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「一万円だな・・・」 俺の言葉に神様はキョトンとした。 「一人頭の勧誘費用、1万円払うなら、俺が助けてやってもいいぞ。」 「ど、どういう事でしょう?」 「鈍い奴だな。だから、あんたの方法では500万人の勧誘は絶対に無理なんだよ。しかしな、シャバの事情を知り尽くした俺なら、こんな仕事は容易いってことだ。俺に助けて欲しければ、一人当たりの費用として1万円用意しなよ。それで問題は解決だぜ。」 「わかりました。で、でも、その前に言っておくことがあります。勧誘経費は大天空界から前借することになります。ですから、これも3年後に返済しなければなりません。そのあたりの事はお考えでしょうか?」 「馬鹿だな・・マジに・・」 俺は、ややオーバーに呆れて見せた。 「費用は1万円かかるがな、入会金を1万円にすりゃ、プラマイ0だろ?全額返済できるじゃねーか。」 俺の言葉を聞いて、神様はすっかり感心したようだ。 「そうかー、旦那、あんたは天才だ!よし、私は貴方に掛けてみます!」 坂田はそう言うと、深呼吸をして、おもむろにテーブルの上に両手を翳した。 合計500億円の現金が、テーブルの上に積まれ、床に溢れて散乱した。俺は内心、金玉が爆発するほど驚いていたが、そんな素振りを見せるわけにはいかない。何事もなかったかのように、札束の山の向こう側で見え隠れする神様のはげ頭に向かってこう言った。 「よし、これで準備完了だ。後は俺に任せておけって。あんたは天国で巫女さんと好きなだけ楽しんでくれ。」 札束の隙間から、神様が顔を出した。 「よろしくお願いします。ああ、それから言い忘れました。こうやって協力してくださる貴方には言いにくい話なんですが 協力者がいる場合、その方にも責任が生じてしまいます。」 「あん?責任だと。なんだい?それは?」 「ええ、ですから万一目標が達成できない場合、貴方も3年後、大天空界の査問委員会にかけられるってことでして・・・」 俺は、声をあげて笑ってみせた。 「心配するなって。目標達成は確実だ。」 アホの坂田の神様が帰った後、俺は部屋中に散らばった500億円の札束の中に転がり、神様さえ騙せる自分の才能に酔いしれていた。神様!ありがとう!俺は、生まれて初めて神に感謝した。この金でコパカバーナ辺りに豪勢な邸宅でも建てて、褐色の美女に囲まれてクルーザーでドンペリを・・・ そんなことを考えなら、その日は札束の中で眠った。 翌日、微かな頭痛があった。朝は小さな痛みだったが、昼を過ぎると我慢できないほどの痛みに変わった。 診察を終えると、医師は神妙な顔つきで俺に言った。 「脳腫瘍です。患部が大脳中枢神経に絡んでいるいるために手術は不可能です。抗がん剤で抑えたとしても、貴方の命は、あと3年ほどで・・・」 後半のほうの説明はよく覚えていないが、要するに俺はあと、3年しか生きられないってことだ。 (あの野郎・・・保険を掛けやがった・・・) あいつは俺が「勧誘」などする気がないことを見抜いていやがった!・・・考えてみれば当然だ。何しろ アホの坂田に似てるとはいえ、奴はレッキトシタ「神様」なので。 「くそ・・・騙されたか!」 やくざは「筋」が命だ。筋の通らないことを許すわけにはいかない。しかし、この場合、どう考えても「筋」は神様側にある。俺は、神様の言葉を思い出していた。 (貴方も査問委員会にかけられます) つ・・つまり、俺を天国へ連れてゆくって意味じゃねーか!
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アホの坂田が笑ってる
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