未婚の未亡人、泣いたり笑ったり

今は亡き同居人○Tと、未婚の未亡人の珍道中人生

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親父○Tの所で仕事を始めた息子のDは、最初の頃は遊び半分でしたが、次第に真面目に働く様になって来ました。

他に従業員もいましたから、親父としては、息子をひいきしてしまいたい反面、従業員の手前そうも行かず、かえって息子には厳しくしていました。
その事は、多分D本人もわかっていたとは思いますが、少しずつ力をつけて、先輩従業員に追いつき、追い越そうか、と言った辺りで、Dの不満が爆発します。
それとともに、他の仕事もやってみたい衝動にも駆られました。

ある日、○Tがやけにしょんぼりして帰って来ました。
「Dが辞めたいって言い出した。」
「なんで? 辞めてどうするって?」と私が聞くと、Dは親しくしていた親父の友人のバイク屋を一緒にやりたいと言ったそうです。
前からバイクが大好きで、そこには頻繁に顔を出しては、一緒にバイクをいじっていたのは知っていますが、まさかそこまで思っていたなんて、とても考えられませんでした。

「それって現実的じゃないじゃ〜ん、あそこだって人を雇える様な余裕だってないし・・・」と私が言うと、○Tも「そうなんだよな、しかもバイク屋のIが、それをウンと言うはずもないんだけど・・・」と言っていました。
「ただ辞めたいだけなんじゃないの?」と言う私に「多分ね」と○Tは答えました。

高校を辞めてから、ずっと親父の所で働いていたDです。
他を全く知らずに来ている彼が、一度は離れて仕事をしたい、と言う感覚もわかります。
けれでも、親父はそれが心配でなりませんでした。
「いっその事、出しちゃえば?」と私が言っても「でも・・・」と後の言葉が続きません。
「良い機会かもしれないじゃない。 今まで親父の所しか知らなくて、恵まれている事に気づいていないと思うし、一度は外で仕事をしてみるのも本人の為だよ。 出しちゃえ、出しちゃえ!」
そう言う私に、○Tはこう言いました。
「俺・・・自信が無いんだよ・・・」と。
息子の事で自信が無い・・・と言う意味が私には理解出来ませんでした。

○Tは続けました「あいつが外に出て、ちゃんと出来るかどうか・・・外に出してしまう自信が無いんだ・・・」
小さい頃ビビルほど怖かった親父のくせに、Dはいつも親父と一緒に居て、親父の仲間達とも遊び、まるで親父のテリトリーの中で生活をしている様に見えました。
私には、それが時々歯がゆかったりしていたので、この反乱は一種チャンスかも・・・とさえ思ったのですが、その晩、○Tは遅くまで一人でお酒を飲んで翌朝は私が仕事に出るまで起きて来ませんでした。

○Tの事を心配した従業員の一人が昼間私の店に電話をくれました。
昨夜の落ち込み方の様子を話すと「そうだろうな〜・・・親父の気持ちわかるよ〜。 あ、でもこの電話はなかった事にしといてね。 余計な事するなって親父が怒るからさ。」と言って、彼は電話を切りました。

次の日は起きて会社に行きました。
そして、帰って来て私にこう言いました。
「Dに、”本気で俺の所を辞めると言うんだったら、家を出て行け”って言って来た。」と。
これも又私には理解出来ずにいると「俺の仕事を手伝っているから、もういい年なのに家賃を入れなくて俺の建てた家に住まわせてやって来たんだから、俺の仕事をしないんだったら、家に住む資格はないって事。」と説明してくれました。

「え、それって変じゃない? Dがお父さんの建てた家に住むのは親子なんだから当たり前なんじゃないの? うちの仕事をしてるとか、してないとか、関係あるの?」と私が聞き返すと「関係あるでしょ〜!
 Dの給料が安いのは、家賃払わなくて良いからなんだからさ、それをアイツ勘違いして、バイク屋を手伝っても自分は家賃払わないんだから、それほど稼げなくてもいいやって思うのは間違いでしょ〜」と反論して来ました。

