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ある年の冬の日、店のお使いで、その角に差し掛かると、まるでそこだけ春が来たかの様な明るさだった。 そこにそれだけの高さの木がある事すら、何度も通っていた筈なのに、春や夏や秋には全く気づいていなかった。 初めて見たその花に、私はあんぐりと口を開け、仰ぎ見た。 他の木々が寒さに身を硬くしている真冬の最中に、その花だけは、寒さを謳歌しているかの様に、実に楽しそうに咲いていた。 なんじゃ?この花は・・・いつからここに生えていたんだ? でも、この「いつから」は、かなり前からだったと気づいたのは、その木の根の辺りに目をやった時だった。 都会の町の中、その木の根元だけを残して、後は全て舗装され、根元近くまでほぼすっかりコンクリートに被われていた。 私が気づかなかっただけで、その木はもうずっと以前からそこに植えらていたに違いなかった。 はじめまして・・・冬の花・・・ とりあえず挨拶だけはしたけれど、それがどこのどいつなのか、私には見当もつかなかった。 それまで、冬の木の花と言えば、サザンカや椿しか知らなかった私の頭は混乱した。 そうゆう時には、師匠に聞くに限る。 私は、さっそく師匠に訪ねた。 今なら写メで見せるだろうが、その当時には、そんな便利な物はなかったから「黄色い梅みたいな花」・・・多分そんな風に説明をしたと思う。 師匠はすぐにそれがロウバイと言う物だと教えてくれた。 あれから、一体何度冬を越しただろうか。 店からのお使いの用がなければ、滅多にそこを通る事はないので、年によっては気づいた時には春になっていて、花に出会えない事もあった。 今年は、ある方のブログでロウバイの写真を見て、思い出した。 昨日、私はわざとその道を通る用事を作った。 一瞬あのロウバイのお宅が無くなったかとヒヤリをしたが、ロウバイは無事だった。 落としきらない枯れ葉の色まで花に合わせ、黄金色に輝くなんざ、ちょいとした洒落者のロウバイである。 寒さに震える私を尻目に、ロウバイは冬の日を浴びて木ごと黄金色に輝いていた。 |
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2010年01月17日
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