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運営本部が設立され、各チームに必要な設備が整いつつあった。すなわち、俺の「大嘘」を裏付ける理屈を生み出すために「本物」の観測装置が、それも現代の最先端の精度を誇る装置が、開発され始めたのである。2年の歳月を待たず、これらは目覚しい成果を挙げていた。新型の巨大電波望遠鏡は、銀河中心の重力分布を正確に割りだし、超伝導技術を導入した高性能モーターと、コンパクトながら大容量のバッテリーが開発され、このペアに、新たな素材を使った太陽電池が組み込まれると、大型の船舶さえも「電力」で駆動できることが判明した。 俺は、再び「発想の転換」を迫られていた。「大嘘」が「本当」になりつつある。「本当」では人間は騙せないのだ。しかも、この「本当」は、世界の情景を一変させるほどの内容がある。これらの技術が実用化されれば、世界の燃料産業は変革を余儀なくされる。そんな中で、再び俺を困らせる「新技術」が、例の「腐れアマ」から発表された。 「この新しい気体を、モエナインと名づけました。その名の通り、この気体を散布すると、その周辺で火は燃えません。」 一同が首を傾げた。 「詳しく説明してください。」 「はい、このモエナインは、大気中の酸素と融合し、酸素による燃焼反応を阻害します。つまり、これを使用すればいかなる炎も・・・」 「ちょっと待ってくいださい・」 誰かが、彼女の話を遮った。 「それって、すでに消火剤とかに使用されているでしょう?酸素反応を阻害するってことは、 それを散布すると人間は呼吸が出来なくなるってことじゃないですか?」 「いいえ・・・」彼女は自信ありげに、場内に視線を配る。 要約すれば、こういうことだ。モエナインという気体は大気中の酸素を周辺から取り囲み、その反応を阻害するが、これが生体内に入ると、モエナインは速やかに酸素と分離して、吐息として排出されるというのだ。 「炎が発生しないってことは・・・?」 「エンジンが動かないってことだぜ・」 「爆弾が爆発しないってことよね?」 「ピストルも撃てない・・・・」 「ミサイルが墜落する・・いや、ジェット旅客機もか・・?」 「地雷が・・・」 場内は騒然となった。俺の「大嘘」は、ますます本物になりつつある。この新気体は「戦闘行為」を阻害できるのだ!これは数ある研究成果の中でもトップシークレットとされるべき内容だった。各国の軍事事情を揺るがすということは「軍事バランス」を崩す可能性があると言うことである。元やくざの俺には、力関係が崩れるということがいかに危険であるかは直感の内に理解できるのだった。 しかし・・・・。 秘密は思わぬ形で、しかも劇的に世界に公表されることになる。
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アホの坂田が笑ってる
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