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今年の夏前に、ブログで知り合った志乃さんからスミレを頂く約束をしていた。 頂けるのはスミレだけだとばかり思っていたのに、その時同時に、他にも鉢を頂いた。 名前は聞いたはずなのに、いい加減な私はすっかり忘れ、そのまま玄関先にひょいと置いた。 スッと尖った剣の様な形をした固そうな葉っぱは、どこから見てもとても可愛とか、きれいとか言える物ではなかった。 覚えてもいない名前の植物だから、きっとまだ一度も見た事も無い花が咲くのだろう位の期待はしていたけれど、それでも、「いつか何かが咲くのだろう」程度の期待だった。 水はやっていた。 剣の形の固そうな葉っぱは見るからに強そうで、実際夏の暑さにも強かったし、雨にも強かった。 水を忘れればすぐにグダグダと文句を言う紫陽花の葉や、チリチリになってしまうアジアンタム等に比べれば格段に強かった。 でも、我が家に来て数ヶ月、見た所何の変化も見られない事が、この植物が我が家を気に入ったかどうかそろそろ不安になり始めていた。 名前を覚えていないのだから、本当はこの場所で良いのかどうかを調べる術もなかった。 それが、今朝、ひょいとその鉢の前にしゃがんで見て驚いた。 どう見ても、葉っぱとは違う物が飛び出しているのだ。 濃い紫とピンクの間の様な、小豆色をした小さな三つ編みの様な花芽だった。 私が「三つ編みの蕾」と言うのは、大抵はアヤメの仲間達の事である。 これってアヤメだった? はて? 今頃咲くアヤメの種類なんてあるものなんだ〜・・・ いや、待てよ・・・本体から腕を出す様に伸びた感じはアジュガにも良く似ているし・・・三つ編みに見えたのは老眼のせいで、良くみると粒々の蕾だった。 更に目をこらして見ると、この植物、花芽も出しているが、同時にその伸びた茎の下には本当にアジュガとそっくりに、「ここを土に着けて下さ〜い」とばかりに根を伸ばそうとしているではないか。 アジュガがそれをやるのは花が終わった後なのに、この植物ときたら、花を咲かそうとしながら根も出そうとしているのだ。 世の中には器用な植物もいるものだ。 食べながらウンコをするウサギみたいな奴だと感心する。 いやいや、感心している場合ではなくて、せっかくだから名前くらい知りたいと思うのが人情と言うものだ。 今日はちょうど師匠の所へお邪魔する予定があった。 写真を撮って行くのも良いけれど、この何本も出た腕の一つをお裾分けするのも良いだろうと考えた。 チョッキンとその腕を一つ切ると、私はいそいそと師匠へのお土産にした。 袋からそれを出しながら「これ、お土産なんだけど、これって何?」と聞く私に、師匠は言った。 「キッショウソウとかって言うはず」 「吉祥寺の吉祥?」 「そうそう、それが咲くと、その家に良い事があるんだってよ」 それは縁起の良い話だし、覚え易い名前だった。 それなのに、どうして覚えていられなかったのかわからない。 「でね、吉祥草は、あまり日当りは良くない場所が好きなの。」 なるほど・・・ 今考えると、多分「あまり日当りでなくても良い」と言う事だけを覚えるので精一杯だったのだろう。 他の鉢の陰になり、盛大に当たる西日を避ける様な場所に置いてあったのは、そのせいだったのだ。 お気楽ベランダーは、時に、名前を覚えるよりも置き場を覚えるものなのだ。 花を咲かせながら根を出す吉祥草の方が、ちょいと偉くも思えるが。 |
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2010年10月23日
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