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思考が混乱しきった大岩は、美咲の説明の細部はまったく理解できなかった。
「つ・・つまり私が転送されたのは・・君を撃った瞬間だと言うことかね?」
「ええ。そうよ。正確には2発目を撃つ直前にね。すごいでしょ?社長。貴方も私も、自分が転送されたことさえ気づかなかった。それほど瞬間的な出来事だったってことよね。」
大岩は(信じられない)と呟きながら、その首を力なく左右に振った。
「1発目の弾丸は私の・・・本当の肉体の左肩を貫通したのよ。幸い、傷は浅かったけどね。」
「・・・・・。」
「2発目以降はすべて、貴方と私の想念が生み出した出来事。だけどね、社長。現実世界で撃たれた痛みは擬似空間でもそれを感じるし、擬似空間で撃たれた傷は、ちゃんと私の肉体を傷つけているの。わかるかしら?私の言いたいことが?」
「・・・・・?」
「貴方たちは、あの悪魔のような計画で、たくさんの子供たちから肉体を奪った。肉体を奪われ、電脳世界に転送された子供たちが、記憶の中で楽しく過ごしていると、貴方はそう信じている。」
「や・・やはり・・君だったのか?あれに・・・侵入したのは・・・」
「侵入・・・そんなことは今となってはどうでもいいことじゃないかしら?社長・・・。」
「ば・・馬鹿を言うな。あの計画には私のすべてがかかっている。私の夢が・・・。」
「夢・・ですって?あれが?」
「き・・君にはまだ理解できないのだ。あれにはな・・人類の希望が・・・。」
「ふざけないで。社長。何が人類の希望よ!あなたは保存した意識を何に利用しようとしていたの?ここでそれを説明できるのかしら?」
美咲の険しい表情に圧倒され、大岩は黙ってしまった。
「言えないのなら、私が説明しましょうか?」
美咲はそう言って、再び空間に透明なディスプレイを出現させた。
(現天堂・・・。。恋愛シュミレーション・ゲームソフト「ラブ・ラブ・ワールド」)
(カプリコーン・・戦争シュミレーション・ゲームソフト「傭兵部隊」) (ソニーナ・・・・SFシューティング・ゲームソフト「スペース・ウォーズ2」) (SSモバイル・・家族シュミレーション・ゲームソフト「一家団欒」) 「貴方たちは、あの子供たちの意識をゲームソフト・メーカーにレンタルするつもりだったのね・・・。」
「そ・それは・・聞いてくれ。美咲。それは計画の一端に過ぎない。本当の目的は。」
「黙りなさい。黙って聞きなさい。社長。貴方は一度でも、あの子供たちに会ったことがあるの?」
大岩は、その質問には応えなかった。
「貴方は子供たちが無傷のまま、楽しく電脳世界で過ごしていると信じている。違いますか?」
「ち・・違うのか?」
「さっきも言ったでしょう。現実世界で感じた痛みは電脳世界でも感じるのよ。あの子たちは、毎日、体を切り刻まれる痛みと恐怖の中に閉じ込められている。しかも、貴方は・・・そんな子供たちの意識をゲームの世界に放り込んで、戦争ごっこの銃撃の標的や、変態セックスの相手にしようとしていた。」
「痛みを・・感じている・・・?」
「ええ・・・肉体を失う痛みをね。貴方にそれが、どういうことか理解できるかしら?」
「・・・・。」
「理解できないわよね・・・。そんな愚図な脳みそで、何が夢よ。何が人類の希望よ。笑わせないで・・・」
大岩は、美咲の声が微かに震えていることに気づき、その表情を伺う。
「貴方たちは、私の生み出した電脳世界に、7000もの地獄を作ったのよ。その地獄に放り込まれた子供たちが・・・私に・・・私に・・・・。」
「み・・美咲・・・泣いているのか?」
「いいこと・・社長。あの計画を私が知ったのは、ハッキングなんかじゃないわよ。プログラムが・・彼らが・・私に教えてくれたのよ。彼らが私にメモリーの異常侵食を通報してくれたの。ただの機械でさえ、あのような地獄を受け入れることが出来なかった。彼らはプログラムを進化させる過程で、私との通信方法を取得した。設計者である私を、自分たちを駆動させている動的な外部プロセッサーの一つ、それも設計規則を生み出した特別なプログラムソフトを持っている存在として認識しているの。そんな彼らが、私に教えてくれたのよ。エクステンド・シグナルの異常変調を・・・。」
「彼ら・・・とは・・・コンピューターのことを言っているのか?」
「ソフトとハードの両方よ。私たちもね、社長・・・脳と心は一体なのよ。もちろん、体も・・。だから、貴方は大変な過ちを犯した。人間の意識と人間の体をバラバラに分けて、そのどちらも商品として販売しようとした。いえ・・事実、体はすでに売り飛ばされているみたいですね・・・本当に・・酷い・・・酷すぎる・・・。」
「き・・聞いてくれ・・・美咲・・あの計画はな・・」
「もういいのよ。何を言っても・・・もう・・終わったことだから・・・。」
「終わった・・・どういう意味だ・・・ま・・まさか・・・!!」
「ええ。社長・・・。ご想像の通り、貴方が作った地獄は・・私がこの手で消去しました。」
「な・・・何だと!!」
「この手で消したのよ・・7000個の地獄を・・7000人の意識を・・・。」
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電脳の女神
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良い意味で期待が裏切られました。
2011/10/25(火) 午前 11:41 [ evilcutter ]
エビ氏♪
読んでいただいているだけで感謝・感激です!
本日、完結しましたので、ご報告までに。
また遊びに来てくださいね。
2011/10/26(水) 午後 10:18