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あの夏の事は、去年には冷凍してぎゅっと固めてしまったはずだった。 それが、この暑さで又少しずつ溶けてしまって来た様だ。 あの夏は泥沼の中をもがく様に歩いている様だった。 ○Tと私が一緒に暮らし始めて最悪の夏だった。 いつ終わるともわからない暑さの中で、打ちのめされ、みじめな気持ちを私達は抱えていた。 もう何年も前から妙に絡んでしまった○Tの人間関係、去ってしまった人達、うまく行かない仕事・・・それらがあの夏に頂点に達していた。 歩く度にくっついてくる泥を拭う事も出来ず、ずぶずぶとそのまま泥沼に沈むのではないかと思える程だった。 そんな日常から何とか脱したいと、私達はもがいた。 ○Tが「もうこんな日常は嫌だ」と思っていた事を私は知っている。 それは私にとっても本当に辛い日常だった。 その辛い日常から○Tを解放したのが、実は病気だったのではないかと、時々考える。 だから、○Tの闘病は決して辛いだけの物ではなかったのだ。 一年に一度位しか会わなくなっていた友人達が賑やかに見舞いに訪れ、私との生活を自分の兄姉達にオープンにし、私と奥さんのMちゃんは知り合いになり、仲良くなった。 病気がわかってからの○Tの写真はどれも笑っているし、それまでの眉間のシワはなくなっていた。 もう私はこの期に及んで「それが○Tの病気の原因になった」だの、 「そのストレスを私が吸収しきれなかった」だのと後悔をしている訳ではないのです。 ただ、○Tと過ごした最後の夏が一番辛い夏だった事がまだ悔しいだけなのです。 せっかく冷凍して固めてしまったはずなのに、溶けて来てしまったのは、本当はあの夏にもあった小さな楽しい事も一緒に固めてしまったからみたいです。 私はこれから、その楽しかった事を取り出して、辛かった事だけをもう一度冷凍してみようと思っています。 ○Tと私しか知らないあの夏の辛かった事・・・
それもいつか笑って話せる気がしています。 |
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2009年06月28日
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