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翌朝。倒壊現場に面した大通りに大型トラックが20台、横付けにされた。 「本部長!遭難者の父親という人物が来ていますが・・・。」 「そうか、お通ししろ。」 身内が現れることは予想していた。沢木は気が重かった。この状況を何と説明すればよいのか・・。 「対策本部長の沢木です。」 黒木は、軽く会釈をすると、スーツの内ポケットから一枚の書類をテーブルに置いた。 「何ですか?これは?」 【救出作戦・概要】・・と書かれた書類には見慣れない単語が並んでいる。 ■冷却シート(これで被害者の身体を覆い、固形化発熱から保護する) ■空気チューブ(先端をマウスピースタイプにして呼吸を確保する) ■ライフセンサー(リストバンドタイプ・・心拍数をモニターする) ■適正素材(スチロール及びウレタン系では生成時に液状化が困難であるが、我が社が昨年、 開発した低温生成法によって40℃〜80℃の範囲内で液体性質を保持することが可能である) ■輸送、及び注入法 (1)液体圧搾車両10台。 (2)原料積載車両3台。 (3)反応機材車1台。 (反応システムは我が社の実験設備をそのまま10t車に搭載し、使用する。) (4)発電車両3台(エンジン式発電機搭載) (5)現場保全工事(外柵の設置・資材の輸送) ■協力要請(外注) (1)○○運輸(要請承諾) (2)○○建設(要請承諾) (3)○○電熱(要請承諾) ■注入手順 (1)圧搾車NO1にて、現場上方より遭難地点へホースを降下。 (使用材料=低温液化ウレタン300Kg)=遭難者の身体保護。 (2)約2時間後に圧搾車NO2(9台)によって全方向から低温液化発砲スチロール注入。 「大通りに止まっている不審な大型車両とは、これのことですね?」 「ええ・・説明させてください。」 沢木は黙ったままで、黒木隆造の説明を聞いていた。 「つまり、あの現場全体をウレタンで覆うということですか?」 こうして、すべての設備を準備して来ているのだから冗談であるはずはなかった。 「これしか娘を救う方法はないと確信しております。」 「馬鹿な・・有り得ないでしょう・・こんなこと・・。」 隊員の一人が書類を覗き込みながらそう言った。それは沢木も同感だった。 聞いたことがない「救出法」である。 「いいですか、沢木さん。レスキュー隊の立場も、私は理解しております。この状況で何もしないわけにはいかないでしょう。しかし、伝え聞いた方法、つまり、クレーンによる瓦礫の撤去作業というのはあまりにも危険です。貴方だって分かっているはずだ。私は、娘と孫の命で博打をする気はありません。」 「この方法に自信があると言うことですね?」 しかし、民間人のアイデアに許可を与えるわけにはいかなかった。そのことを見透かしたように、黒木は続けた。 「貴方の許可を求めるつもりはありません。黒木さん。我々は勝手にこれを実行します。邪魔はしないでいただきたい。」 燃えるような目だった。燃え上がるような視線が沢木を射抜いている。 「どうやら、孫の祐樹は怪我をしているようです。今、こうして我々が話し合っている間も、小さな子供が暗い瓦礫の中で痛みに耐えて・・・」 黒木がそこまで話した時、沢木は片手を上げてその言葉を制した。 「黒木さん・・時間がない。始めましょうか。このモニターにお二人の正確な位置が表示されています。こちらには店内の見取り図がある。その他に必要な情報があるようなら言ってください。協力しますよ。」 本部内にざわめきが走った。対策本部長が「事実上の許可」を与えたばかりか、協力するとまで言ったのだ。 【続く・・・】
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アホの坂田が転んでる
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