続きが気になって気になって、書店を見つけるたびに覗いていたものの、
なぜかどこにもなかった。
ないのなら、遺失物センターに行けばよいのだが、
文庫本1冊が届いているものだろうか。しかも、どこぞの行ったこともないような見知らぬ駅まで、
お金をかけて引き取りに行くのも面倒でたまらないと思っていた。
しょせん文庫本1冊。また買えばいい。それほどするわけもない。
そう思いながら、10日以上もたっていた。
それが、行きつけの本屋さんにあったとは・・・。とほほ。。。
棚のなかに書名を見つけるや、やっと見つけたという喜びが先導していた。
すかさず手に取り会計に向かった。
しかし、文庫本も、思いのほか高価なものだ。
レジの係員から、「775円です」といわれてハッとした。
さっき食べたばかりの「まるちゃんのランチ1番(ひとくちヒレカツ)750円」より高いではないかー。
引き取りにいったほうが、安かったのかな・・・? ちょっと後悔した。
☆☆☆
どこまで読んだか、早速歩きながら開いてみる。
どのあたりだろうか、この辺かっ。こういう時って、意外とすぐには見つけられないものだ。
数行読んでは、ここは読んだ。また数行読んでは、ここも読んだ。
何気なく、しおりの入っていたページを開くと・・・・。
ま〜、なんということでしょうー。まさに、”ここからだよ”といわんばかりに、ドンピシャッ!
まるで、この本が教えたくれたようだった。
この本・・・ボクが失くした本? ってことはないだろうけど・・・。
まさか、虎ノ門書房がそんなことする訳ない。
しかしまー、書店を見つけては立ち寄って、立ち寄っては何かしら買って、
すでに4000円くらいは遣っている。
その中には、当然ながら浅見光彦がいるわけで、新しいのを読み出したところで、
しかも、週刊文春の連載も読んでいて、いったい浅見光彦がどこにいるのか、
何がどうなっているのかー、あ〜、ぐちゃぐちゃだー。
ふむ、不思議!
連載の中で、浅見は淡路島に行ったのではなかったかなあ?
そっかー、鯨の哭く海では、そうか大地町。
透明な遺書では、喜多方かー。
あはは。。。書いていたら何だなんだ、整理が付いたみたいだ・・・・、あはは。。。。
明日は週刊文春の発売日だー。350円あったかなー。
「えっ。それ、ボクが先週電車の中で失くした本なのですが」
「は?」
「2/3は読んでるんです。1/3の値段とはいいませんが、せめて500円になりませんか」
「は?」
「先週、読んでいたのですよ。それが、電車の中でなくしてしまったのですよ」
「はーーーーぁ?」
「775円って、文庫本にしては高くないですか。読みかけなので少し安くしてくれませんか」
「はーーーーーーーーーーぁ?」
「だからいいですか、よく聞いてくださいね。先週の木曜のことです。その日は寒い日でした。
事務所にいてもあまり寒いので、帰りがけにちょっと体を温めてから帰ろうとしたのです。
ちょうどその日は、お店のオヤジさんがふぐを出してくれたんです。で、当然ながら、お酒は、
ひれ酒になる訳ですよ。ひれ酒って、知ってますー? お燗したお酒の茶碗にふたをして、
アルコールを溜めるんです。たまったところで、ふたをおもむろに取り、そして、お酒に浮いた
ひれに火を付けるんです。すると、溜まったアルコールに火がついて、青白くゆったりと燃えるんですよ。
それもですね。箸でゆっくりゆっくり混ぜながら、中にあるアルコール分も燃やすのですよ。
それがですね。幻想的で、いい色なんですよー。ゆっくりゆっくり、こうやって箸で中からアルコールを
呼び出すように。その箸のグルグル回るのを見ているだけで、目が回りそうで、いえいえ、飲みすぎ?
そんなことはありませんよ。その段階で、継ぎ酒は2回しかしてませんから。でもねー、
アルコールをそんな風に飛ばしていますからね、アルコールは抜けていて、いくら飲んだって、
そう、酔いはしません。で、でね。いやいや、話が長くなりすみません。それから、電車に揺られて
帰ったのですよ。いえ、まだ早い時間でしたから、乗り越しても戻りの電車はありましたよ。
まー、聞いてください。それでね、戻りの電車で戻ったのはいいのですが、ないのですよ。
読みかけの本、それが、その本なのですよ。あと、1/3くらいのところで、いいところなんですよ。
知っていると思いますけど、内田康夫の本って、そのころになると、ぐいぐいと読者を引き込んでくるんです。
あはは、そこまで行かないと引き込まないのかってー、そんなところもあるかもしれませんね。
あなたも読みます? そうですか、読まないのですか。それは残念ですね。それでね・・・・」
「分りました分りました。もう2/3を読んでいるんですね。」
「そー、そうなのですよ」
「それはそれは、775円です」
「お昼代、750円でしたけど」
「はい、よく分かりました775円です」
「やっぱり」
「はい、やっぱり775円です」
「そうですかー」
「775円です。はい、お次の方ー・・・・」
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