|
■少年A(仮名)12歳(仕入原価・・・○○米国ドル)
手術実施年月日・・・○○年○月○○日
摘出臓器・・・(腎臓・肝臓・すい臓・角膜) 機能ランク・・(A・B・C・D) 保存状態・・・(良好) 臓器予約先・・(ナショナル・メディカル・エージェンシー・米国) S・Y記憶領域・・・(21・3メガ・バイト誤差範囲+−10%)
S・Y記憶保存状態・・・(良好) M・B保存機材・・・・(B/K3000R タイプA) ■少女B(仮名)16歳(仕入原価・・・○○米国ドル)
手術実施年月日・・・○○年○月○○日
摘出臓器・・・(腎臓・肝臓・すい臓・心臓) 機能ランク・・(A・B・C・D) 保存状態・・・(良好) 臓器予約先・・(ナショナル・メディカル・エージェンシー・米国) S・Y記憶領域・・・(31・6メガ・バイト誤差範囲+−20%)
S・Y記憶保存状態・・・(良好) M・B保存機材・・・・(B/K3000R タイプA) (以下・省略)
■男性C(仮名)42歳(仕入原価・・・○○米国ドル)
手術実施年月日・・・○○年○月○○日
摘出臓器・・・(心臓・肝臓・胃) 機能ランク・・(A・B・C・D) 保存状態・・・(良好) 臓器予約先・・(ロイヤル・クラブ・英国) S・Y記憶領域・・・(54・2メガ・バイト誤差範囲+−10%)
S・Y記憶保存状態・・・(良好) M・B保存機材・・・・(B/K3000R タイプB) ■男性C(仮名)65歳(仕入原価・・・○○米国ドル) 手術実施年月日・・・○○年○月○○日
摘出臓器・・・(心臓・肝臓・すい臓) 機能ランク・・(A・B・C・D) 保存状態・・・(良好) 臓器予約先・・(宗教法人・永久会・日本) S・Y記憶領域・・・(61・9メガ・バイト誤差範囲+−22%)
S・Y記憶保存状態・・・(良好) M・B保存機材・・・・(B/K3000R タイプB) (以下・省略)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「さて・・大岩社長からご説明していただけますかな?」
大岩はその言葉を無視するように黙ったまま、モニターを睨み付けている。
「では、私から説明するしかないようですね。しかし、いかんせん、私もこれを見るのは今日が始めてなもので、これから説明する内容には、多分に個人的な推測が含まれていることを予めご了承ください。」
役員たちは皆、耳では専務の言葉を聞いていたが、その目はやはり画面に睨んだまま動かなかった。
「さっそく推測から述べさせてもらいます。私の私見では、この一連のファイルはどうやら臓器売買契約に関する内容だと読み取れますが、我が社の海外事業部はいったいいつから臓器の売買など始めたのですか?」
(臓器売買)という専務の言葉で、会議室にざわめきが走った。
「機能ランクというもは、おそらく摘出された臓器の「品質」を、ABCDの四段階で示しているのでしょう。その下に続く(保存状態)及び(臓器予約先)は、読みとれる意味通りだと思いますが、違いますかな?社長。」
「し・・知らないな。こんなファイル・・私は見たことがない!」
大岩は搾り出すような声で、そう応えた。
「そうですか・・・では続けましょう。(S・Y記憶領域)及び(S・Y記憶保存状態)という文字列で使用されている(SY)とは、これはセカンド・ユニバースを指していることは間違いないでしょう。つまり摘出手術を受けた人間の意思をセカンド・ユニバースに転送し、それを保存しているということですね。ああ、もちろん、これも私の推測ですがね。」
「どういうことだ・・・?」
役員の誰かが、込み上げてくる疑問を思わず口にした。
「摘出手術とは・・・このファイルの名前が挙がっている人間は、皆、脳死状態だったのですか?」
「おいおい・・脳死の人間の(意思)をセカンド・ユニバースに転送して、なんになるんだい・・?」
皆が、口々に疑問を囁き始めていた。
「専務・・この個人名の横に書かれている(仕入原価・・・○○米国ドル)とは、いったい何のことですか?」
「さて・・私の推測が外れていないのなら、これは、読んで字のごとく、個人を仕入れた・・・つまり買い取った値段だと言うことではないでしょうか?」
「か・・買い取るだと・・・!」
「ええ・・。現在、私のスタッフがこの一連の契約の確認と、収支決算の詳細を洗い出しています。しかし、暗号化されているデータが多いので、今日、この場で公表することはできませんがね、彼らの中間報告によれば、T国・国際援助プロジェクトの
活動から、多額の金がT国の政府内部に流れているということです。」 「つまり・・・どういうことですか?専務?」
「おそらくT国内の難民キャンプ、またはスラム街などに人身売買を仲介する組織があるのでしょう。彼らは難民キャンプやスラム街などで路頭に迷っている子供たちを集めるか、あるいは口減らしのために子供を売りたいという親から、直接子供を買い取り、この「特殊病棟」へと横流ししている可能性があります。」
「人身売買の・・・組織だと・・・!」
会議室に異様な空気が立ち込めていた。
「その人身売買活動を・・・我が社の事業部が行っているということですか!」
「それをT国政府に黙認させるため、我が社が国際援助プロジェクトを通じてT国政府に金を支払っていると?」
「ええ・・・。会計報告はまだ分析中ですが、過去2年間の間に、20億を超える使途不明金が隠蔽されていることがわかっています。」
「に・・20億だって・・・!!」
会議室が静寂に包まれ始めた。役員たち全員が画面に表示されている文字の意味を理解し始めて、そして同時にその内容に戦慄を覚え始めていたのだった。
「馬鹿らしい・・人身売買など・・・。この人数を見てみろ。こんな程度の人数で、そのような商取り引きが成立するはずがないではないか。」
静寂を破ったのは、他ならぬ大岩社長だった。
「田所専務・・・あまり根拠のない推測は謹んでもらいたい。君の言動は役員会を混乱させているだけだ。」
専務は、社長の批判には耳を貸さず、全員を見回しながら軽く深呼吸した。
「皆さん。今、皆さんがご覧になっているのは、約6700ほどある案件のほんの一部だということを初めに言及しておきます。」
「6700・・とは・・どういう意味ですか?」
「これと同様の個人ファイルが6700人分ほどあるということですよ。」
|
電脳の女神
[ リスト ]



