女性だったら、こんなことは起きなかった。」 「殺してしまったことは反省しています。しかし、私だけを裁いて済むという問題ではないのです。」 「彼女にも落ち度があった。なのに裁かれるのは私だけ・・納得できません。」 「彼女は命を失ってしまった。しかし、それは自業自得です。」 私と坂田、いや神様は、言葉を使わずに会話を続けた。 「私には輝く未来がある。警察に逮捕されるなんてまっぴらなんですよ。」 「何とかなりませんか?神様。貴方は、そのために現れてくれたんでしょう?」 「例えば、彼女を生き返らせることは出来ないのですか?」 私がそこまで話すと、神様は笑い出した。 「だんな〜・・死んでしまった者が生き返ったらオカルトですぜ。それに、そんなことになったら教会の牧師も寺の坊主も、葬儀屋もみんな、失業しちまうってこと!」 「それは、その通りかも知れない。しかし、ではなぜ、貴方は私の前に現れたのですか?」 神様はしばらくの間、黙ったままだったが、やがて深呼吸をすると私に語りかけてきた。 「よっしゃ。わかりました。じゃあ、こうしましょうや!」 神様は私に微笑みながら、そのアイデアの説明を続けた。 「死んでしまった者は生き返らない。となると、方法は一つだけ。」 「ど・・どんな方法ですか?」 私は、神様の言葉に希望が見えてくるような気がして、身を乗り出していた。 「時間を巻き戻しましょう。貴方が殺人を犯す前まで、時間を逆行させるんですよ。」 「そ・・そんなことが出来るんですか?」 「はいはい、出来ますよ。問題が発生した時点まで貴方は時間を遡ってゆく。そして・・・。」 ・・・そして、「過ちを犯さない方法」を選択すれば、彼女は死なずに済む! 「そうです!そこでやり直せばいいんですよ。」 名案だった。しかし、いったいそのようなことが可能なのか?いくら神様といえ、そんなことが・・。 「じゃあ、説明しましょうかね・・・。」
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アホの坂田が怒ってる
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