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lale

ひっそりFc2へ。こちらはしばらくこのまま放置し、いずれ削除させていただきます。

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le mine, la mienne 第2話


(なるほどー、これが噂のイケメンか。)


待ち合わせ場所に現れたのは、そびえる高さでにっこり微笑む二人の男。
かたや、切れ長の瞳に艶やかな色香を纏わせ、さらりとかき上げた黒髪の隙間から華麗にウインクを決める漆黒の美丈夫。
かたや、星の如く煌めく瞳をやさしく眇め、蕩けるほど
甘い魅惑の微笑みを常に絶やさない鳶色の髪の優男。

(同じ場所に座れるだけで世の女性は大金をはたいても良いって言われるのも、まあわからないでもないけれど……。)

ただ美形なだけでなく余裕と自信に満ち溢れた二人が放つのは、ごくごく平凡な生まれのつくしとは天と地ほどもかけ離れたセレブのオーラ。
それがあまりにもきらびやかすぎて、自分の現実からかけ離れているというか。
まるでテレビの中のタレントを見ているような気にさせられて、正直まったく心が動かない。
むしろいかにも女慣れしていそうな彼らの微笑み・仕草・態度のほうが気になり、何だかすべてがひどく胡散臭くさえ見えてきて……。

(この場所を誰かに譲って大金もらうほうがよっぽどいいかも。)

なんて思ってしまう。
もっともそんな風に感じたのはつくしだけだったらしい。


「やだっ、どうしよう。ホントかっこいい!」
「やばすぎですよねっ。あー、今日来られてよかった。センパイありがとうございますっ!」


渚も、それから幹事の理衣子先輩も。
頬を紅潮させ、瞳をハート形にして。
その場でスキップでもはじめそうな勢いでキャッキャウフフと手に手を取ってはしゃいでいる。


「俺は西門総二郎、よろしくね。高林女子大は綺麗な子が多いって聞いてたけどホントだな。」
「やあ、美作あきらです。今日は来てくれてありがとう。3人とも可愛くてラッキーだよ。」

そんな風に言われて一層顔を赤くし、はにかむ二人はいかにも女の子らしくて。
そのセリフに一応自分も含まれているとは露ほども思わず、(うんうん、二人とも本当に可愛いもの!)とつくしもこくこく頷いた。

実際、ふわりと揺れる巻髪にピンク系の愛らしいメイク、この日のために吟味してきたのだろう女性らしさをぐんと引き立たせるキュートなワンピースを着た二人は圧倒的に可愛らしかった。


一方、つくしはといえば………。

ほぼすっぴんに地味な紺のスーツ姿。
まあ、それは本来家庭教師のバイトの予定だったからと思えば仕方のないことだけど。
さすがにそれじゃあと渚がメイク道具を貸してくれたにもかかわらず、
(ま、どうせ刺身のツマみたいなもんだし。)
いーよいーよと、ぱたぱた粉をはたいただけで済ませるやる気のなさ。


「もうっ、つくしったら!出会いのチャンスは万全の態勢で掴み取らなきゃダメなんだよ。メイクくらいちゃんとしなさいっ。大体、こんな凄い合コン2度と巡り合えないよ。今日は女なら全力でいかなきゃいけない日!」

渚と公英にダブルで叱られて、ようやく申し訳程度にリップを2往復させたのが限界という始末だった。

素材は悪くないのにもったいないと嘆かれても、「またまたぁー冗談ばっかりー」ととりあわない。

(合コンなんかにほいほい来るオトコに興味はないし、全力を出すならやっぱり食べ放題飲み放題のほうよね!さぁ〜て、ガッツリ飲んで食べてしっかり元をとるわよっ!)

