羊の隠れ家

■■■Taku2001zooのブログ■■■

ああ・・教祖様!

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私がドアを開くと「悪魔獣」どもは驚いたように私を見た。私は彼等に隙を与えなかった。一番手前に座っている悪魔獣の胸の中央に向けて、右手を素早く突き出した。

「神雷槍!!」

私の右手の人差し指から、稲妻のような矢が放たれ、悪魔獣の胸を貫いていた。「グェ・・!!」と、短い悲鳴を上げて、悪魔獣は床に転がり、その胸からは緑色の血液が飛び散っている。それを見た、もう一匹の悪魔獣が、私に向かってガラス製の灰皿を投げつけた。私は素早く左手を宙にかざした。

「霊盾!!」

灰皿は、目に見えない盾にぶつかり空中で粉々になった。私は、右手を真横に振りながら叫んだ。

「神刀両断!!」

灰皿を投げた悪魔獣の首が、私の目の前で胴体から千切れ、宙に飛んでテーブルの上に乗った。胴体を失った首はしばらく目玉をぎょろぎょろとさせていたが、やがて泡を吹いてテーブルに転がっていた。首を失った胴体は、首を無くしたことに気づかないのか、両手をバタバタさせばがら、緑色の血を撒き散らし部屋の中を走りまわり、壁に激突して動かなくなった。

「ひ・・ひいいいいいいいいいい・・・・!!!」

正面に座っていた悪魔獣の親玉が、獣らしい悲鳴を上げながらドアへと突進する。私は、その背中に叫んだ。

「神力剣!!」

私の両手から放たれた「剣」が、逃げる悪魔獣の両足を一瞬で切断し、獣は大きな音を立てながら床に倒れる。恐怖と痛みで歪んだ獣を見下ろしながら、私は、静かな声で言った。

「破裂しなさい・・・」

悪魔獣の腹が見る見る間に膨張し、体を包む衣服が引き千切れ、その内部から醜い青緑色の皮膚が見え始めた。やがて、その膨らんだ腹の中央に、一筋の割れ目ができ、次の瞬間、悪魔獣は音を立てて「破裂」した。部屋には、獣どもが撒き散らした贓物と血液が飛び散っていた。


おそらく、私の「悪魔獣退治」の功績が認められたのであろう。私には「個室」が与えられ、白衣を着た「巫女」が、一日に3食もの食事を運んでくれる。また、新しい霊士様が、毎日のように「悪魔退治」の様子を私に聞いてくる。私は、そこで起きたことを話す度に、私に「魔獣撃破術」を教えてくださった教団の素晴らしさと、この術をあみ出した教祖様の偉大さを感じ、深く感謝せずにはいられない。

「真昼の惨劇・宗教団体幹部惨殺事件」
「被害者は3名。いずれも教団幹部と判明。」
「逮捕された信者。犯行を自白!!」
「暴かれる。恐怖のカルト教団。闇の臓器売買組織・・・」
「数百人を殺害か!行方不明の少女達の家族が被害者の会を設立。」
「香港組織の仲介人は医学界の大物!!」
「某医大にて(臓器の受けとり)を示す新たな証拠発見!」
「日本医学界に横たわる恐怖の闇・・・」

「ところで・・」と、新聞を見ながら一人の刑事がつぶやいた。
「凶器はまだ、発見されないのか?」
「ええ・・見つかりません・・・」
「共犯者は・・?」
「現場には痕跡がありませんね。単独犯ですよ。」
「でもなぁ・・・女が力づくでやれる殺しじゃねーよなあ・・」
「まったくッス。切り刻んで、破裂してますからねえ・・」
「その、犯人の女は今、どうしてるんだ?まだ病院かい?」
「ええ、病院にいますよ。逃走する恐れもないでしょう。」

刑事は再び、新聞に目を落とした。そこにはこんな文字があった。

「なぜ、人は・・このような嘘に騙されるのか?」
「見ろ!悪魔獣が姿を現すぞ!」

霊士様の一人がそう叫んだ。彼女の全身は青く染まり、額の中央を盛り上がりはじめている。

(ああ・・本当に悪魔獣が・・・!)

霊士様が、心を鬼にして変身しつつある彼女の胸に「払い棒」を突き立て、意識を奪った。

数年の月日が過ぎていった。悪魔獣の攻撃は留まることを知らず、時には一ヶ月のうちに数人もの巫女が、悪魔獣の侵略を受けて挫折してしまったが、世間には、私達の「真実」を知って、仲間になってくれる方々がたくさんいるので、教団が、その「目標」を諦める理由はなかった。

ある日、私達の施設に「教祖様」が来てくださった。巫女たちは興奮して、誰もがそのお顔を一目拝見したいと思っていた。そんな中、突然、幹部霊士の一人が、私を呼び出したのだ。