とにかく親父はあの時、Dを何とか引き留めようと必死でしたが、この考え方は私にはこの時には納得出来ませんでした。
他の同じ年頃の男の子を持つ知り合い何人かに聞きましたが、一人だけ、○Tと同じ考えの人が居たことで、なんとなく納得はしましたが。

この親父の爆弾(?)発言で、息子は前言を撤回しました。
但し、その後息子は私に一度「俺さ〜、不安なんだよね・・・一度も外に出た事がないでしょ? これで良いのかな?と思う事もあるんだよね。」と言い、親父は「もう次には引き留めないから。」と言っていました。
「次は引き留めないって言ってたよ。」と私がDに言うと「うん、知ってる。」とDは真面目な顔をして答えていました。

それからでしょうか、又Dは必死に仕事に取り組み、いつしか先輩従業員を追い越す成長ぶりを見せました。
次第に○Tは、まるで親馬鹿丸出しで「アイツはやるよ、さすが俺の息子」と外では言えない分、私には自慢をし始めていました。
「いつかアイツは俺を追い抜くだろうけど、まだまだ負けない。」と嬉しそうに言っていた○Tを見て、こちらも嬉しくなったものです。

映画「タイタニック」・・・もう随分前の映画です。

同居人○Tと私は、それをテレビで見ていました。
「話題だったんだよね〜」「でも、どこが良いの?って話もあったよ〜」と言いながら、見始めました。

若い貧乏な男の子がお金持ちの女の子とタイタニックで出会って、恋におちました。
そこまでは、二人で「う〜ん・・・どうよ?」と言う感じで見ていました。

ところが、タイタニックが沈み始めた所から、その凄さに二人はじっと画面を見つめ始めました。
皆我先に救命ボートに乗ろうとします。
そして、女の子にはボートを用意されますが、男の子にはありません。
映画の中には緊迫した空気が流れています。

そこで、○Tが口を開きました。
「あの女・・・M_B_(彼は私をそう呼びます)みたいだな。」
何の事かわからず「は?」と聞き返すと、又同じ事を言いました。
「どうゆう事?」

映画の中の女の子は、水浸しになった船内に取り残された男の子を助け出そうと、船内を探し回り、手錠で固定された彼を救い出します。
そして、用意されたボートに男の子が乗れないとわかると、一度は乗ったボートから飛び出し、彼と行動を共にしようとします。

「あれが、私なの?」と聞くと「そう、お前だったらやりかねん」と言うのです。
「そりゃあさ〜、自分だけが助かるなんて、やっぱイヤかも〜」と私が言うと、「でもさ〜、ああ言うのは止めて欲しいな〜」と○Tは言いました。
「なんで、なんで? やっぱりイヤだよ、おいてなんか行けないよ〜」と言う私に、○Tは「あのね、その気持ちは嬉しいけど、あんな事されたら足手まといじゃん。」意外な言葉に「へ?」と私は○Tの顔を見ました。

「だって一人だったら自分の事だけで良いけど、お前連れてじゃ、無理無理」と言いました。
「でも、それで私だけが生き残っちゃうなんて、いやじゃん。」と私はまだ抵抗をしました。

すると、○Tは、「大丈夫、俺は一人だったら、なんとかして生き延びるから、お前は先に逃げて待ってろ。 俺はぜっ〜たい大丈夫だから。 だから、お願いだからああ言う時には先に逃げてろよ。 俺もちゃんと逃げるから。 信用しろっての。」
全く女ってわかってないぜ、特にお前はな、とでも言いたそうに、○Tは私に言いました。

確かにあの場面で「絶対にあの人は帰って来る」と信じられれば、足手まといになるよりは先に自分が逃げた方が、両方助かる確率は高いかもしれません。
後で逃げる方にしても、明らかに自分より体力で劣る人間を引き連れているよりは、自分の事だけに専念出来れば、逃げおおせる確率が高くなると言う事でしょう。
私が先に逃げる事が、○Tを助ける事に役立つんだと、その時初めて理解出来た気持ちでした。


映画は大した事のない物でしたが、緊急時の我が家の心得として、役に立ちました。

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