……とそこまで考えて。
あ、今日は支払う“元”もないんだったと嬉しい事実に気が付き、思わず顔がにやけたその瞬間―――。


「おい、類。お前も挨拶くらいしろよ。」

聞こえてきた声にハッと我に返った。
見れば、大きな二人の影からけだるげに現れたこれまた大きなもう一つの影。

「……………。」

その"影"は言葉も出さずに頭を軽く動かして、すぐにぷいとよそを向く。

(え?それが挨拶?何、この人。)
その態度ちょっと、いやかなり失礼じゃない?と思いつつ目を凝らせば、
!!!
そのまま目が釘付けになった。

ふわりと靡く茶髪に、つい見惚れてしまうほど整った顔立ち。
色素の薄い瞳はビー玉のように神秘的に澄んだ色をしていて。
もし目が合えば、そのまま心まで吸い込まれてしまいそうだった。
最初の二人も美形の枠を遥かに超えていたけれど、どちらもある意味人間味を感じられた。
けれどその人は、ヒトというより美しい人形か絵のようで。
そう―――
まるでつくしが幼い頃絵本でみて憧れた王子様そのものだった。


「おい、名前ぐらい言えって。ったく。」
「ごめんね。コイツは花沢類。愛想のないヤツだけど、気にしないで。」

けれど“王子様”は、他の二人がどんなにどついてもつついてもどこ吹く風でつまらなそうにそっぽを向いたまま。
ひとことだってしゃべらない。

(い、いくらなんでも、初対面の人間にその態度って。愛想がないにもほどがある気がするんですけど…………人としてどうなの、それって。)

心の中でつい文句を重ねてみたけれど。
当の相手に一瞬ドキッと心を奪われてしまったのは、まぎれもない事実。
しかも大きく跳ねた心臓はまだおさまりきっていない。
そんな自分になんだか悔しさを感じて、つくしはつぅっとあらぬ方向へ視線をそらした。


*


そうして合コンがスタートして早2時間。
気が付けば、つくし以外の二人はすっかりいい雰囲気になっていた。
まあ、つくしも決して無下に扱われていたわけではないのだけれど……。

「えっと、つくしちゃんだっけ?君は何を専攻して……「あ、あたしのことはどうぞお気になさらず。」」
にっこり笑顔で話しかけるあきらにはにべもなく返し、
「つくしって可愛い名前だよね。君にぴったり。やっぱり春生まれだったり……「お世辞とか別にいいんで。ちなみに春じゃありません。」」

総二郎の甘い囁きもばっさり切り落とす。
そんな調子ではぽつんと一人取り残されても仕方ない。

もっともそれはつくしの望むところ。
ありがたいことに席は端っこの目立たない場所だし、自分同様余っているもう一人は、合コン開始直後からずっとソファーの隅で熟睡している様子。
(これでようやく遠慮なくがっつける!)
にはっと笑って内心ガッツポーズを決め、つくしはずらりと並ぶ料理に目を向けた。


もうっ、せっかくこんなに美味しそうなものが並んでいるのに、みんなちっとも手を出さないなんて信じられない。
もったいないにもほどがあるわよっ!
だってそうでしょ。
合コン、しかも全部おごりなんていうからてっきりそこいらの居酒屋かと思ったら、まさかまさかのめちゃくちゃちゃんとしたレストラン。
しかも個室で、次から次へと目にも鮮やかな料理が運ばれてくるんだもの。
どの料理も信じられないくらい美味しそうで、さっきからおなかの虫が止まらない。

生ハムとルッコラのサラダも。
鴨の燻製やサラミの盛り合わせも。
フォアグラのソテーなんて、信じられないものまで並んでる。
それにあそこに鎮座しているパスタ!
この店イチオシの生ウニのクリームパスタですって。
ウニ!あの金色に輝く塊はまさしく正真正銘本物のウニ!
それがとろ〜りまろやか〜にあたしを誘ってるのよ。
乗らないテはないわよね。
だいたいみんな、話に夢中で食べる気ゼロみたいだし。
ココはやっぱり私が………。


延々と続く心の中の呟きがまさか声に出ているとは気づかぬまま、周囲を見回し誰も自分のことを気にしていないことを確かめる。
サラダを食べて、鴨を食べて、フォアグラだってしっかり頬張って、そしてようやく本丸へ。
よしとばかりにお皿をぐいっと引き寄せると………。
金色に輝くパスタをフォークにくるくる巻き付けて、大口開けてパクっと一口。
途端に訪れる至福の時。

(うわあああ、美味しいぃーーー!!!!なにこれ最高!それに生ウニがこんなにゴロゴロ入ってるなんて贅沢すぎるー!!)

