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ひどい頭痛を感じた。口の中がザラザラする。ゆっくりと目を開けるが、そこは薄暗くて 辺りの様子がわからなかった。私は、自分の腕の中にいる祐樹を抱きしめた。 「祐樹・・祐樹!大丈夫・・怪我はない!」 私の胸の中で、祐樹のすすり泣く声が聞こえる。 「足が痛いよう・・痛いよう・・お母さん・・。」 「怪我をしてるの・・!祐樹・・どっちの足よ!」 もう祐樹は泣くのが精一杯のようで、質問には答えなかった。 私は体を捻って、祐樹の足元を見ようとする。その瞬間、祐樹は悲鳴を上げた。 「だめえ・・動かないで!痛い・・痛いからぁぁぁ・・・!!!」 ほんの僅かの動きでこれほど痛がるなんて・・。骨折以外には考えられない! 「ああ・・祐樹・・ごめんね・・もう動かないから・・」 とにかく、ここを出なければ・・・次第に暗さに目が慣れてきた。 辺りの様子が確認できるようになった途端、同時に自分たちの「絶望的な状況」も確認できた。 倒れている私の数メートル上に、錆付いた鉄骨が斜めに倒れている。その鉄骨に無数の細い金属のフレームが 絡みつき、さらにそこにコンクリートの板が寄りかかっているではないか。顔をそっと横に向けてみた。 私の右側には、やはり鉄骨が倒れていて、数本の電線がぶら下がっているのが見える。左側は「壁」だった。 頭上に折り重なる瓦礫の隙間から、外の光が漏れ、一筋の光線となって私たちのすぐ傍に差込んでいる。 その時、ふいに携帯電話の着信音がした。私は、そっと・・祐樹の体を動かさないようにポケットをまさぐり携帯を取り出した。 「あ!黒木さん・・つ・・つながりました・・!」 高橋おばさんは、興奮した様子で携帯を沢木に渡した。 「黒木さんですね。対策本部の黒木と言います。まず、確認したいことがあります。貴女が今使っている携帯のバッテリー残量を知りたいのです。」 沢木は、勤めて事務的な口調で黒木に話しかけた。余計な世間話で貴重な電力を消費させたくはない。 「わかりました。まだ、安心できるレベルですね。それからもう一つ、貴女は息子さんと一緒ですか?」 「そうですか。わかりました。我々は今、貴女の携帯のGPS電波で、貴女のおおよその位置を特定しました。しかし、これだけでは情報が不足なんです。理解できますか?」 「貴女が事故に合われた直前の位置・・場所を教えてください。」 「虫の展覧コーナーから、出口に向かって走ったのですね?どれくらい走りましたか?」 「そこで、壁が倒れてきたという事ですね?」 「わかりました。ただちに救出作業に入ります。通話は切りますが、携帯の電源は切らないようにお願いします。」 「繰り返しますが、電力を無駄にしないように。」 「母親は比較的、落ち着いている印象だった。しかし、どうやら息子が怪我をしているらしいな。」 会話は、対策本部の全員が聞いていた。全員、災害救助のエキスパートだったが、今回の事案については 救出方法に決定的なアイデアが浮かんでこなかった。 「光が差込んでいるのが見えると言っている。まず、真上から二人の位置を確認したいな。」 どの方向からの接近よりも、真上からの接近が、距離が最も短かった。まず、真上から接近できるかどうか、その可能性を沢木は特定したかったのだ。隊員たちのディスカッションが始まった。 「誰かが瓦礫の山によじ登りますか?」
「いや、それも二次崩壊を招く危険性があるな。」 「ヘリで接近してはどうですか?」 「駄目だ、風圧で崩れ落ちるぞ。」 「はしご車を使いましょう。はしごを瓦礫の中央まで伸ばせば真上から確認できます。」 「名案だな。」 |
アホの坂田が転んでる
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