「君の成績は、全国の施設の中でも極めて優秀だ。教祖様は、君を幹部霊士に昇格させ、全国の巫女達の教育担当にしたいと考えておられる。引き受けてくれるかな?」私は、天に昇るような思いで、その言葉を聞いていた。

教祖様の部屋のドアの前で、高ぶる気持ちを落ち着けようと深呼吸して、ドアのノブに手をかけた時、部屋の中から数人の笑い声が聞こえてきた。

「しかし、馬鹿な女達だな。毎日、給料ゼロで働きやがる。」
「まあ、そのおかげでボロ儲けだがな。特に(悪魔払い)ってやつで・・」
「わっははは・・悪魔払いか。まったく有難い話じゃねーか。こっちはタダで、新鮮な臓器が手に入る。」
「ああ、まったくだな。香港ルートも安定してきたし、そろそろ中東あたりに営業に行くか?」
「中東もいいが、まず、国内を固める必要があるぜ。国内需要はバカにできないからな。」
「そうだな・・国内なら、面倒な冷凍保存なしに、直接、病院へ送るって方法もありだしなあ・・」
「どっちにしても(生きた臓器)の入手には困らない。これができるのは俺達だけだ。」
「く・く・く・・そうそう、教祖様と霊士様だけってことだ!」

ドアの向こう側には「三匹の悪魔獣」がいた。私は恐怖に体が震えてしまった。悪魔獣は「教祖様」と「霊士様」の体を侵略してしまったのだ。ドアの隙間から恐る恐る中を見ると、正面に座っている悪魔獣だけが、その頭に2本の角があった。(あいつが、悪魔獣の親玉なんだ)
私は、目を閉じて精神統一した。この時のために、厳しい修行に耐えてきたのだ。私には「魔獣撃破術」があるではないか!

恐れるな・・・恐れるな!倒すのだ・・私なら・私ならできる!!
「太陽は人間の精神を反映する鏡なのです。精神が弱まり、暗黒の力に負けてしまう時、黒点活動は乱れ、地上では災厄が発生します。私達は急がなければなりません。「暗黒の力」は益々、その力を強めて世界中の大気が乱れ、異常高温が発生しつつあります。これは、「暗黒の力」すなわち「悪魔獣」が、この地球を支配するために自然を変化させようとしているのです。「悪魔獣」は、ジメジメとした高温多湿、不潔な空気と薄暗い環境を好むのです。

ご存知ですよね?精神が弱くなった人間達は皆、このような環境に誘惑されて、薄暗く、汚い空気が満ち溢れる場所でふしだらな快楽に酔いしれているではないですか!」

大都会の喧騒と、不潔さの理由がやっと理解できた。そして、今の今まで、この年になるまで、その理由を知らないで生きていた自分が恥ずかしく思えてきた。

私達「新人」は、その正式名称を「霊の巫女」という。普段は、これを「巫女」と呼び、巫女は教団の活動を底辺で支える仕事をさせてもらえる。巫女を正しく導いてくださる方々を「幹部霊士」と呼び、幹部霊士は教団活動全体を統率しながら、巫女たちに「真理」を教える立場にある。そのような優秀な幹部霊士を、さらに高い次元に導いてくださるのが「教祖様」であり、私達、巫女は教祖様には滅多にお会いすることはない。

私達は、教団施設において数週間かけて「修行」を受ける。これは、普通の精神のままで巫女になると、たちまち「悪魔獣」に捕りつかれてしまうからである。「悪魔獣」にとって、私達の存在は「最も疎ましい」ものであり、自分たちの野望・つまり「地球征服」の実現を妨げる存在である。

「ですから、貴女たちには、特別な訓練が必要です。」
「悪魔獣とは、夢のような存在ではありません。実体があります。」
「精神が弱いと、これに心を侵略されて、貴女達は人間の姿を失ってしまいます。」
「悪魔獣の皮膚は、緑がかった青で、ヌルヌルと光り、その額には一本の角が生えています。」
「悪魔獣に侵略された人間は、このような姿い変わるのです。」

私達は、いつ「侵略」されるかも知れないという恐怖と戦いながら、これに打ち勝つための秘術を体得するために日々、辛い修行に耐え続けた。一日に一度の食事、毎日30Kmを超えるマラソン。数時間に及ぶ座禅と精神統一。

私は、次第に自分の心が強くなってゆくのを感じた。霊士様の指導は正しいのだ。
実技の訓練もあった。これは「魔獣撃破術」と呼ばれ、空手の型に似た動きなのだが、この形をマスターすると目の前に迫った魔獣を殺傷できるという、強力な「秘術」だった。
私たちは、この世界を魔獣の侵略から救える「唯一の存在」なのである。私は誰よりも「魔獣撃破術」の訓練に打ち込み、数百通りもある「形」を、すべて訓練期間中に覚え、霊士様たちを驚かせた。

