偽小倉日記

ひとは知らないものを深く愛することはできる、しかし愛さないものを深く知ることはできない

よせばいいのにこのひとの日記

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なんだこのざまは

みなさま。お元気ですか。
僕はまだ生きています。生きてサイボーグと化しております。
薬剤性肺炎に罹り、ステロイドで生涯最高体調を感じつつ生きております。
食欲旺盛、ムーンフェイス、かつ睡眠時間2時間という、よく思案すればあの
覚せい剤もかくやと
思われる症状を呈しているのです。
というわけですでに60日を過ぎて病院に隔離され、ほとんど幽閉されていたのですが
この数日人気のないところならという条件で時間制限はありますが
外出が許されました。
つまり肺炎治療が先でガンはあとっていうことなんだが、これでいいのでしょうか。
つくづく僕の身体の出来の悪さを骨身に沁みて感じざるを得ません。

どこかで抗癌剤を始めないと死んでしまうのですが、肺炎をそのままにはできないし
医者も迷っている様子です。

また帰ることがあればお会いしましょう。
みなさまお元気で。

なにこれ

全国6名の読者の皆様。お元気ですか。
僕はまだ生きています。

3回目の抗癌剤治療もそろそろおわりです。
骨髄抑制による白血球もようやく正常値に戻ってきました。
1回目は現状維持、2回目はガン細胞の増大、1月4日の骨シンチでは骨への
転移という災厄のスパイラルで、また絶望的になっていました。

ところが3回目の抗癌剤がなぜか効果があった模様で、みせてもらってレントゲン写真には、球形の真っ白なガンが縦長のたまごがたに変化し、真っ白がやや薄い雲の色に
変わっていました。「効果があったみたいですよ」という先生の言葉をにわかに信じられない気分でしたが、なにかこころのどこかにぽっとあかりが灯ったような感じで
目が潤んでしまいました。
入院して3ヶ月苦しい思いばかりで、途方に暮れていたので、初めて「よくなった」と
聞き、きつねにつままれた気分です。

さらに整形外科の先生に骨の転移を調べてもらったところ、レントゲン写真だけでは
はっきりした転移は認められない。したがって、いますぐ放射線治療の必要はない
という診察結果でした。

2月から標準コースの最終4回目が始まります。
これで終わるなんて考えてはいませんが、はじめて効果があったので
もうすこしよくなればいいという気分になっています。

励ましてくだすった皆様に深くお礼申し上げます。

スケルトン

外出許可をもらって、職場を手伝ってついでに帰宅しました。
一昨日3回目の抗癌剤治療が始まりました。
今回はいまのところ目だった副作用もなく、普通はだいたい4,5日目からでるのですが、今のところはしゃっくりが出たぐらいで体調はとてもいいのです。
最初の入院からずっと100円ショップの便所スリッパを3ヶ月近く履いていました。
新年からサンダルに変えたのが
よかったみたい。摺り足から膝を上げて歩けるようになって、身体も軽くなったようです。
しかしながら病状は相当深刻で、骨転移が数箇所検査で発見され、さすがに
告知された日は、眠れずに、みっともなくも久しぶりに涙が出ました。

満身ガンだらけといった具合です。

でも絶望的な状況でギヴアップといったわけではありません。
ある看護婦が言ったように「どうせ延命なんだから」
確かに治癒は難しいかもしれませんが、見方を変えればあらゆる医療行為は
延命治療に他ならない。
病状が悪くなればなるほど、あがいて、動物本能が働くのかもしれませんが
そう簡単に死んでたまるかという気が強くなってきたのも真実です。

医師の見せてくれた画面に僕の見事な骸骨写真が2葉ならんでいました。
線で描かれたような実に整然とした生体骸骨。
その数箇所が黒く塗られて、在り処を明示していました。
恐怖と同時にその図像の見事さに感動したのも事実です。

読みついできた、といっても高熱で数週間は読めなかったのですが、大西巨人の
『神聖喜劇』がようやく第5巻目にたどりつきました。
決して読みやすくはないのですが、長編を読む楽しみを存分に味わっています。

また書ける機会があればよいと願っています。

骨の検査

昨年の8月左指先がほんのすこしだけ痺れてきた。
気にもしてなかった。それは日を追ってひどくなることもなかったが、依然として
続いていた。
思えばあれが自覚症状の最初だった。ガンの。
12月の第三週に放射線治療を始めた。脳腫瘍に放射線を当てるのだ。
3日間の治療のあと医師は全治までには3ヶ月かかることもありますと言った。
ところが正月の2日に小指の先の痺れを感じなくなった。
そして今日までにすべての指先の痺れがなくなった。

