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しかし、まだ、希望はある。なんだかんだ言っても、要は俺が「500万人」の信者を集めればよいのだ。目標を達成すれば「天国行き」の理由はない。 (坂田め・・・やりやがった・・・) こうして、俺を追い詰めておけば、俺は勧誘活動をするしかない。俺は完全に「はめられた」のだった。 その日の内に「組」には長期休暇届けを提出して、俺は「信者勧誘」のノウハウを研究すべく、あらゆる宗教関連の書籍を買い集め、「500万人勧誘作戦」を開始したのだ。まさに「命がけの作戦」である。 「日本の宗教」「新興宗教の実態」「信者はこうして騙される」「カルト教団、戦慄の洗脳法」などの評論本が数百冊。 「私は神を見た」 「神は貴方の横にいる」 「信じる力が世界を変える」 「神の光を感じますか」などのインチキ体験本。 「必ず癌は治る」「超光速粒子ペンダントの奇跡」「奇跡の水・ゴッドスエット」・・などのインチキ霊感商品のパンフ。その他に、トンデモ・オカルト・UFO・古代文明・血液型占い・・などの馬鹿本が、俺の部屋を埋めつくしていた。 それらの内容は、やくざの俺が見ても「驚くべき詐欺手法」であることは間違いなかった。驚きは2種類ある。 「いかなる頭脳が、このような出鱈目を創作できるのか?」 「なぜ、この出鱈目を、人は信じることができるのか?」 やくざ顔負けの「インチキ野郎」が、大勢を騙して大金を儲けてやがる。嘘と出任せで成り立っているすごい世界だった。数ヶ月に及ぶ研究の結果、俺は成功している宗教団体、カルト団体、霊感商法には共通の法則があることを見抜いた。つまり、「嘘を嘘と思わせない、適当な、解りいやすいへ理屈」・・・これが成功の鍵なのだ。ただの嘘では誰も騙せないのだが、この嘘を脚色する「それっぽく聞こえる論理、科学的理由」がくっつくと、嘘は途端に「輝き」を得るのである。 思えば、この世は「脚色と装飾」で成り立っているのだ。本物を有難がる人間などごく僅かである。 たらこを脚色すれば「明太子」になる。明太子に成れば高く売れる。つまり、たらこが化ければ明太子、でしゃばりが化ければ芸能人、ブスが化ければキャバ嬢、善人が化ければ貧乏人・夢想家が化ければ詩人、詩人が化ければ音楽家。そして嘘つきが化ければ宗教家か政治家のどっちかだ。 俺の中で「作戦」は次第に形を成してきた。500万人を騙す「大嘘の創造」こそ、この作戦の成功の鍵である。俺の作った「大嘘」を、適当に脚色する理論体系を用意するのだ。世界から戦争を失くす方法、飢餓や差別の無い理想社会の実現・地球環境を守る最新科学・新しいエネルギー・・・「大嘘」もネタには困らない。どれもこれも「自分が正しいと思いたい小市民」の心理を擽るテーマだった。 これらの諸問題を解決できるのは、俺がでっち上げた「宗教」であり、教義である。 俺はまず、「教義」に「適当な理屈」をつけるために、「理想実現研究チーム」を発足させた。倒産しかけている某観光地にホテルを買い上げて、適当な研究機器を導入し、破格の給料を提示して、大学院生 など、若い科学者達を雇った。俺は彼らに例の「大嘘」を、(嘘とは言わずに)研究課題として取り組むように指示を与えた。数週間後、最初の研究報告会議を開いた。宇宙工学・遺伝子工学・地学、気象科学・エネルギー工学など、各分野を専門に学んできた連中である。俺は、多少は期待があったのだ。だが・・・・。 「機材が古くて話になりませーん!」 「こんな設備じゃね・・・田舎の大学の方がましよ」 「まあ、給料は悪くないけどさあ・・」 「テーマもひどくな〜い?代替エネルギーなんて、可能ならとっくに誰かがやってるよねー」 会議はいっこうに始まらず、会場内にはこんな雑談が飛び交っているだけだった。
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アホの坂田が笑ってる
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こんにちは。
宗教の勧誘には困ったものです。勧誘されたほうも、気分的に疲れるし、不快になりますね。
2009/9/21(月) 午後 9:37 [ kemukemu ]
kemukemuさん♪
この物語は、そんな宗教の側面を皮肉りながら進みます。
人間はなぜ、迷信と事実を混同させるのでしょうね。
2009/9/24(木) 午前 5:50