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「耐えられる痛み」
これはむつかしい。外科に匙を投げられたのに、細胞診のために生検が必要です。
と言われ承諾書にサインする羽目に。
正真正銘の※※なのに何をいまさらという気がしてしょうがない。
その文書をうつろな目で追っていくうちに「耐えられる痛み」という箇所で止まった。
元来注射が大嫌い。よって採血も怖くて仕方ない。心臓の病気の時は術後暗い中朝6時に枕元の照明を点けられ
無理やり看護婦に採血されて、起こされるのが日課だったが、全然慣れなかった。
おそるおそる医師であるMさんに聞いてみると、普通は麻酔をするから、大丈夫だよと
おっしゃるが、普通でも怖くてしょうがないのだ。
承諾書にある「耐えられる痛み」がその日まで頭のなかでぐるぐる回っている。
とうとうその日がやってきた。9月14日。
若い医師が側にきて85番に一緒に行きましょうと言う。
なんで一緒についてくるのか。85番ならひとりで行けますと思うが言えない。
着くと「今日は4人検査があるので、時間がかかるかもしれません」
と思うまもなく「偽小倉日記さん」のご指名。
女性の検査技師か医者がエコーでグリグリやる。
着いてきた若い医者がそれをみている。相変わらずエコーは気持ち悪い。
あらかた作業が終わったのだが、恐怖の麻酔がない。
麻酔がないのはいいんだが、麻酔がなければより痛いじゃないかあ。頭の中で錯綜する。
どうなってるんだ。やるならやるやらないならやらないと言えよ。
とそこにさっき別室でちらと見た年配の医者登場。泣き言は言いにくい雰囲気。
では、ちょっとチカッとしますが。ホントかよ。耐えられる痛みなんだろうな。
2本取りますからね。聞いてないよ!なんで2本なの。
声にならない悲鳴を飲み込んだ。
やがて1本目が。チカッとするじゃないか。これからどんどん痛くなるぞと
思っていたら
「はい、抜きます」
ほんと嬉しかった。
これなら2本目もどんどんやってほしい。
5分くらいで終わった。
「はい、終わりました」
「耐えられる痛みに怯えて、怖くてしようがありませんでした」
と僕。
「いや、あれを書いたのは僕なんですが、神経のあるところは痛かったりするものですから」
と先生。
呆れたような顔で僕をみて医者がそう言った。
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