甘くて濃厚な生ウニがまろやかなクリームソースと絶妙な相性で絡まって、口の中に入れた瞬間ふわりと旨みが広がっていく。
ほんのり混じるトマトの酸味が、複雑に絡み合ったコクと旨みを一層鮮やかに引き立てて。

(もう、たまらないっ!)

そもそもウニなんてめったに食べられない高級品、口にできるだけで御の字だというのに。
こんなにたっぷり食べられるなんて、夢じゃないよね?
念のためぎゅっと頬をつねってみる。

(いたたっ!うん、大丈夫。夢じゃない。)


サラダも鴨もフォアグラのソテーも、どれもぜーんぶ美味しいけれど、これ最強っ!
やめられない止まらないとばかりに、つくしはパスタを次から次へと口に運んだ。

(まろやか〜。なめらか〜。コクがあって、でもしつこくなくて。あ〜いくらでも食べられちゃうっ!)

 

幸せいっぱい胸いっぱい、でもおなかはまだまだ空きがある。
しかも目の前には手の付けられていないパスタがもう一皿。
料理のことも私のことも誰も気にしてなんかいないことだし、せっかくだからそちらのひと皿も…と手が伸びた、そのとき。

「そんなに美味しい?」

聞こえてきた声に手が止まった。



***




(うっわ、すごい顔。)



総二郎の達者な口説きとあきらの甘い囁き。

うんざりするほど聞き慣れたソレとは別に、どこからともなくブツブツと聞こえてくる呟き声。
それが妙に気になってゆっくり目を開けると、いきなり映ったのは大口を開けてパスタを食べようとする見知らぬ顔だった。

類の身近にこんなに勢いよく、しかもこれほど美味しそうにモノを食べる人間などいない。
食事の時に相手が見せるのは、如才ない顔、気取った顔、ご機嫌伺いの顔、つまらない顔。
にっこり優しげな顔をしていても、ほんの少量を品よく口に運びながら枕詞のように「美味しい」と呟く人間ばかり。
だからだろうか。

気づいたらその一心不乱な姿に目を奪われていた。

もっとも相手は類が見つめていることなどまったく気づいておらず、ただただ目の前のパスタに夢中になっている。
かぷりと食べてにっこり笑い、こくんと飲み込んで幸せそうに宙を仰ぐ。
目を細めて頬に手をあてうっとりしたかと思えば、キラキラと瞳を輝かせ次のひとくちに向かう。
フォークにパスタを絡ませる真剣な眼差し。
そのうえいきなり頬をつねって頷いたときは噴きだしそうになった。

(くくくっ、たかがパスタ食べるのに凄い全力。)

いつの間にかすっかり目は醒めていた。
本当は、総二郎とあきらがターゲットを決めたら自分はさっさと帰ろうと思っていたけれど……。

(総二郎も、少しは楽しめって言ってたしね。)


なんだかおもしろいおもちゃを見つけたような気分になって。
ふっと口元を緩ませると、類はゆっくり身体を起こした。




***




いきなり聞こえてきた声に、恐る恐る顔を上げたつくしの目の前にキラリと輝くビー玉の瞳。
「ひひゃぃっ!」
驚いて一気に息を吸い込んだせいでパスタを喉に詰まらせそうになる。
んがんぐっ
目を白黒させながら慌てて水を飲み込み、ようやくふぅーっと生き返った。
そんなつくしの一部始終を、ひと回り大きく広がったビー玉の瞳が瞬きもせず眺める。
かと思うと、すぐにクスクスと笑い声が聞こえてきて。

「ヘンな声。コントみたい」

「コントって……あなたがいきなり声をかけるからでしょ。だいたい人が食べるのをこっそり観察した末に笑い出すとか、ちょっと失礼すぎやしませんか?」
「あれ?怒ってる?」

