未婚の未亡人、泣いたり笑ったり

今は亡き同居人○Tと、未婚の未亡人の珍道中人生

闘病記ー今日も絶好調!

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2006年11月6日(月)〜2007年3月24日(土)
同居人○Tの全てを賭けた、最初で最後の闘病記を、未婚の未亡人の私がつづります。
ぷぷっと笑って、でも時には大まじめな彼の闘病記です。
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エピローグ

2007年3月24日(土)〜28日(水)

喪主を息子のDに決めると、Dは「じゃあ、きっちりと葬儀をやりましょう! 笑顔で親父を見送ります!」と言い、そこからはエンジン全開でした。

親父を霊安室から我が家へ連れて帰る事を、私が「入口から入らないのでは?」と言えば「入らなきゃ、俺がおぶってでも入れます!」と言い、葬儀のお礼状は500枚用意する様に言ってお兄さんのKIさんの度肝を抜きました。

病院から出る前からあちこちに電話をして、親父の訃報を知らせたのもDです。
夜の間に、親父の携帯から声が枯れるほど電話をし、彼女のTMちゃんとFAXを流し続けてくれました。


弔問客は我が家へ次々と訪れました。
弔問客をおもてなしするのは私の役でした。

ほとんどの人が「信じられない」と言う顔をし、なかなかお線香をあげようとも、白い布を取ろうともしませんでした。

けれでも、私はあの笑顔を見てもらいたくて、「ど〜そ、ど〜ぞ」と言って、その顔を見せると、今度はほとんどの人がそれにつられて涙を浮かべながら笑い出しました。
中にはその笑顔を2ショットを撮って帰った人もいました。

弔問客に○Tの最期の話をする度に、私は泣いていましたが、そのそばで、Dは黙々と自分の仕事をし、何人もの人が同時に喪主のDに話しかけても、それを次々とこなして行きました。

その顔は、11月に○Tが倒れた時の顔とはまるで違っています。

お通夜は27日(火)でした。

会場にはかなりの数のお花が届いていました。
その順番をどうすれば良いのかを決めるのもDでした。
その数を見たDは、一瞬ひるみました。
「M_ちゃん、どうしよう・・・」と言うDに、私が「とりあえず、大事な所から大雑把に決めてみれば?」と一言言うと、「わかった」と言うが早いか、あっと言う間に決めて行きました。

「死ぬんじゃないぞ〜!」と泣きながら電話をして来ていたTKZ君は、「何か手伝いたい」と申し出てくれ、受付を頼むと、「あそこは嫌だ」とだだをこねました。
「なんで?」と聞くと、「だってあそこに立つと、オヤジのバイクが飾ってあるじゃん・・・あれって買っただけで乗ってないんでしょ?・・・」ともう泣きそうです。
「じゃあ、良いよ! 他にないからね!」と私が言うと、
「わかった、やるよ、やるよ。」と言いました。

「でもね、泣いてちゃダメなんだよ〜、ねえ、泣かないで出来る?」私は念を押しました。
「大丈夫、泣かない! 泣かないから」

他にも何人もがお手伝いを買って出てくれ、○Tの役に立ちたがりました。

その中の一人は後で、「手伝わせてくれて有り難う」とまで言いました。
「もし、あそこで普通に弔問客としていたら、辛くて泣きそうで、何かしていなきゃいられなかった」と。

会場に入る前に、Dは「今晩は俺達が会場に親父と一緒に泊まるから、M_ちゃんは家に帰って来て寝てていいからね」と言っていました。
私は「でも、もしかして、ああいう会場は閉め切ってしまって、親父の隣に一緒に居られるかどうかはわからないから、確認するんだよ」とあらかじめ言っていましたが、案の定、泊まれるけれども、一緒には居られないと断られた様です。

一通りの事が終わって、やれやれと言う所で、Dが憮然として私に声を掛けました。
「M_ちゃん、親父を又連れて帰りますよ!」
「は?」

Dは葬儀屋さんに頼み込んで、もう一度我が家へ親父を帰す手はずを整えていました。
これじゃあ、○Tとそっくりじゃん!

○Tは私の父のお通夜の時に、やはり会場を閉めるから一緒には居られないと言われたのを、無理矢理に開けさせ、一晩中私の父と一緒に居てくれました。

そんな話を知ってか知らずか、Dはその時の○Tとそっくり同じ気持ちで同じ事をやったのです。
私はビックリしましたが、おかしくもあり、嬉しくもありました。

その晩は、他にも何人も一緒に我が家に泊まり、実際には最後にはほとんどが寝てしまっていましたが、まるで○Tのお誕生日会の様な賑やかさでした。

いつも枕にしていた縫いぐるみのジャンジャンを横に、○Tは皆に囲まれてニヤニヤと笑っていました。

28日(水)の告別式は、晴れて、本当にいい陽気でした。

お通夜にも参加して、この日にも来てくれた人が沢山いました。

Dの挨拶の最後は「親父、行ってらっしゃい!」でした。

霊柩車には、Dが気を使って私に乗る様に言ってくれました。

火葬場にまでも沢山の人が付き合ってくれました。

○Tの入った棺がお釜に入る寸前まで、TKZは泣き続け、あの「焼かないで〜!」の台詞で有名な○Tのお姉さんの存在が霞んでしまうほどでした。

私は勿論、心の中で「焼かないで」とつぶやきました。 ○Tがあの時言って欲しそうだったからです。 本当はそれよりも、棺に入れたあのジャンジャンになりたい・・・と思いました。
でも、私はそこには入れないから、それがお伴だよ。

