ヴィシュヌ神話

インド神話を題材にした小説です。

ヴィシュヌ神話10

 二王子は、青い焔につつまれ、
 床を転げ回って絶叫した。

 焔の熱気が高すぎて近づくこともできず、
 家来たちは長槍の柄で王子たちの身体を転がし、
 シータ王女のいる寝室から廊下に移すと、焔は消えた。

 失神した二王子を医師たちが抱え上げたが、
 王子たちに火傷は見られず、王子たちの衣類にも燃えた形跡はなかった。

 
「シータ王女は目覚めませんでした」

 と、ラクシュマナ王子は寝台のラーマ王子に言った。

「やはり無理だったか」

 ラーマは寝台に上体をおこし、ラクシュマナと対面している。
 ラーマの話しぶり、動きからは、衰弱した様子はうかがえない。
 シータ王女の寝室でおおさわぎが行われているあいだに、すっかり回復してしまったように、ラクシュマナには見えた。

「口と膣と肛門に三人の王子たちの男根を挿入するような方法が、ヴィシュヌ神の神託とは思えません」

「シータ王女はわたしの妻だ。目覚めさせるには、わたしがまぐわえばいいのだ」

「なぜ、あんな方法を教えたのです」

「わたしは、こんな身体だよ」

 ラーマは男とも女ともつかぬ美しい顔で、ラクシュマナを正面から見据えた。
 それから、遠くを見つめて、

「しかし、余の者には、王女に触れることもできぬのだね。仕方がない」

 と、言った。


 翌朝、ラーマは姿を消した。シータ王女もいなくなった。
 ジャナカ王は激昂し、すぐに追っ手の軍隊を出した。
 城内は騒然となった。
 ラクシュマナも逮捕されそうになるのをくぐりぬけて、ラーマのあとを追った。

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ヴィシュヌ神話9

 三人の王子たちは香草の湯で体を洗い、香油を塗って、王女の寝室に入った。

 王女は寝台に横たわり、刺繍がほどこされたシーツにくるまれていた。
 シーツの下は全裸であろうと思われた。

 寝台の四隅には宮廷医師が立っていた。
 寝台の枕辺には、二脚の椅子が置かれ、ジャナカ王夫妻が青ざめた顔をして座っていた。

 ラクシュマナ王子は、三人の中でもっとも男根が細く短いので、シータ王女の肛門に挿入する役目を担っていた。
 残りの一人は口、もう一人は膣に男根を挿入し、三人が同時に射精することでシータ王女は仮死から目覚めるという。

 その方法は、緑色に光るアリが梵字になって示したもので、皆がヴィシュヌ神の神託として信じているものだったが、ラクシュマナには腑に落ちないものがあった。

 あまりに邪淫すぎないか? 

 魔王ラーヴァナの魔術なのだから、このような解き方もやむをえないのか。
 それに、兄・ラーマは、何も語ろうとしない。

 なぜだ?

 そのように考えこんだために、ラクシュマナは他の王子たちの動きに遅れ、医師たちから注意を受けた。
 三人の王子たちは絹の衣を脱ぎ、全裸になった。

 寝台の上のシーツも取り除けられ、全裸のシータ王女が目の前に眠っていた。
 肌の色は生きているとは思えない青白さだった。
 だが、張りや艶はあり、奇跡的なほど形のいい乳房に小さな乳首がピンと立っていたし、うすく開いた脚の間から湿り気をおびている陰部がのぞき見えた。

 三人の王子たちは一斉に勃起した。

 だが、これでいいのか?

 ラクシュマナの心に一筋の冷静な考えが浮かんだ。

「待て、待ってくれ」

 ラクシュマナは叫んだ。
 だが、ほかの二王子はとまらなかった。
 二王子がシータの身体に触れようとした瞬間、青白い炎が二王子の全身を包み、王子たちは悲鳴をあげて床を転がった。