今日また入院。
正月休みに『ガン漂流』を読んでショックを受けた。
ガンと向き合う勇気がまだない。
全然よくなる方向じゃないのに、なんとなくまだ最悪の事態じゃないと思いたいのだ。
昨日の外来検査も相当深刻な事態なのに、たいした検査じゃないよと友人にも告げている。

2回目の副作用がひどかったので、今回も怖い。

大放屁論完結編

その日訪ねてきたのは植村と沼田だった。
夏休み中の日曜の午後3時。飯を食うにはやや早い時刻だが。
「カンシ」「キテ」「ギシ」なんのことやら分からない単語ですが、いろんな場面で
植村が発した新語です。読書会をやって確かアヘン戦争が話題になったときカンシが
悪かったと何度も彼が言うので、「なんだいそりゃ」と尋ねると「役人だよ」「?」
そのころMを先生に将棋の手ほどきを受けていたころ、ある一手を見て「キテだなあ」
なんだキテって、と聞くとあれは鬼手おにてっていうのかい、それをいうならキシュ。
彼なら棋士をギシと読んでもおかしくない。
彼が連れてきたのが同僚の沼田。福助に縁なしめがねをかけさせた顔。
この3人でホットプレート購入記念大焼肉大会を開催することになったのだ。

しかしこの食事会には別の隠された目的があった。
それはお隣にかかわっていた。東隣りも新婚だった。
越してきて、数ヶ月して、そのSさんの奥さんがものすごい美人だというのを知った。
美人というなら、別にOというそれこそ完璧な美女が友達にいたが、彼女は「わたしは
美人よ」というビームを常に発していて、ものすごく疲れる。本人も同様に自意識過剰気味だった。
背も高からず低からず、160ぐらいで、年齢は25歳ぐらい。色白でどちらかというとふくよか。と言ってデブではまったくない。
しかも時折琴の音が聞こえてくる。手練れの技である。
ふだんは薄化粧でショートパンツ姿で闊歩。
ある日煙草を買いに近くの店に行きかけると、前からカップルが。日傘をくるくる回しながら仲よさそうにやってくる。すれ違いざまニッコリ笑って彼女が会釈した。いやとても
ビックリ。こんな美人に知り合いはないはず。振り返るとアパートに向かっている。
Sさんかと気づいたのは1分後。まともに化粧すればとんでもない美人。

それでも実のところ、女はこりごりだというのが、僕の当時のおもいだった。
10年くらいはいらんなとも思っていた。すべてを学んだといのが実感だった。
遠くから眺めてなんときれいなんだろうと思っていればいい。手を伸べて折ろうとすれば
とげで血だらけになる。

なんどか遊びにきていたから植村も沼田も彼女のことは知っていた。

土曜と日曜の夕刻といってもまだ明るいうちに、恒例のようにS宅からは大音量の
ワーグナーが流れてきた。僕はアレが大嫌いだったので、うるさいなとだけ感じていた。
ところが音楽が始まるとしばらくして、「ギシ、ミシ」と変な音がする。それから
なんとも形容のしがたい女の悩ましい声が混じる。
ヒトラーはナチス国威発揚のためにワーグナーを巧みに利用したが、隣家では音隠しに
ワーグナーを重宝していたのだ。
土曜の午後職場から帰ると、ワーグナーが鳴り響いている。
ああ、今日も愛を確認しあっているんだなと珍しくもなくなっていた。

下品な話だが、二人がやってきたのは、食事よりそちらに期待していたのだ。
ところが4時になっても隣家の饗宴はその日は始まらなかった。
誘った僕もなんとなく申し訳ない気分だった。

「じゃ、片づけましょうか」とふたりは共同で後片付けを始めた。
すでに外は暗くなっていた。
三人は灰皿を囲んで、煙草を吸った。

「ごちそうになりました」
若い沼田はそう言うといきなり伸び上がって、蛍光灯を消した。
なにやってるんだと思うまもなく、一条の青い美しい火が5センチほど横に伸びた。
パンツを脱いだ尻丸出しの沼田がいた。
思わず僕らは拍手した。本当に美しい青い光だった。

「俺もやるぅ!」植村が言ったとき悪い予感がした。尻馬に乗りたがる男だ。
真っ暗ななかで、彼がパンツを脱ぐ音がした。
さきほどは無音だったが、かなり下品な音がしたかと思うと、ボッとオレンジ色の
不完全燃焼の美しからざる炎があがったそのとき
「アッチチチ」という植村の悲鳴が聞こえ、毛の焼ける変なにおいがした。

僕と沼田は首にかけたタオルで消火につとめた。

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