羊の隠れ家

■■■Taku2001zooのブログ■■■

アホの坂田が転んでる

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ドームの頂上付近から、細いチューブが数本、上方に向かって伸びている。ドームのほぼ真上で固定されているはしご車のゴンドラには、内部の二人に空気を送る「生命維持装置」が積み込まれ、チューブはその装置に繋がっていた。ゴンドラには医師が乗り込み、二人の健康状態を絶えずチェックしている。

「危険な状態です。呼吸回数が少ない・・・。」

医師は、モニターを見ながら険しい表情をした。

「急いでください・・!」

隊員達は電動カッターでウレタンを切り刻みながら、内部へと侵入する。鉄骨や軽鉄に阻まれると、チェーン・ソーを使ってそれを切断した。

「気をつけろ・・チューブを傷つけるなよ!」
「了解・・・!」

頂上部には直径2mほどの「穴」が開けられつつあった。ほぼ垂直の「トンネル」である。それが目標への最短距離であった。

「レッドシート・・確認しました・・!」

トンネル内部に潜っていた隊員の一人が、美由紀と祐樹を包み込んでいるシートの一部を目視で確認した。

「了解・・慎重に接近せよ!」
「了解!」

鉄骨、コンクリートパネルを切断しながら、ゆっくりと、極めてゆっくりと、隊員は二人に接近する。

「ポイントに到着しました!」

隊員の両足が、二人と同じ「床面」に立っていた。隊員はシートにへばり付くウレタンウォームを削り取り、ゆっくりとチャックを開いた。


「あ・・今・・今救出された模様です。穴の中から子供がロープで・・ロープで引き上げられてます!」
「きゅ・・救出されました!・・女性が・・黒木美由紀さんが・・引き上げらています!!」
「ご覧になれますか!たった今、二人が救出されました!時間は・・午後2時10分!救出です!成功です!」

現場を遠巻きに取り囲んでいるレポーターたちは、口々にマイクに向かって叫んでいた。

対策本部のテントの中でモニターを睨みつけていた沢木は、テーブルの上のインカムを掴みあげる。

「沢木だ。状況を報告しろ!二人の健康状態は!」

沢木は、インカムに向かって叫んだ。たのむ・・生きていてくれ!!

「呼吸・・正常・・意識・・正常・・元気です!本部長!」

対策本部の中に歓声が沸きあがった。

「や・・やった!せ・・成功だ!」
「生きてる・・生きてるぜー!」

誰かが・・見知らぬ他人の誰かが・・ただ生きているというだけなのに・・
それなら、昨日の・どこかの・誰かも・・ただ生きているだけなはずなのに・・・
ただ・生きている人間を・皆が・毎日のように見ているはずなのに・・・

対策本部のスタッフは全員・・「誰かが・ただ生きていること」を、涙を流しながら喜んでいた。

「沢木さん・・・。」

自分の名前を呼ばれ沢木が振り返ると、そこには黒木隆造の姿があった。

「黒木さん・・娘さんも、お孫さんも元気です。貴方の見事な・・」

そう沢木が言いかけた時、黒木はその場に膝を落とし、両手を地面につけた。

「沢木さん・・貴方には謝罪の言葉もない・・貴方の立場を無視して・・本当に・・私は・・」
「黒木さん。立ってください。貴方はそんなところに膝をついてはいけない人間です。」

黒木は立ち上がらずに、沢木を見上げた。

「貴方は、あの素晴らしいスタッフたちを育てた、いわば彼らの父親じゃないですか。立ってください。
立って、胸を張って、彼らを褒めてあげてください!」

沢木の差し出した右手に、黒木の右手が重なっていた。

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