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「お昼のワイドショーの時間ですが、今日は予定を変更して昨日、伊豆沖で発生しましたタンカー爆破未遂事件の続報をお伝えします。静岡県警の発表によりますと、警察と海上保安庁は、今日の早朝より双方合わせて30隻の船舶を現場海域に出動させ、まだ行方が掴めていない犯人の安否確認と、ボートの船体などの遺留品の捜索を開始し、現在までに船体の一部と見られる破片を数点、回収したという情報があります。」
「え〜・・本日はゲストとして、本日は日本周辺の領海警備に詳しい、国立海洋大学・教授であります大波紀夫教授にお越しいただきました。大波さん。よろしくお願いします。」
「え〜・・よろしくお願いします。」
「さて、当局ではテロ未遂犯の行方がまだ掴めていないということですが、これはどう考えればよろしいのでしょうか?」
「まあ、巡視船の機銃攻撃で撃沈したのですから、その際に海に放り出されたと考えていいと思いますよ。」
「なるほど。もしそうであるなら、発見は困難だと思われますか?」
「そうですねえ・・・。通常の海難事故とは違いますからね。銃撃を受けた際に被弾している可能性も高いですから。それに、あの周辺の海域は潮の流れが複雑でしてね、これが捜索に大きく影響していると思いますよ。」
「あ・・ちょっと失礼します。ただ今、新しい情報が入りました。イスラム過激派組織サラーム・バディーウは先ほど、ウェブサイトを通じて世界に向けて、今回の日本領海内テロの犯行声明を発信した模様です。繰り返します。イスラム過激派組織サラーム・バディーウは先ほど、ウェブサイトを通じて世界に向けて、今回の日本領海内テロの犯行声明を発信した模様です。声明の内容は次の通りです。」
(我々の同士は日本領海内にて聖戦を立派に戦い抜き、そして彼らに大いなる打撃を与えることに成功した。我々は今後も日本を攻撃目標から外すことはない。聖なる戦いは永遠に続く。アラーよ、永遠なれ!)
(アラーよ、永遠なれ!)・・その言葉を聞いた隙川美咲は、テレビをスイッチを切ると、テラスへ出た。午後の日差しは眩しく、水平線まで続く海面が、それを反射して美咲の頬をキラキラと照らしている。美咲はふと、右手首につけた小さな時計を見た。もうすぐ「彼」が来る時間だった。
(始まりがあれば・終わりがある)
(この宇宙は、どのようにして始まり・どのようにして終わるというのか・・・?)
(私は・・・どうやって・・終わらせればいいの・・・?)
海は、そんな美咲の問いかけに答えぬまま、ただ太陽の光を反射しているだけだった。
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「思ったより道が空いていたよ・・・。」
大岩祐介は、居間に入ると美咲を引き寄せて口付けする。
「会いたかったよ・・美咲。」
「私も・・・。」
二度、三度、抱擁を繰り返した後、二人は居間の中央にあるソファに腰を下ろした。
「今、コーヒーを入れますね。」
美咲が運んできたコーヒーカップを持ったまま、大岩はテラス側のガラスドアへと向かう。ガラスの向こう側には砂浜が広がり、その一画にある桟橋には、一隻の船しか見当たらなかった。桟橋に停泊してあるクルーザーを見つめながら、大岩は眉をひそめた。
「どうしたんですか?怖い顔をして・・・?」
美咲はいつの間にか大岩の横に立っていた。
「い・・いや、犯人たちはなぜ、クルーザーを盗まなかったのだろう・・。」
大岩は表情の変化を誤魔化すように、そう言った。
「クルーザーの方が馬力もあって速度が出るのだが・・・犯人はそれを知らなかったのかな?」
「さあ・・どうでしょうか?」
「テロ未遂に使われたボートが、君のボートでなければいいのだが・・・。警察には盗難届けは出してあるのかい?」
「ええ。昨日の内に連絡しておきました。」
「そうか、ならば近いうちに連絡があるだろう。」
「ええ。今日の夕方、捜査員の方がここへ来るそうですよ。」
「今日・・・ずいぶんと急だね?」
「あら、だって国際的な事件でしょ?自転車が盗まれたのとは訳が違いますよ。」
美咲はそう言って笑った。
「まあ、それもそうだな。で、何時ごろ来ると言っていた?」
「さあ、夕方とだけ聞いてますが、現場検証するのでしょうから、多分それほど遅い時間ではないと思います。」
「ニュースでは、ボートの破片がいくつか回収されたと言っていたね。近いうちに真相が判明するだろう。」
「そうですね・・。」
「ところで、犯人は見つかっていないようだね?」
「そう言ってましたね・・。潮の流れが速いとか・・。」
「犯行予告だけでなく、犯行声明まで出しているのですから、やはりイスラム過激派に間違いないみたいですね。日本が標的になるなんて、何だか恐ろしいわ・・・。」
「まあ、君が無事でよかったよ。」
「え・・・?」
「だってそうだろう?盗まれたのが君のボートだと仮定しての話だが、仮に、あの浜辺でボートを盗んでいる最中に君が犯人たちと遭遇していたら、危害を加えられたかも知れないじゃないか?」
「ええ・・そうね。私、例の機材が届いてからは、ずっと地下室にいたから・・・。」
「例の機材・・・ああ、あれか。予定通りに配達されたんだね?」
「はい。おかげさまで。もうセッティングも調整も終了してますよ。」
「そうか・・そりゃ、よかった。」
「ご覧になりますか?」
美咲はそう言うとふいに立ち上がって、居間の隅にあるPCデスクの上から、2組の「パッチ・ユニット」を取り上げた。
「これが新型のプロトタイプです。製品化するのは、あと20%ほど小型化する必要がありますけど。」
「いや・・十分に小さいよ。携帯電話並みじゃないか・・・。」
大岩は自分の目の前に置かれた小型のユニットを手に取ると、その完成度の高さに驚いていた。美咲は1台のユニットを手にして、パッチ部分のシールをはがすと大岩の後ろに回った。
「首筋に張るだけです。これだけで、あなたの脳波を検出できます。」
大岩の首筋にパッチを張り終えると、美咲はもう1台を自分の首筋に張り、ソファに腰を下ろした。
「試してみますか?」
「・・・え?」
「最新型のセカンド・ユニバース・・・奇跡が体験できますよ。」
「あ・・ああ。そうだな。試してみたいな・・・。」
「社長・・・顔色が悪いですよ・・・。」
「え・・ああ・・疲れが溜まっているからな・・・」
「心配なんですか?大丈夫ですよ。ちゃんとテスト済みですから。」
美咲は無邪気に笑ってみせる。
「じゃあ、そのままで待っていてくださいね。すぐにセッティングしますから。」
美咲はそう言うとソファから立ち上がり、PCデスクへと向かった。
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電脳の女神
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ヒェ〜 いよいよクライマックス?
ドキドキします(笑)
2011/10/14(金) 午前 6:44 [ omni ]
おむねえ♪
終了してからレスしようと思ってたら、かなり
遅くなってしまいましたね。すまん。
おかげさまで本日、最終回となりました!
2011/10/26(水) 午後 10:16