|
去年の夏、少し前から様子のおかしかった給湯器が遂に壊れた。
ガス屋の兄ちゃんと大家さんに相談の結果、取替える事に決定をしたが、これがなかなか時間を要した。
どれ位要したかと言うと、下見、見積をしてから旧盆を挟んでほぼ半月。
その間のお風呂をどうしようか?と考えた。
一番近かった銭湯はもう6年程前に廃業し、その跡地に友人宅が建っている。
これはもう借りに行くしかないでしょう。
連絡をすると、二つ返事だった。
最初の頃は、会社から一旦帰り食事を終えてから行っていたのが、ある日仕事が終わらずに遅い時間になった時には「そのまま来てご飯も食べて行けば?」と声を掛けてもらい、何度かは夕飯付きと言う豪華なお風呂になった事も。
あまりにも毎晩では申し訳ないかと、又ある日は別の友人に連絡をすると「9時過ぎなら良い」と返事をもらった。
この友人宅には、高齢のお母様が同居していて、その世話が一段落するのがその時間だと言う。
それでも何度か押し掛けて行って、お風呂上がりには冷たい飲み物等も振る舞ってもらった。
この2件、我が家からは歩いてほぼ5分圏内。
お湯を借りるにはもってこいであった。
「もう少し近かったら来てもらっても良かったのにな〜」歩いて軽く15分はかかる場所の友人は言った。
10年程前に新築で買ったマンションに住むその友人宅のお風呂にも浸かってみたかった私は、一緒に出掛けた花火大会の帰りに、ちゃっかりお湯をもらいに寄った。
「帰る頃には又汗だくだね」と友人と笑い合った。
夏が終わり、○Tの息子Dが仕事がてらやって来た時にこの話をすると「M_ちゃん、ダメじゃな〜い、そんなに周りに迷惑かけてちゃ〜」と半笑いで言った。
私はすかさず笑いながら言い返した。
「まだまだわかってないな〜、 Dは。 貴男の親父は何て言っていたと思う?『他人には迷惑をかけて生きて行くもんなんだ』って言ったんだよ。 『自分一人だけで他人に迷惑をかけないで生きているなんて思うのは、傲慢だ』って。」
さて、我が家に取り付けられた新しい給湯器は、流石今時の物でお喋りする。
しかも風呂のお湯はリが自動になってしまった。
あの「殿様の湯」にはもうならない。
湯量で自動で止めるから、多分「源泉かけ流し」にもならないだろう。
緊張感を伴うお湯はリから解放された私は、今や炬燵で眠りこけて給湯器からの優しい叫び声をまつばかりである。
|