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逆向きに帰宅し・・いや・・出社し・・いや帰宅し・・ 逆向きに目覚めてから眠り・・ 逆向きに眠ってから目覚め・・ スコッチのビンの中にウイスキーを吐き出し・・・ クロークの中から「相沢留美子」の死体を引きずり出し・・・ 死体の首に両手をまわし・・・ 生き返った留美子と、視線がぶつかった時、ようやく「時間の向き」が正常になった。 「貴方の子供がいるみたい。」 「今日、病院へ行ってきたわ。」 「6ヶ月目に入ったそうよ。」 「私、生みますからね。」 「もちろん、認知してもらうわよ。」 「養育費とかも考えてね。」 「責任はちゃんと取ってくださいね。」 「逃げたりしても無駄ですよ。」 「弁護士にも相談して・・・。」 私は、同じ過ちを繰り返さぬよう、込み上げてくる怒りを押さえるために留美子に微笑んで見せた。 「何が可笑しいの?」 「え・・いや・・別に可笑しくはないよ。」 「貴方、今、笑ったわよね?私を笑ったでしょ!」 普段はヒステリックに喚く留美子が、感情を抑えて私を睨み付けていた。 「いや、別に深い意味はないよ。君の言い分はわかった。今日はもう、これで終わりにしよう。」 ここで彼女が帰ってくれれば「あの事件」は起きないのだ。私は彼女に背中を向け、壁のハンガーに掛けてある彼女のコートを手に取った。 「さあ、あまり遅くなるとご両親が心配するよ。」 私はそう言いながら、彼女にコートを差し出した。その直後・・・。 私の差し出したコートを振り落とし、彼女が私にぶつかってきたのだ。 私のスーツの生地を突き破り、熱い痛みが私の腹部に侵入してきた。 「る・・留美子・・・!」 声が出なかった。私は、猛烈な痛みが走る自分の腹を覗き込んだ。そこには「そこにあってはならない物体」が、私の腹に突き刺さっているではないか! 「あ・・貴方が悪いのよ。私を馬鹿にするから・・。」 ナイフ・・私は血が溢れ出る腹部を押さえながら、自分が刺されたことを悟った。 意識が遠くなってゆく。おかしい・・・うまくいくはずだったのに・・・ な・・何のために・・「ここ」に帰ってきたんだ・・・・ 医者を・・い・・医者・・・ だれかあ・・・・・・ たすけ・・・・・ いたい・・・・ しぬう・・・ うう・・ う・ ・ (静寂)
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アホの坂田が怒ってる
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