未婚の未亡人、泣いたり笑ったり

今は亡き同居人○Tと、未婚の未亡人の珍道中人生

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2015年05月

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どくしょ

通勤が電車&バスで小一時間かかる様になって2年。
下り方面のせいでほとんど座れる車内ですっかり本を読む事がくせになっている。

本を読む事から長い事遠ざかっていたから、読み始めるとあれこれと節操なく色々な本を読むのだが、最近は畠中恵さんの「しゃばけ」シリーズにはまっている。

江戸時代の大店の一人息子は、祖母に大妖を持ち、たいそう病弱。
その病弱な若旦那に仕える二人の手代達も実は妖で、千年は生きている。
若旦那の部屋には、他にも沢山の妖達が住んでいるが普通の人間の目には見えない。

こんな物語を、私は友人にも勧め、彼女もすっかりはまっている。
他にも過去にはまった友人を発見して、時としてその話題で盛り上がる。

ふんわりほんわりと江戸のお伽話で、二人の手代の頼もしさと若旦那の性格の良さ、出て来る妖達のそれぞれのユニークなキャラクターに、私も二人もはまってしまった。

百年この世にある物は、物であっても神が宿り付喪神になる事や、家をギシギシ鳴らす家鳴と言う妖は、顔は怖いがリス程の大きさと思われ、これが何匹も若旦那の袖に出たり入ったり愛らしい。
(我がオンボロアパートは、廊下を歩くとギシギシ言うからきっと家鳴が居るし、祖母の使っていた桐箪笥は、きっと付喪神になっていると思われる)

でも、私がこの物語に本当にはまったのは、次々と読むうちに千年以上も生きている妖の悲しさが物語の中に垣間見えて来た時だった。

(第一、若旦那の祖母は三千年も生きた大妖だが、人間に恋をして、その人と結ばれるまで何度もその人の生まれ変わりを待ったと言う設定なのだ。そして、その祖母にずっと想いを寄せながらそばに居たのが若旦那に仕える二人の手代のうちの一人なのだ。)

物語の一つは、「はるがいくよ」
事は桜の花びらの精が若旦那の元に現れる事から始まった。
赤ん坊の姿だった桜の花びらはあっと言う間に成長し、あっと言う間に年頃の女性になってしまう。
そして桜は散ってしまうのだ。
若旦那は金と人脈に任せて何とかして命を長らえれないかと奔走するが、桜は散ってしまう。

その時に若旦那は、二人の手代達から見れば人間の一生も同じ様に短いのだと悟る。
そして、自分が居なくなる事を二人の手代達が哀しむのだろうと想像する。
千年以上生きている妖達は、何度もそんな経験をして来ているのだ。
逝く人を止められない、止める事もしない。

電車の中でその辺りの話に来た時に、私は慌てて本を閉じた。
だって、電車の中で泣く訳には行かないじゃな〜い。

アマリリス様

イメージ 1
遂にそれがやって来てしまったのは、3月だった。
母が久し振りに上京して我が家へ2泊して行った一週間後だった。

近所の友達と夕飯を食べている時にそれが運ばれて来た。

ああ、アマリリス・・・・遂にアマリリス・・・・・
私が敬愛する(?)このベランダーと言う名の生みの親、いとうせいこう氏が絶賛(?)をしていたアマリリスである。

但し、私の本来の好物は、小さな花達である。
楚々として、地味な、雑草まがいの花達が私の好みである。
故に我が家ではほぼ白か青、紫の花を咲かせるものがほとんどで、例外で派手な赤で大きな花を咲かせるのは、○Tが持って帰って来てそのまま居座っている玄関のペラルゴニウムのみなのだ。

私はこれが咲くと必ず切って○Tに供える。
派手でちっとも私好みではないけれど、○Tとの生活がぎゅっと、ぎゅぎゅっと詰まった大切な花なのだ。

で、アマリリスである。 いや、この豪華な花はアマリリス様と言っていいだろう。
しかも、箱には「赤」と書いてある。
贈り主が「赤と白、どっちが良い?」と聞いて来てくれた時に、「白」と言っておけば良かったと後悔が頭をよぎった。

一緒に夕飯を食べていたMAは、「へえええ〜、凄いじゃん! 豪華なのが咲くんだよ〜、楽しみだねぇ」と自分の事の様に面白がった。

さすがアマリリス様である。
ご丁寧に"取説"がついていて、曰く「良く日の当たる窓辺で育てて下さい」
いや、これが我が家には全くもって存在しない。
ごちゃごちゃと家が密集して建つ都会の隅っこのアパートの1階。
日の光など昼間の数時間明るくなるだけで、入って来る事はほとんどない。
しかも昼間は留守なのだから、真っ暗である。
唯一置けるとしたらトイレの窓か? と思ったが、これも北向き。
しかもアマリリス様をトイレに置くなんぞ罰が当たりそうである。

で、結局あれこれと注意書きを読んだ後の私の解釈は以下の通り。
「日が当たる外で良し。 但し雨が嫌いなので軒下。 凍らなければ冬越し可」

小さなプラスチックの鉢には、アマリリス様の球根を守る為と思われる、土の上に水が通る蓋、底には受け皿までセットされていた。
それらを撤去し、唯一ある我が家の玄関の軒下に転倒防止用にカゴに入れ、アマリリス様は我が家の仲間入りを果たしたのだ。
ようこそ! 我が家へ! アマリリス様!