「そりゃ怒りもするわよ。」
「へえ。大口開けて遠慮なしにぱくついてたから、それくらい気にしないかと思った。」

「はあ????」

「いいから食べれば?あ、それとも新しいの頼む?ソレもう冷めちゃってるでしょ。」

頬杖をつきながら、ソッチは下げてもらえばいいよと気軽に言ってくる。

「いいえ、結構。これがあるのに新しいものをまた頼むなんて、そんなもったいないことできません。」
「そう?何も冷めたのを食べなくてもいいのに。ああ、そうだ。足りなきゃ3個でも4個でも好きなだけどうぞ。あんたならいくらでも食べられそうだよね。」
「し、失礼なっ!」

いうことなすこと失礼なだけじゃなく、いくら金持ちだからって食をないがしろにする罰当たりが許せない。
それにこの人、挨拶だってまともにできなかったもの。

王子様然としているけど、とんでもないろくでなしに決まってるわ。

つくしがじわじわと怒りを覚えていると、

「あ、クリームついてる。」
不意に伸びてきた指先が口もとに触れた。


ぎゃあっ!
小さく上げた悲鳴を聞いて、またくすくす笑い出されて。
「か、か、か、からかったんですね。ほんと失礼ですっ!」
むっとして返せば

「クリームがついてたのは本当。ほら。」
見なよ、と言って指先を差し出してくる。
そのノリに押されてつい確認しようと身を乗り出したら、今度は突然鼻をつままれ、つくしは目を丸くした。

「ぷぷぷっ、やっぱり面白い顔。」

やっぱりって何よ、ソレ!
だいたい女の子に面白い顔とか失礼すぎるでしょっ。
こっそりのぞき見するは、ウソはつくは、食べ物を粗末にしようとするは、ほんと最悪!

「ください、お代わり。」
憤慨ついでにそう言って早くも空になったパスタ皿を突き出すと、つくしは隣のフォアグラにフォークをぶすっと突き刺した。


*


(あー、満腹満腹。)

結局あれから類が話しかけてくることはなく、つくしも一切目を合わずに無視を決め込んだ。
相手がどう思ったかはわからないけれど、それでもしっかりお代わりのパスタはいただいて今やつくしのおなかははちきれんばかりになっている。
正直、もう一歩も歩きたくないくらい苦しい。
「じゃ、二次会行く?」
だから、総二郎の口からその発言がでたとき速効右手を挙げた。

「あ、あたしはこれで失礼します。」
「え?でもつくし……へいき?」

渚も理衣子先輩もムリに引き留めようとしないのは、たぶんしっかり“カップル”が出来上がっているからだろう。
「平気平気。まだ電車もあるし、ここからなら近いから。」
にっこり笑って踵を返そうとしたそのとき――――。

「じゃあ俺、送る。」

応じた声に、驚いたのはつくしだけではなかった。
「「「はあ????」」」
重なった声は、つくし以外にあと二つ。

「どうしたんだ、類。」
「珍しいこともあるもんだな。」
「明日雪が降るんじゃねーか。」
心底驚いた表情で顔を合わせる総二郎とあきらに
「楽しめって言ったのはお前らだろ。」
類が何気なくそう返す。
すると二人は揃って顔を見合わせしたり顔になった。

「へー」
「ほー」
「「ふぅーん」」

「じゃあ、つくしちゃんは類にまかせた。」

「ちょ、ちょ、ちょっと勝手に決めないでくださいっ!」
慌ててつくしが叫ぶけれど、誰も話を聞いちゃいない。
助けを求めて渚を見ても、『がんばれっ』なんて口を動かし、ガッツポーズを向けてくる始末。
じゃあ先輩はといえば、その目は完全に隣に立つあきらしか見ておらず、てんで話にならない。
だから、
(しかたない、駅まで一緒にいくか)
と諦めて歩きかけた腕が、いきなりがしっと掴まれた。

「どこ行くの、あんたはこっち。」
「こっちってそっちは駅とは反対の……「こっち」」
面倒そうに遮ったかと思うと、そのままつくしの手を取り歩き出す。

「ま、待ってよ。駅はあっちでしょ?」
必死に抗議をするもののまったく取り合ってもらえない。
結局そのままずるずると引きずられるように連れていかれて……。
気づくと目の前に現れた1台の車。

