道しるべの向こう

ひとりぼっちはいやだけど やさしいことばもいらないさ

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本当に良かったのか…

深夜
飲み会の後
シメによく通ったラーメン屋さんへ
ツレたちと寄った

ツレたちは
痩せてる割にはよく食べる

結構
飲んで食べたはずなのに
ラーメンとギョーザセットを
注文していた

僕も勢いでラーメンを頼んだが
とうとう食べ切れなかった


最近は本当に食べなくなったな
お前は…
太ってた頃は
バカスカ食べて飲んでたのに…

当たり前だ
だから
一時は90キロを超えるほどにまで
太ってしまったのに…

そういえば
あの頃は毎週のように
アジトでの部活の後
このラーメン屋さんへ
足を運んでいたっけ…

部活自体は
今もそんなに変わらないけど…







日中の仕事は大変だった
本部での大会議室
朝から夕方まで続いた役員説明会

夕方の4時過ぎに
ようやく終わった

疲れていた…

終わったあと
朝から喫えなかった煙草
喫煙ルームで
みんなと一緒に煙を吐いていた

長かったね…

お互いにそう言いながら
幹部のツレと紫煙をくゆらせていた

あともう少しだから…

幹部のツレは
そう言って新しい煙草に火を点けた

火を点けたツレは
この3月で退社してしまう

もうひと月も残っていない
長かったね…という言葉
そんな彼の言葉に
別の意味で
しみじみとした想いが感じられる

僕にとっては
30年以上もこの会社に勤め
苦労を共にしてきた
大切なツレの一人だ

彼がいなくなれば
昔からの
仲良し3人組の一つが欠けてしまう

寂しくなる
かなり寂しく…

泣きたくなるほど
寂しい想いでいっぱいだ






会議の合間の昼休み
専務から呼び出されていた

専務の部屋のソファに座ると
彼はテーブルの上に
幹部やリーダーの4月人事案を記した
ペーパーを差し出した

4月から
この体制で行こうと思うんだけど…

目の前に出されたペーパーには
新しい幹部やリーダーたちの
配属案が書かれていた

その中で
退社する幹部のツレの後釜には
仲良し3人組の
もう一人のツレの名前が書かれていた
今はまだリーダーの…

僕はそれを見て
驚いたようなフリをしたが…



実は
何日か前に
社長に呼び出されて
打診をされていた

4月からこんな体制で行こうと
専務から提案されているんだが
これでやっていけるか?
お前はどう思う?
と…

新体制案を見て
かなりの不安もあったが…

やって行くしかないですね
今の社員の中じゃ
贅沢は言ってられませんから…



そう言いながら
僕が幹部に引き上げられた時のことを
思い出していた

社長が幹部に僕の名前をあげた時
専務や他の取締役から
少し抵抗があったらしい…

まだ若い彼を幹部だなんて
しかも
我が社にとっては
最も重要なポストですよ
と…

何を言ってるんだ
私にとって信頼を置けるのは
彼しかいないんだ
年上の幹部にいくら経験があろうと
信頼できなければ何にもならない

そう言って押し切られたと
専務の口から当時聞かされていた

君と社長は
一体どんな関係なのか…?

専務は首を傾げていた
そしてそれ以来
専務も僕には一目置くようになった






長かったね…
そう言った辞めちゃうツレは
まだ新体制のことを知らされていない

知れば驚くのかどうか…
或いは
予想していたよとでも言うのか…


煙草を喫い終えると
僕は一足先に喫煙ルームを後にしていた
まだ煙草を喫ってるツレを残して…







勢いよくラーメンをすすっている
部活のツレたちの横で
食べきれないラーメンを残したまま
箸を置いた僕は
ケータイを確認していた

着歴を…

K女史からのメールが
9時半ごろに届いていた
気がつかなかった

なんでもないような
彼女のメールだったが…


また
寒さがぶり返してきましたね
でも
私は暖かい気持ちでいっぱいです

親でもなく
子でもない
あなたという一人の男の人から
必要に思われてるだけで
これから私は生きて行けます

幸せです…


60近くになっても
少女のような彼女の想い

僕を妻帯者だとわかっていながら
長い間
閉ざしてきた心を開き始めた
そんな彼女の想い…

嬉しさでいっぱいになった

ただ
嬉しいのには間違いないけど
彼女にそんな想いを持たせてしまって
本当に良かったのか…

いつもの如く
後ろめたい想いにも駆られ始めていた
自分でそうさせておきながら…


返事を送ろうと思ったが
深夜の1時じゃ
あまりにも…

しかも
幸せな家庭を持っている
そんなツレたちの隣で…

彼らは子供たちの結婚や
孫の話でいつも頬を緩ませている

僕とは少し違う幸せなヤツらだ
というか
僕が変わっているのか…

こんな歳になっても
まだいろいろと
悩んでるなんて…
足掻いてるなんて…

年甲斐もなく…







真っ暗な家に着くと
シャワーも浴びず
そのまま寝てしまった

K女史への返信
朝起きてから送ろうと思いつつ
深い眠りに入って行った


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