「1週間に一度、コップ1杯の水をやって下さい。 やり過ぎると根腐れを起こします。」の注意書き等まるで無視して、毎朝せっせと水をやった。
なんたって、もう外にいて、受け皿もないのだからそんな心配をする必要はないのだ。
「水をやり始めたら、外に出さないで下さい」
霜も降りない都内では、凍る心配などする必要もなかった。

乱暴な水やりで中の土がはねて飛んだ時には、少しビビった。
何しろタマネギクラスの大きな球根がピッタリで収まる鉢だから、土などろくに入っていないのだ。
ほんの少し土が飛んだだけで、アマリリス様の球根の肩がちらりと見える様になってしまった。
「おお、申し訳ない」と小さく謝った私をアマリリス様は鷹揚に許してくれた。

それにしても、このアマリリスと言う植物、タマネギの先を切った様な切り口をそのまま残してあるのが奇妙だった。
まあ、アマリリス様さえ機嫌が良ければそれで良いのだが、色々な球根を見て来たつもりだったが、切り口が見え見えの球根と言うものに初めてお目にかかった気がする。

そして、せっせと水やりをしていたある日、気づくとヘラの様な新芽が生えて来た。
「おお〜、いらっしゃいませ〜」
ここで改めてアマリリス様にご挨拶。

その後はどんどんとヘラ状の葉っぱが大きくなり増えて行き、ついに花芽を思われるものがその葉の外側から上がって来た。
花芽そのものは、水仙、もしくはネギ坊主で良く見かける皮を被ったものであったが、
花は真ん中から出るものと思っていた私には、これは又衝撃的であった。
一番外側の葉っぱにへばりつくように、ぷっくりと膨れたもの、これが花芽だったのだ。
しかも、葉っぱにへばりついていたものだから、ぷっくりは外側だけで、内側は平である。

アマリリス様、面白過ぎます。

次に、膨らんだ花芽は、少しずつ葉っぱから離れて行った。
発射台にセットされたロケットが、秒読み状態に入っている所を想像してもらえばきっとわかりやすい。

花芽は少しずつ葉っぱからはなれ、馬鹿でかい水仙の様な蕾は膨らみ、背も高くなり、ついには発射台の葉っぱの高さを越した。
でも、相変わらず内側と外側の膨らみ加減は違ったままだった。

やがて、外側の皮をびりびりと破く様にして蕾がおでましになった。
よくぞ、まあ、こんな狭い皮の中に閉じこもっていたもんだと思う位の大きな蕾は次にその首を折り、ラッパの様に花びらを広げ始めたのだった。

イメージ 2肉厚のビロードの様な深紅の花びらは、まさにアマリリス様と呼ぶに相応しかった。
思わず触ってみた花びらのぽってりとした感触は、同じくぽってりとした花びらを持つクチナシのより数段上であった。

う〜ん、これは球根界の女王と言っても良いかもしれない。
切り花にしてもきっと見事であろう。

と、ここで3本上がった花茎の咲き始めた2本の行き先を決めた。

1本は勿論、「花」と言えば、派手で明るい花しか思い浮かべなかった○Tの為に、そしてもう1本は、1週間遅れの母の日のプレゼントに元私の雇い主へ。

その人も本来は紫好きで、去年も今頃咲いたクレマチス等を花束にして届けたがこのアマリリス様は喜んで貰えるだろうか?
さっそく電話をしてお昼を一緒に食べようと誘い、アマリリス1本と少しのクレマチスや裏庭の花達を包んで出かけて来た。

今年90歳になるはずの彼女は、包んだ新聞紙からはみ出したアマリリスを見て「わー!! 凄い! こんなのが咲いたの? 素敵!」といつも以上に喜んでくれた。

3つ目の花はまだ発射台から離れたばかりで、最後だからなのか小振りの様だ。
ひょっとしてアマリリス様は、”餌”をご所望なのかもしれない。

自分では決して選ばない花でも、育ててみると愛おしく思えて来てしまうのは何故なんだろう。
愛おしいと言うよりは、情が湧くと言った感じに似ているかもしれない。

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