(何、この車……)
類が近づくと、普通とはずいぶん長さの違うその車の運転席から、制服を着た男性がさっと走り出る。
「類さま、お帰りなさいませ。」
そう言ってお辞儀をしながらドアを開けられ、つくしは言葉を失った。



***



「乗って。」

棒立ちになって動かない身体に類がそう声をかけると、
「え?なにこれ、リムジン?うそ、やだ……」
ゼンマイを巻いたみたいに、ぶつぶつひとりごとが始まった。
それだけでもおかしくてたまらないのに。

きょとんと大きく目を見開いて。
ぱちぱちと瞬きを繰り返しながら何度も首を傾げて。
背伸びするように身を乗り出し、何度も車を確かめる。
その様子が昨日テレビで見たミーアキャットにそっくりで、また笑いがこみ上げてきた。
さっきの大口といい、男の自分でも驚くほどの食べっぷりといい、あのヘンな叫び声といい……

(くくくっ、なにこの生き物。これが女子大生?ウソだろ。)

右に左に首を振るたび跳ね上がるまっすぐな黒髪はたぶん染めたことなど一度もない…どころかパーマをかけたことすらなさそうだ。
化粧っ気もろくになく、申し訳程度に塗られた口紅はすでに半分消えかけている。

(ふつうは食事の後に化粧直しくらいするよな。)

そんなところも類の知っている“女子大生”とはずいぶん違う。
もっとも総二郎やあきらじゃあるまいし、同じ年頃の女性になんて興味のかけらももったことがないからはっきり違うと言い切る自信はないけれど。
少なくとも唯一身近だった年上の幼馴染は、化粧も服装も仕草もマナーも何もかもいつだって完璧で。
こんな風につい粗探し……いや観察したくなるような隙なんてどこにもなかった。

(ああ、だからかもしれないな。)

この面白い生き物をもうちょっと観察してみたくて。
そんなつもりは毛頭なかったのに気がついたら「送る」と言っていた。




***



(運転手さんがいるなら……大丈夫よね。)

「どうぞお嬢様」なんて聞き慣れない言葉とともに、年長の運転手からいざなわれて。
断るのも失礼な気がして、結局車に乗ってしまったけれど。
初対面の人の車に乗るなんて、何だかすごく落ち着かない。
そのうえ車が走り出しても類はつくしに対してひとこともしゃべろうとせず、ときどきふっと視線を向けてはなにやら思い出し笑いをして、また顔を背ける。

(どうせ、さっきの私の食べっぷりでも思い出しているんでしょうよ。)

大体想像がつくのが余計に腹立たしく、つくしもそっぽを向いて車に乗っていた。
といってもリムジンなんて初めての体験。
気になってつい、きょろきょろと車内を見回してしまう。


(足はどれだけ伸ばしても平気だし、各席に専用テレビはあるし、え?何これ、座席の横にシャンパングラス?)
「ほわあ〜、すごい〜。」

図らずも口をついて出た、それがまた隣の人物のツボにはまったようで、今度は声に出して笑われた。
(もう、ぜったいしゃべらないし、動かないっ。)
こうなると何かリアクションをとるたびに、イチイチ笑われるに違いない。
だから店にいるとき同様、きっちり無視を決め込んだ。


*


やがて音もなく車がスピードを落とすと、辺りには見慣れた景色が広がっていた。

「類様、着きましたが…。」
「ん。ねえ、ここで合ってる?」
「あ、はい。あの……。」
「で、もうぜんぶ消化した?」
「は?」
「いや、あんだけ食べたらさすがに動けないんじゃないかと思ったんだけど。」
結構元気で驚いた、と言いながらまたしてもクスクス。

「それはそれは心配をおかけしました。おかげさまでかなり消化したようなので、ご安心ください。」

むっとして慇懃無礼に言葉を返しはしたけれど、よくよく考えてみればわざわざ自宅の前まで送ってもらった恩がある。
車を降りかけてそのことに気づき、慌てて振り向いて頭を下げた。

