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どれだけの時が経ったのか、ひんやりとした風を頬に感じて、政浩は目を覚ました。
辺りは既に薄明るく、夜が明け始めた事がわかる。
横になったまま、何気なく横を見ると、そこには長今が眠っていた。
昨夜とは打って変わって、とてもよい顔色をしている。
政浩は、微笑みながら体を起こすと、それに気が付いたのか長今もまた、目を覚ました。
石の台の上で・・・それも、同衾はしなかったとはいえ、政浩も長今もやたら恥ずかしさを感じ、頬を赤らめる。
が・・・
何処からか朝日が差し込んできたと同時に
「 キャッ!! 」
と、悲鳴を上げて、長今は政浩の背中にしがみつき、朝日を避けようとした。
吸血鬼は、太陽の光を浴びると体が灰になってしまうからだった。
だが・・・長今の姿はそのままだった。
「 長今さん??? 」
「 あ・・・私・・・どうしたの??? 」
戸惑いながら、両手を・・・体を見詰めていく長今。
朝日を浴びているというのに、長今の姿は、灰になる気配が全くなかったのである。
「 政浩様・・・私・・・ 」
「 長今さん!! 」
政浩は、嬉しそうに笑いながら、長今の両腕を掴むとこう言った。
「 臨津江の河の神様が仰っていらしたではないですか 」
と。
「 あ・・・え・・・ 」
長今は、臨津江の河の神の言葉を思い出す。
「 今日からは、日の光を恐れなくともいいんですよ 」
「 あ・・・ 」
長今の目から、涙がこぼれ落ちた。
政浩は長今をそっと抱きしめた後、微笑みながら両手でその涙を拭う。
「 長今さん、さぁ、行きましょう。私の屋敷へ 」
「 政浩様の・・・お屋敷へ??? 」
「 河の神様が仰っていたではありませんか。私の屋敷へ行けば、貴女は真の貴女を取り戻す事が出来ると 」
「 本当の・・・私・・・ 」
政浩は、ゆっくりと頷くと、長今の手を取り立ち上がった。
長今と連れ立って、政浩が屋敷へ戻ると、政浩の父と今英が飛び出すように屋敷から出てきた。
「 長今さん・・・よかった・・・無事だったのですね 」
今英は、長今に飛びつくと、その体を抱きしめ、何度も
「 よかった・・・よかった・・・」
と、繰り返している。
「 く・・・今英さん・・・ 」
「 伯父様から、貴女が私の身代わりになったと聞かされて・・・ でも・・・よかった・・・ 」
「 父上、ただ今戻りました 」
政浩が、父に挨拶をすると、政浩の父はゆっくりと頷く。
その後、政浩の父は長今に近づくと
「 長今さん、貴女に会わせたい人がいるのですが・・ 」
と、言った。
「 私に・・・ですか? 」
わけがわからず、戸惑いの声をもらす長今。
だが・・・
政浩の父が、母屋の方を振り返った時、現れた人物を見て、先ず驚いたのは政浩の方だった。
「 徐 ( ソ ) 内禁衛将 ( ネグミジャン ) 様ではありませんか 」
そこにいたのは、政浩の上司でもある内禁衛の大将だったのだ。
「 何故・・・内禁衛将様が・・・こちらに・・・ 」
尋ねる政浩。
しかし・・・
内禁衛将は、じっと長今の姿を見つめている。
「 長今・・・長今なのか? 」
内禁衛将が、搾り出すかのように口走った。
その声を聞いた長今の体が、ビクリと震える。
優しく・・・慈愛に溢れた声。
遠い記憶が・・・長今の脳裏に蘇り、思わず長今は
「 お父・・・さ・・・ん!! お父さん!! 」
と、口に出していた。
>>> 続く
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