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ジャズはニューオーリンズが発祥の地だと言われているが、あのアドリブを応酬させるスリリングな演奏スタイルは明らかに「都会の精神」を感じさせる。トリオ、クインテットで演奏される小規模なジャズバンドにおいて、ドラムセットの持つ役割は非常に重要であり、俺は、ジャズを発展させた原動力とは、テンション・コードの発見やブルーノート・スケールの確立ではなく、むしろドラマーが演奏する「リズム」にあるのだと(勝手に)そう認識している。
しかし、楽器としてのドラム・セットというものは、他の楽器に比べると非常に歴史が浅い。いや、歴史など無いと言ってもよいくらいだ。例えばトランペット、ピアノ、ベース、と並べれば、そこにはヨーロッパ文明から受け継いできた伝統的な演奏技術があり、即ちそれらをマスターする際のメソッドが体系化されている。しかしドラム・セットという楽器はどうだろうか?
ドラム演奏法の基本は米軍隊(主にアーミー)のマーチングから生まれる。演奏しながら行進する例のやつだ。そこではドラマーも大太鼓や小太鼓を肩からぶら下げて、それらを叩きながら行進する。この時点でではドラマーは複数である。大太鼓係、小太鼓係というように、数人から十数人のドラマーが楽団に組み込まれている。
一つの楽器に一人の演奏者。他の楽器では当たり前のことが、ドラムでは「あり得ないこと」だった。では、現代のように複数の太鼓やシンバルを一人で演奏するというスタイルは、どのように生まれ発展してきたのだろう。解説には次のように書かれている。
■欧米の軍楽隊にて、体に付けたバスドラム(大太鼓)の上にシンバルをセットする発想が生まれた。そして1894年、小太鼓奏者ディー・ディー・チャンドラーによって、足でバスドラムを打つペダルが考案された。
しかし、それまでは専らバスドラムとスネアドラムによって演奏されるような、マーチング・バンドの延長でしかなかった。そのドラムセットが劇的に変化する切っ掛けになった最大の発明がハイハットであると言えよう。
これは元々、ジャズドラマーのベイビー・ドッズが演奏中に左足を規則的に動かしていたのを見た観客が「せっかくならその動きを利用できないか」と考えた結果生まれた、左足で二枚のシンバルを叩き合わせるペダル付の楽器「ソック・シンバル(別名:ロー・ボーイ)」という楽器を改良したものである。これにより現代的なドラムセット並びにビートのスタイルが生まれ出たとされている。
解説には書かれていないが、当然だが「ソック・シンバル」の誕生は、ドラマーが椅子に座って演奏するスタイルの中から生まれたものであり、この時にはすでに「右足=バス・ドラム」というスタイルが確立していたらしい。
この「ロー・ソック・シンバル」だが、名前の由来は「低い位置・靴下・シンバル」である。つまり当初は2枚のシンバルが左足の足元にあったのだ。後にこれが改良され「ハイ・ハット・シンバル」と呼ばれるようになる。由来は「高い位置・帽子・シンバル」である。
上記の解説のように、ドラム・セットの演奏法とは、楽器の形態進化と共に確立されてきたものであり、これは「それによって演奏される音楽の進化と共に演奏法も発展する」ということが宿命づけられていることを示唆している。
司会者)
「さあ、そろそろ本番の時間ですよ。ミュージシャンとドラマーの方はステージに上がってください!」
これ、俺がけっこう好きな自虐的ギャグだ。
■Miles Davis - Around The Midnight (1967)
サックスはウェイン・ショーター
ベースがロン・カーター ピアノが(何と)ハービー・ハンコック そしてドラムは若き日のトニー・ウィリアムス!!
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■あれこれ
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