「送っていただきありがとうございました。」

ガンッ!
「痛―――っ!」

下げた頭を戻した瞬間、車のドアに勢いよくぶつけた頭。
それがとどめだったらしい。


「ぶっは!あははははは!!!」
車の奥で、類がおなかを抱えて笑い出した。

(ほんっと失礼な人!)
ぶつけた頭をさすりつつ、怒りに一瞬身を震わせるけれど。
(まあ、きっと今日限り2度と会わないだろうし。忘れよ忘れよ。)

いまだ笑い転げる類に背を向け、自分にそう言い聞かせてさくっと記憶を消去する。
そうして美味しいものをおなか一杯食べられた幸せだけを思い出せば、自然と気分もよくなってくるから不思議だ。

「あの……頭は大丈夫ですか?」
「あ、大丈夫です。ご心配をおかけして申し訳ありません。今日はわざわざ送っていただき、ありがとうございました。」

心配そうに尋ねてきた運転手に“だけ”は、笑顔と共に丁寧にあいさつをして。
つくしは、鼻歌まじりにアパートへと帰ったのだった。



まさかその相手と、あんな形でこんなにすぐ再会することになるなんて………。
この時のつくしは知る由もなかった。

 
 



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    こんにちは。
    類xつくし、二人のコメディーが面白いです。
    お腹を抱えて笑う、類君が想像できます。
    二人の性格をしっかりとらえてて感激です。
    有難うございました。

    [ Mayumi Watanabe ]

    2017/2/9(木) 午後 2:40

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    > 鍵コメ「空」さま
    こんにちは〜!
    さっそく読んでいただきありがとうございました♡

    りおさまの素敵な第一話をぶちこわすような第二話で「もう穴があったら入りたい」状態だったのですが、可愛いって言ってもらえてほっとしました^^

    めっちゃ❤ドキドキな第三話もお楽しみに!です♪

    [ tar*sa_*6 ]

    2017/2/10(金) 午前 7:15

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    > Mayumi Watanabeさま
    こんにちは♪
    面白いって言っていただけて、嬉しいです(*^_^*)
    こちらこそありがとうございました!

    ここからお話は怒涛の展開へと動いていくので続きもどうぞお楽しみに★

    [ tar*sa_*6 ]

    2017/2/10(金) 午前 7:18

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    > 鍵コメ「no」さま
    こんにちは!
    うわあ、楽しみにしてくださっていたなんてむちゃくちゃ嬉しいですっ♪

    初のリレー小説、私ももうドキドキで……。
    しかもりおさまからバトンをうけとり、○○さまにバトンを届けることになってしまい、もう緊張しきり(汗
    でも爆笑していただけたと聞きほっとしました(*^_^*)
    楽しんでいただけてよかったです♪

    次はもう「うっひゃー❤」ってなるくらいドキドキもトキメキもたーっぷり。どうぞお楽しみに〜♪

    [ tar*sa_*6 ]

    2017/2/10(金) 午前 7:33

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    > 鍵コメ「nob」さま
    こんにちは♪
    コメントありがとうございます!

    今回はちょっとパラレルな類つくストーリーなので受け入れて頂けるかドキドキだったのですが、楽しんでいただけてよかったです〜(*^_^*)
    ここからどんどん動いていく二人の恋。
    まだまだ続いていきますので、どうぞお楽しみになさってくださいね♪

    [ tar*sa_*6 ]

    2017/2/10(金) 午前 7:37

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    > 鍵コメ「ゆき」さま
    はじめまして^^
    コメント&お気に入り登録いただきありがとうございました♪

    初めてのリレー参加で不安いっぱいだったのですが、コメントいただけてほっと胸をなでおろしました。
    少しパラレルな世界の類くんとつくしちゃんですがイメージ壊れてなかったでしょうか?(ドキドキ)

    かな〜りのマイペース更新サイトですが、ときどき思いついたようにお話をUPしているのでよかったらまた遊びにいらしてくださいね♪
    よろしくおねがいします<(_ _)>

    [ tar*sa_*6 ]

    2017/2/10(金) 午前 7:43

    返信する

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