羊の隠れ家

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【宇宙戦争】

世界に統一された価値観が根付きはじめ、民族間に存在していた宗教的確執や軋轢が緩和され、国家間における格差も是正されつつあり、総じて地球上から「戦争」なる愚行が排除されつつあるが、ここに来て、新たな、そして深刻な危機が発生したのだ。

「宇宙人の侵略」・・・このSFのような出来事が本当に起きてしまった。宇宙人は、例の「UFO」に
乗って地球に現れ、いきなり、こう宣言した。

「この星は我々がもらう。地球人はさっさと出て行け!」

世界各国の首脳が一堂に会して「地球防衛会議」が開かれた。人類が有する戦闘兵器で果たして彼らの戦闘力に対抗できるかどうか?各国の軍事関係者は「交戦すべき!」と、声を荒げた。地球防衛軍が設立され、世界はとうとう「宇宙戦争」という未知の戦争に突入することとなった。

上空から飛来するUFOを迎撃すべく、各国の空軍参謀たちは新たな空中戦のスタイルを模索し、敵のUFOの運動性能や攻撃力といったデータは、各国の作戦本部がインターネットを通じて共有した。やがて、これらのデータを一括処理するために「地球防衛コンピューター・通称ゴッド」が開発された。敵の動きを素早く、的確に予測するこのシステムのおかげで、実質的に性能が劣る戦闘機でも、UFOの攻撃を防ぎ、これを撃墜することが可能となった。

各国の、各地に飛来するUFOが地上を攻撃する直前に、「ゴッド」は彼らの攻撃パターンを解析して、
各部隊に指示を出した。ゴッドからの的確なデータを受けた最新鋭戦闘機F−22ラピュターやPAC3(パトリオットミサイル)などの活躍で、UFOは悉く撃墜され、我々人類は、初の宇宙戦争に勝利しつつあったのだ。

しかし、そんなある日、5機のUFOが日本上空に飛来した。自衛隊は直ちに戦闘機を出動させ、これを撃破しようとしたのだが、この5機は予想もしない行動にでた。5機とも、一直線に地上を目指し、それぞれが東京の国会議事堂、防衛省、NHK、新宿歌舞伎町、ディズニーランドの5箇所に「激突」して爆発したのだ。攻撃を受けた場所は、日本の社会の存続に関わる「重要拠点」である。この「激突」が偶然ではないことは明らかだった。

「まさか・・特攻攻撃ではあるまいな・・・」
アメリカ軍の軍事参謀の言葉に、一同が息を飲んだ。
「いや、可能性はある・・・」
フランス空軍の大佐が口を開いた。
「遠く、宇宙から飛んできたUFOが、操縦を誤って墜落するなどと考えるのは不自然ではないか?」

この悪い予感は的中した。彼らは、地球防衛軍の迎撃をかわすために「決死の覚悟」で地上に突っ込んでくるという「神風特攻隊作戦」に打って出たのである。このような「非論理的行動」までは「ゴッド」の予測範囲外であった。世界各地で特攻攻撃による被害が続発していた。地球防衛軍は、新たな局面を迎えていたのだ。

「し・・しかし。宇宙人が特攻とは・・・!」
「おそらく、彼らも必死なんですよ。」
「いったい、どうすれば特攻攻撃に対抗できるのだ!」

防衛会議は荒れた。各国首脳は「UFOによる特攻攻撃」に有効な対応策を見出せずにいた。

その時、一人の学者が立ち上がった。

「皆さん、彼らが特攻を行うということは、つまり、彼らは宗教的な背景がある・・・と想像できませんか?」

一同は、はっとなって学者を見つめていた。

「大戦末期の日本軍、あるいはイスラム原理主義・・どちらも、その原点は「神に対する忠誠心」です。」
「そ・・そうか。奴等にも神様がいるってことか・・・。」
「我々の防衛コンピューターには、そのような概念は入力されていない・・・」
「そうです。ですから特攻攻撃を予測できないのです。」
「つ、つまり、ゴッドに「神様とはなにか?」を入力すれば・・・?」
「そうすれば、彼らの行動パターンを予測できると言うことか?!」

防衛軍本部には、世界中から宗教家たちが集められ、「神概念」の入力作業が始まった。これが成功すればUFOの攻撃パターンは予測でき、撃墜が可能となるのだ。そして数週間の後に、作業はすべて終了した。

「よし、スイッチを入れるぞ!」
生まれ変わった「ゴッド」のメインスイッチに指をかけて、長官は静かに、それを押した。作戦本部の中央にあるゴッドの、巨大なモニターがうっすらと輝き始めた。様々なプログラムがモニターを駆け巡っている。画面には、不規則な記号がスクロールされ、スピーカーからは聴いたこともないようなノイズが発生していた。やがて、メインサーバーがショートして、火花が散った。

「いったい、どうしたんだ!」

長官の声は震えていた。コントロールパネルからは白煙が上がり、激しいノイズが部屋中に響きわたり、
全員が苦悶の表情で、両手で耳を塞いでいた。

そんな部屋の片隅で、一人のエンジニアがタバコを銜えながらつぶやいた。

「やはりな・・・論理回路に非論理を理解させようなんて、所詮、無理ってことさ。」

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