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ヴィシュヌ神話8

 シータ王女が城門の土中に埋まっているということは死んでいるということを意味していた。
 ジャナカ王夫妻は卒倒しかけたが、とにかく掘り出すことを命じた。

 しかし、どれほど深く掘ってもシータ姫は出てこず、日没になった。
 翌日も早朝から穴掘りは行われたが、何も手がかりは得られなかった。

 このころになって、ようやくラーマは意識を取り戻したが、まだ寝台から起き上がることもできなかった。
 王夫妻はラーマ王子の寝室を訪ねて苦情を言った。

「本当にシータ姫は見つかるのか」

 ラーマは瞳だけを動かして王夫妻を見たが、何も言葉は発さず、光る文字も出現しなかった。
 王夫妻は憔悴して部屋を出た。

 三日目も穴掘りは行われたが、成果なく日が暮れかかった。
 突然、人夫の一人が叫び声をあげた。
 美しい布が土の中から出てきたと言った。

 それはシータ王女のまとう衣の一部だった。
 王夫妻までもが穴掘りに加わった。
 はたして、シータ王女は土中から掘り出された。

 湯が沸かされ、土まみれの肢体が清められた。
 皮膚は青ざめていて、呼吸も鼓動もなかった。
 医師たちが診断したところ、死んではおらず、仮死であると述べた。

 ジャナカ王夫妻は歓喜したが、医師たちは蘇生させる方法を知らなかった。
 王夫妻はラーマの寝室を訪ねた。
 この時、ラーマは寝台の上に上体を起こせるまでに体力が戻っていた。

 王夫妻はラーマに教えを乞うた。
 ラーマは、この世ならぬほど美しい顔を、苦悶にゆがめているように見えた。
 何も語らなかった。
 だが、緑色に光るアリが、黒大理石の床に文字となって並んだ。

「シータ姫の陰部、肛門、口に男根を挿入して同時に射精すれば目覚める」

 王夫妻は嘔吐しそうなほど不快になったが逆らうことはできず、集まっている三百人の王子たちから三人を選抜することにした。
 なるべくシータ王女を傷つけぬよう、男根が細くて短い王子たちを選ぶことになった。
 三人のうちの一人はラーマの弟・ラクシュマナ王子に決まった。

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ヴィシュヌ神話7

 ラーマ王子は戸板に乗せられてジャナカ城に運ばれた。

 つい先刻まで、ラーマを追討する軍に参加していた王子たちは、魔王ラーヴァナに従ったことを悔い、ヴィシュヌ神を讃える歌をうたって歩いた。

 城に到着すると、ジャナカ王夫婦も駆け寄ってきた。
 王夫妻も、ラーヴァナが有名な悪魔の名だということに思いいたっていて、おそろしさに身をふるわせていた。
 ラーヴァナと接しているときには、誰も気がつかなかった。
 黒魔術がほどこされていたのだろう。

 城の一室が与えられ、天蓋の付いたベッドにラーマは寝かされた。
 弟のラクシュマナ王子が看護をかって出た。
 彼には医術の心得があった。

 家臣たちや女官たちが、昏睡しているこの世ならぬ美しい青年を一目見ようと集まってきたが、病状に良くないという理由でラクシュマナは誰もラーマに近づけなかった。
 もっともジャナカ城では、消えたシータ王女の捜索に忙殺されていたので、それどころではなかった。

 ラーマは日没になると発熱し、真夜中に熱がひくことを繰り返した。
 ラクシュマナは毎夜、深更にラーマの衣を脱がし、汗をぬぐった。
 ラーマの肢体は張りのある筋肉におおわれ、きめ細かい皮膚にはひとつの傷あともなかった。
 武勇を誇るラーマ王子は怪我を重ねたはずだが、生まれたばかりのような皮膚だった。
 そして、失われた男根のあとには……そこにも何もなかった。
 股間には陰毛もなく、ラクシュマナが相当の興味を持って調べても、肛門が穴をあけているほかには、まったく何もなかった。
 ラクシュマナは、この美しい、奇怪な、異母兄の裸体を見て、毎夜、勃起していた。

 数日が経ったが、ラーマはまだ昏睡から目覚めなかった。
 ラクシュマナは室内の床に緑色の大きなアリが何匹も入りこんでいるのに気づき、踏みつぶそうとした。
 そのとき、ラーマはベッドでうめき声をあげたのである。
 それは、ラクシュマナがアリを踏み潰そうとするのを制止したように思えた。
 あわてて、ラクシュマナはラーマに駆け寄ったが、意識は戻っていなかった。

 だが、床の、緑色のアリがぼうっと光り、梵字になり、王夫妻を呼べと並んだ。
 ラクシュマナは驚いてジャナカ王夫妻を呼んだ。
 黒大理石の床に浮かぶ緑色の梵字を見て、王夫妻は卒倒した。

「シータ王女は城門の土中に埋まっている」

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