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電車を降りても、珍しくボクは文庫本に没頭していた。 こんなことは珍しい。大体は眠りこけて本を床に落としたり、挙句の果ては失くしたりが いつものことなのに、今夜は電車を降り階段を下りながらもまだ読んでいる。 駅の明かりが残る最後のところでまで、しばらく立ち止まってまで読んでいた。 途切れのいいところで、本を閉じ目を上げると、昭和50年ごろのボクの育った田舎の駅前の風景だった。 ボクの目の前を作業着姿の親父が前を歩いていた。 駅前なのに客のいることのなさそうな田舎旅館と、暇そうに人気のないタクシー会社のさびしげな街灯の前で、 その風景にしっとり溶け込むように、親父は立ち止まり、しんせいに火をともし道端に唾を吐いた。 「何だ、おとうさん。汚いよ。そんなところにツバなんかはいて」 「タバコだって、歩きタバコはダメだよ」 あっ、そういった瞬間、親父の姿が自分に変わっていた。 親父は、一等兵として満州に出兵し、2年で終戦を向かえ帰還した。 それからは、一生を家業の材木商を手伝って、2年前の暮れに次世へ旅たった。 いったいなぜ親父が今、ボクの前にいたのか分からない。 しかも昭和のあの時代だったのか分からない。思い出深いあの田舎駅は、実家を離れたからは 行ったことがないがどう変わっているのかもしらない。 薄暗闇の夜道を家まで行く足音が、コツコツ、コツコツ20数年の時を刻んでいるように感じた。 足音とともに徐々に我に返って行く自分がいた。コンビニの蛍光灯がまぶしいほどに足元を照らしていた。
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そこに背中があった。
幼い私を叱るとき、背中が語った。
反抗期の頃、変わらない背中に安堵した。
実家を離れるとき、背中に向けて伝えた。
ふと気が付くと、弱々しい小さな背中が見えた。
しかし私にとっては、いつまでも広く逞しい背中だ。
決して涙を見せることのない、背中。
2009/1/29(木) 午前 0:33
背中はなかない。
背中は語らない。
しかし背中は、夢を見る。
2009/1/29(木) 午後 0:57
いやぁ、僕は夢を見ないので解りませんが・・・
そういう想いを持っているのは幸せな事なんでしょうねぇ。
2009/1/29(木) 午後 11:25
イヒヒ、ヤマセミ心さんは夢を見ないのですかー。
眠りが浅いのか、深いのかなあ〜〜
2009/1/30(金) 午後 0:24
いやぁ、深いんだと思いますよぉ!
何しろ歯軋りで、神経を駄目にしちゃうくらいですから!(笑)
2009/1/31(土) 午前 0:29
おー、それはすごいーーー
2009/1/31(土) 午後 10:26