とぼとぼ Tamagoro

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スクーターに乗って、ボクは地方都市の片隅を走っていた。

50ccながら、250ccもあろうかと思えるほどしっかりした躯体で、

けっこう高級感のあるメタリックなスクーターだ。



歩道橋のある割と大きな交差点を左折すると、夕闇が迫っていた。

ライトを点灯しようとすると、スイッチボタンが分からない。

その時なって、ヘルメットを付けていないことに気づいた。

ヘルメットは義務付けなのに、よく捕まらずに走ってきたものだ、と胸をなでおろした。


ライトのスイッチを探しながら、ヘルメットも探した。

ヘルメットは、座席の下のボックスにあった。スイッチもスロットル近くに分かった。

ハンドルの下のほうに、もうひとつ大きなコンソールボックスがあった。

開けて見ると、着替えやら歯ブラシがあった。でもボクのではない。


「そうだ、先日、人から譲り受けたのだ。支払いもすっかり忘れている。

そうだ、そうだ、支払いをしないと・・・・」。

そして、目が覚めた。



目が覚めてから、その夢のことはすっかり忘れていた。ただ、誰かにお金を返さなければ。

その思いだけが、朝のボクを支配していた。

誰に? いくら?

誰かに借りたお金を返す。そのことだけを考えていたが思い当たらない。

あの人? いや、あの人? ん〜? 誰に借りたのだろう???


歯磨きをしながらも、窓辺で朝のコーヒーをくゆらしているときも、終始、頭から離れない。

そうして、いつも家を出る時間を逸した。

「あっ、時間だ!」

電車に乗っているときも、そのことが気になり、たとえ隣のねーちゃんにこずかれようと、

いつもなら「何だこのヒステリックは?」と、思うところ、まったく気にもならなかった。



そうして、事務所に付いたとき、前のデスクに座る人も見たとき、すべてに開放された。

「そうだっ! あれは、スクーター代だ。確か、15万円。しかも、あはは・・・、夢だ」

スッキリした気分で、PCの電源を入れた。

気持ちの良い、1日の始まりだった〜〜〜〜。


始まりだけは、そう、悪くはなかったが・・・。

夕刻、東京タワーを見つめていた。

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