長いこと書いていないこのシリーズを久しぶりに書いてみようと思う。まずたぬき画伯による「岩魚坊主」のイラストを褒めていただきたい。みずきしげる先生のイラストをアレンジしてみました。絵心の皆無、小学校の成績で図画工作、3を超えた事のない私が頑張ったのです。
| この妖怪「岩魚坊主」が現れたといわれているのは今の岐阜県、当時は美濃の国と呼ばれた時代だった。ご存知美濃の国には海がない。海がない代わりに川の幸、そして山の幸が豊富だと私の友人が自慢している。特に長良川の天然鮎を食したときには正直「うまし!!!と」叫んでしまったような記憶がある。 |
| そこでむかーしむかーし、とある場所で伝統的に行われていた川の漁法、山椒の皮からとった出汁を川に流すと魚が浮き上がってくる・・・と言う方法で魚を取ろうとしている若者の一団がおったそうな。名づけて |
毒もみ漁法
という。
| 彼らはこの漁で取った魚を夕飯にしようとしていたため、人里離れた山の奥にある渕の側で昼飯を食っていたときの事、いつもまにやら川の向こうからお坊さんがやってきているのに気がついた。こんな山の奥に人がやってくるのも珍しい、しかもお坊さんが一人でこんなところにやってくるのはなおさら珍しいとは思ったが、若者たちはお坊さんに声をかける。 |
お坊さんは傍らに座り、世間話をし始める。そして彼らの漁具を見ながらこう話始める。
| 「毒もみを使って漁をなさるか。それは止めたほうがいい。あなた方の欲しい魚以外の魚もたくさん死んでしまう。そんな無益な殺生はやめなされ。是非やめなされ。」 |
あまりにも坊主は熱心に若者たちを引き止める。
| あまりの執拗な引き止めに若者たちは根負けし、もうさっさとどこかに行ってほしい一心で適当に坊主の説教をあしらう事にした。 |
| 「坊さんの言うことも最もじゃのう。わかった。わかったよ。考えてみるよ。わかったわかった。」 |
そういってこのくどい説教から逃れようとしたが、坊主は一向に帰る様子がない。ますます熱っぽく訴え続ける。
| 「やめなされ、やめなされ、魚を無益に殺すのはやめなされ。無益な殺生はやめなされ」 |
| もういい加減に飽き飽きした若者たちは坊主の言う事を聞くとして、目の前にある昼食を坊主に勧めるのであった。すると坊主は目の前に並べられたご飯、団子や汁を全て美味しそうに平らげると大変喜んだ。 |
| 坊主はいずことはしらず去っていく。その後姿を眺めながら若者たちは口々に話し合う。毒もみ漁法をやるか否か。そうはいっても毒もみ以外の準備はしていない。漁をしなければ夕飯がないのである。家で待っている家族たちの夕飯がないのは辛いことなのだ。 |
若者の一人は言う
| 「こんな山奥に坊さんが一人でやってくるなんておかしいのう。たぶん川の神様が坊主の姿をして現れたのじゃぁ。この漁は辞めたほうがいいんじゃないかのう」 |
それを聞いた若者は言う
| 「臆病者め!そんなこといってたらお飯食べれないじゃろ!」 |
| いい年こいた若者が臆病者!と罵られていい気になるわけがない。何をこの!怯えてなんかいないぞ!でも、でもなぁ!と口論になってしまうのは今も昔もかわりはない。若者の間でも意見が真っ二つに分かれてしまう。若者の半分は坊主の言うとおりに漁は辞めたほうがいいということで山を降りていった。 |
しかし
今の若者の大半がそうであるように迷信や怪談など話のネタにしかならないと思っている半分の若者は坊主の忠告を無視して「毒もみ漁法」を実行に移してしまうのであった。
| 彼らは望みどおりたくさんの魚を得ることができた。うっほうっほと喜びの叫びを上げつつ、若者たちは浮かび上がってくる魚をびくに納めているときのこと、渕の向こうのほうでなにやら大きな魚が浮かんでいる。 |
それは巨大な岩魚であった。
| ヒャッハーと叫びながら若者たちは岩魚を持ち上げて山を下っていった。さっそく若者たちは獲物をそれぞれに均等に分配していった。そして先ほど捕まえた2mの岩魚をさばくことにしたのであった。さすがにこれは分けないといけないだろうと。 |
この巨大な岩魚をさばく為に白い腹を割いたところ出てきたのは・・・
| 先ほど自分たちが坊主に振舞ったはずの昼食の団子、ご飯、そしておかずなどが消化されないまま出てきたのであった。 |
ということは・・・あの坊主は・・・
さすがに恐ろしくなった若者たちはこの岩魚を食べることはできなかったという。以後若者たちは毒もみで漁をすることを止めたという。
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