訓練期間が終了すると、私達は実際に街に出て、教団を支えるための「奉仕活動」を開始する。
私達の教団の目的・・・それは、この世界を悪魔獣の侵略から阻止するために、地上に、強い精神を持った人間だけで創られた「理想社会」を実現させ、ここに、多くの強く、正しい精神波動を集中させて、乱れた「宇宙波動」を回復させることにある。これが実現しなければ人類に未来はない。私達「巫女」の使命とは、その実現に必要な資金を集めるために、教祖様が「大霊力」によって創造された「霊力の御霊」の数々を販売するにある。

霊力の御霊とは、教祖様の偉大なる霊力が宿っている「壷」や「ペンダント」であり、また、教祖様自身がお書きになった「霊言集」などである。いずれも高貴で高価な品々であるが、心優しい教祖様は、これらの品々を「半額」にして、俗世界の迷える民達に販売し、彼らを救おうとしているのである。私達、巫女は、教祖様の崇高な意思を受け継ぎ、毎日、寝る時間も惜しんで「霊力の御霊」の販売活動に専念した。

そんなある日、とうとう私達「巫女」の中から、「悪魔獣」に捕りつかれた者が現れてしまった。きっと心に油断があったのだろう。彼女は「奉仕活動」をさぼり、教団から逃げ出そうとしたのだ。このような状態で教団を離れると「悪魔獣」は完全に彼女の体を支配し、この世に災厄を齎してしまう。

霊士様たちは、彼女を全裸にして取り押さえ「払い棒」で、その全身を強く打った。これは「悪魔払いの儀」と呼ばれ、悪魔獣に捕りつかれた巫女を救う、唯一の方法なのだった。霊士様に打たれた彼女の皮膚は、初めは赤く腫れたのだが、次第にどす黒く変色し始めた。彼女は泣き喚きながら悶えている。
誰が私の絶望を理解してくれると言うのだろうか・・・?

この世界は絶望に満ち溢れている。発展途上国では多くの人間が餓死している中で、一方では
先進国の亡者どもは、今夜も高級な酒をあおり、食べ残した肉を捨てているのだ。
ああ・・・私は、この乱れた世界ではなんて無力な存在だろうか?
女子高を卒業した、短大を出て、都内の小さな会社でOLをやっている。
それだけの自分・それだけの人生。なんて無力で、無意味な存在なのだろうか・・・。

「ちょっと、すみません。アンケートにお答えいただけませんかあ?」
駅前を歩いていると、見知らぬ女性が私に声をかけてきた。
「今、私たちのサークルではこのような活動をしていまして・・・」
と、彼女は私に質素なデザインのパンフレットを見せた。

「貴方は今、幸せですか?」

「人間は誰もが幸せを願っています。誰もが平和を願っています。でも、この世界では戦争や飢餓が絶えたことがありません。これは不思議なことだとは思いませんか?」

彼女は、キラキラと光る瞳で私を見つめながら、説明を続けた。

「私たちのサークルの目的とは、これらのことについて真剣に考えその解決法を学んでゆくということなんです。」

こんなサークル活動をしている人達がいるのか・・!不思議な気持ちだった。この女性なら、「私の絶望」を理解してくれるような気がした。翌日、私は彼女達が主催する勉強会へと、足を運んだ。

「まず初めての皆様には、宇宙を支配する「波動」について理解してほしいのです。」

・・・宇宙を支配する波動。彼女はこの聞きなれない言葉を説明してくれた。
「現在、この波動は非常に乱れています。波動の乱れはNASAの地球探査衛星でも確認されています。
つまり、地球は年々、太陽との距離がひらきつつあるのです。太陽との距離が遠くなっているにも関わらず、この地上では平均気温がどんどん上昇しています。不思議なことです。しかし、各国の政府はこの事実を隠しています。」

私は息を呑む思いがした。私が知りたかった「真実」が、今、語られているのではないか・・!?

「地球を安定させる根本波動とは、人間の精神なのです。精神が乱れているから宇宙は波動が乱れ、乱れた波動は益々人間の心を乱します。しかし、これは、人間の仕業だけではないのです。人間社会に乱れを生じさせ、この世界を破滅させる「恐怖の力・暗黒の力」が存在するのです。地球公転軌道の乱れや、太陽の黒点活動の乱れも、すべてこの「暗黒の力」の仕業です。

なんと言うことだろう!私達の精神が、太陽活動にまで影響を与えているなんて・・・そんな事があるだろうか?

「初めての皆様には信じられないお話かも知れませんね。でも、ここに一つのデータがあります。これは太陽黒点活動の変化を示したグラフです。」

正面のプロジェクターには複雑に曲がった折れ線グラフが映し出された。

「皆様、グラフが大きく跳ね上がっている部分に注目してください。これは黒点が異常活動した時期を表しています。そして、この時期に、地球上では何が起こったでしょうか?」

グラフの下部に、地球で起きた「出来事」が示されていた。
大きな戦争・大地震・異常気象・大統領暗殺・無差別殺人・・・
それらのすべてが「黒点異常」の時期と一致しているではないか!?

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