たそがれ祐

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ムンク展

会期末が迫った東京都美術館で開催中のムンク展に行ってきた。年末の午後3時ころだったので、比較的楽に鑑賞できる程度の混みかただったが、それでも入場に10分ほどの行列はできていた。

代表作の一つ、「叫び」があまりにも有名なノルウェーの画家だが、実物を見たことはなかったので興味深かった。そもそも、海坊主みたいな人物が夕焼けの海の橋の上で、両手で顔を覆っているこの絵が、何で歴史的にもそんな高評価を得ているのだろうという素朴な疑問を持ち続けていたからだ。案の定、本物の前に立っても、粗雑に薄塗りで塗りたくられた絵という印象は変わらない。

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先の大戦の終戦前年に80歳で亡くなっているムンクは17歳で画家を志したというが、幼少の頃より身近な家族の不幸に数多く接してきた人だったらしい。画家を志すだけあって、最初に描かれたという19歳の精緻な自画像の絵画的完成度はさすがだと思わせる。しかしパリやドイツ、デンマークなどを放浪した、ムンクの真骨頂といえる壮年期の絵は、その間に出会った人たちの死や悲しみを主題にした絵が連作的に制作されている。どれも驚くほどに、奔放というか、粗雑というか、所謂上手い絵とは無縁というか、そんなことはこれぽっちも気にせずに、人の死や悲しみに向き合って描き続けた。放浪の終盤には精神を病み、デンマークで半年ほど入院したこともあったらしい。なにかゴッホを彷彿させるエピソードだ。ゴッホと違うのは、彼の作品を収集するパトロンに恵まれたせいで、壮年期の頃から、母国ノルウェーやドイツなどで既に画家としての名声を得ていた点は異なる。

晩年ノルウェーに戻ったムンクは立派なアトリエで製作を続け、生涯結婚することなくそこで80歳の生涯をひっそり閉じたが、その間に描かれた絵は、ヨーロッパ放浪時代の絵の鋭さにくらべ、穏やかな絵になっていったようだ。

絵画とは人生の投射なのである。一人よがりの制作物なのである。そんな絵を目指したいが、凡人は他人の評価を気にして、今日も凡々たる絵筆を運ぶのだ。

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