羊の隠れ家

■■■Taku2001zooのブログ■■■

アホの坂田が怒ってる

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私は立ち上がった。いや・・立ち上がったのは「私」だが、「私」が立ち上がろうと考えて立ち上がったわけではない。過去において「座った」という行動が逆行されているだけなのだ。

(喫茶店に入って座席に座った私)・・・時間は「この位置」から逆行を開始したのだった。

立ち上がった「私」は、後ろ向きに歩きながら喫茶店を出てゆく。コーヒーを運んでいるウエイトレスさんも、「後ろ歩き」しているではないか!私がレジの横を通り過ぎる時、脳裏に女性の声が聞こえた。

「せまいゃしっらい」・・意味がわからない。その声が聞こえた方向を「私」は見た。
(そうしようと思ったわけではない)
すると、レジ係の女性の口がパクパクと素早く動いているのが見えた。

声は、喉の声帯が振動して音となり、音が口を通過しながら言葉となって、空気中に放たれる。空気を振動させた音は、私の耳に入り、鼓膜を振動させて聴覚神経を刺激し、微弱な電気信号となって脳に伝わる。

そこまで考えた時、すべてが理解できた。私の脳裏に過ぎった言葉が「逆向き電気信号」となって聴覚神経へ逆流し、それが鼓膜を振動させ、鼓膜の振動が空気を振動させて言葉となり、言葉が空中を伝わって、彼女のパクパクと動く口の中に帰っていったのだ!

「せまいゃしっらい」・・脳内で響いたこの音は「いらっしゃいませ」の逆向きだったのだ。

言葉を話すということは、大気中に二酸化炭素を放出するというこでもある。つまり呼吸もまた、逆向きなのだ。大気中に放たれた「彼女の息」は、物凄い勢いで彼女の口に集合し、その体内に戻ってゆくのだ。体内では、空気中から戻ってきた二酸化炭素が肺の中で血液に吸収されて、他の老廃物と共に細胞に吸収され・・・

うう・・では細胞は分裂せずに「融合」を繰り返すというのか!
血流も逆向き。心臓の鼓動も逆。ああ・・何ということだ!

外に出ると、そこには更に異様な光景が私を待ち受けていた。大通りを走る車はすべて「バック」しているではないか!大気中に放たれた排気ガスは、それぞれの車のマフラーの中に吸い込まれてゆく。私は、車のエンジン内部を想像して眩暈を感じた。シリンダーの内部では「爆発」したエネルギーが「収束」し、燃料と酸素とに分離され、それぞれが元の場所へと流れているはずだった。つ・つまりエネルギーは発生していないのだ!そ・・それなのになぜ動いているんだ!

いや・・待てよ。ならば、人間だって同じはずだ。食事によって取り入れたエネルギー源を体内で分解しながら生きているのだ。養分が吸収されずに吐き出され、老廃物が排出されずに吸収される。こんな反応は有り得ないではないか!その時、私の視界に通りに隣接するレストランの店内が飛び込んできた。

客は皆、両手にスプーンやフォークを持ちながら、それを口元に運び、口から出てきた食物を皿の上に乗せている。皿の上では、次第にそれが「料理」という形になり、料理が完全に完成するとウエイトレスがそれを持ち去ってゆく。(もちろん、後ろ歩きで・・)

「風が吹いて、髪が乱れる」=「髪が乱れてから風が吹く」
「蛇口から水が流れ出す」=「流れ出た水が、蛇口に登ってゆく」

すべての因果関係が「逆」だった。いや・・因果関係などという概念は捨て去るべきなのだ。
もう、そのような「正常な関係性」は、ここには存在しないのだった。
南風は北風となり、浜辺に寄せる波は、浜辺から沖合いに寄せるのだ。

私は、逆向きに歩く人並みにまみれ、やはり逆向きのまま通りを歩いている。ふいに、道の片隅にへばりついた染みが浮き上がり、飛び上がって、私の前を歩く男の口の中へ入っていった。それは男が過去において吐いた「唾」だった。

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