骨になって出て来た時、ジャンジャンの前足に入っていた針金が一緒でした。
ジャンジャンの訳を知っていた友人達は「ああ、ジャンジャンは使命を果たしたね」とクスッと笑いました。
ジャンジャンは、どうやら私だけではなくて、皆の代わりだった様です。


精進落としを用意した会場へ戻る時、私はDの運転する○Tの車の助手席に、お骨を持って座りました。
そのお骨は”出来立て”で温かく、本当に○Tを抱いている様でした。

そして、途中の桜並木にさしかかると、満開の桜の花吹雪が舞って来ました。

「わ〜! きれい!」と車の中の5人は声を上げました。
私は膝に抱いている○Tに話しかけました。「○T、見てる〜?」


あれはもしかして、2代目デビューの餞だったかもしれません。
それとも、あのリハーサル通りには出来なかった「皆、ありがとう!」の代わりだったかな?

2007年3月24日(土)

病室でのお別れをする時間を、看護師さん達はゆっくりと取ってくれました。
「気が済んだら呼んで下さいね。」
そう言って、看護師さん達が出て行くと、Mちゃん、D、TMちゃんそして私は、しばらく○Tを囲んで立ちすくんでいました。

「そうだ! 写真を撮ろう!」と言い出したのは私で、皆順番に○Tとの2ショットを撮りました。
まるで生きていた時と同じ様に。

そして、看護師さんに声を掛け、着替えをさせてもらいました。
「下は、ついさっき取り替えたばかりなんで、上だけで良いです。」と私が言うと、
「何か着せてあげたい物はありますか?」と聞かれたので、さっき一度だけ着たあの青いZIPUPのトレーナーを着せて欲しいとお願いしました。
TシャツはYちゃんにプレゼントしてもらった物をお願いしました。

私は雇い主に電話をし、○Tが亡くなった事を告げました。
それを告げた途端に、私はこれが現実なのだと言う事を改めて突きつけられた様で、涙が止まりませんでした。
ただ、彼女の「お彼岸だったでしょ? お彼岸に逝った人は天寿を全うした人だって昔から言うから・・・全部使い切って逝ったんだから、悲しまなくて良いんだよ。」と言う言葉に救われました。

この時、皆がどこに行っていたのか、私は覚えていないのですが、私は一人でした。
多分一人になりたっかのです。
誰もいない所で一人で泣きたかったのです。

そして一通り泣き終わって、ナースステーションの前を通りかかった時でした。
看護師のA君が声を掛けてくれました。

「Nさん・・・」
「A君・・・ありがとう・・・何だかあっけなくて・・・さっきまで話をしていたのに・・・も〜、何だかな〜って感じ」

「いや、ちょっと・・・早かったです・・・僕もまさか今日だとは思っていなかったんです。 だって、Tさんは今朝だって声を掛ければまだ戻って来て、返事もしてくれていたし・・・普通、あんなにしっかりしていて、まさか今晩だなんて思えなかったんです・・・」
「そうだよね〜! ほんとに・・・」

「今日はお仕事には行ったんですか?」
「ううん、結局行き損なって、ずっと居たんです。」

「そうですか・・・良かった・・・実は僕、もし今日本当にNさんが仕事に行くって言ったら、止めようかと思っていました。 一緒に居た方が良いと思ってはいたんです。 そうですか・・・・一緒に居られて良かったです。 でも、今日だとは思ってはいなかったんですよ・・・」

そして私は気になっていた事を話しました。

「あのね・・・最後に座薬を入れようかって話になった時に・・・私は決められなかったんです・・・その方が楽になるんだとは思ったんだけど・・・私には決められなかった・・・○Tは自分でそれは嫌だって言ったし・・・」
「わかります。」

「それで、それを迷っている間にTは逝ってしまった様で・・・まるで私に決めさせなくて良い様に逝ってしまった様な気がして・・・。

でも、本当はTを見ていると『まだ戦う!』と言っている様で、それで『嫌だ』と言った様で・・・・だから、それを苦しそうだから、って言うこっちの判断で、それを勝手に楽にさせて良いものかどうか?って悩んだんです・・・。

どんなに苦しくても『まだやる!』と言う態度の○Tを『楽にさせてやる』事が本当にTの為なのか? 見ているこっちが辛いからって言うだけで、それを止めさせて良い物かどうか・・・・そんな権利があるんだろうか?って思ったんです・・・
私は最後の最期まで○Tが「戦う」と言うのなら、戦わせてやりた気持ちがありました・・・・・」

するとA君は言いました。
「Nさん・・・実は僕もそう思っていました・・・」

私はこのA君の言葉でも救われた思いでした。

あの時、鎮静をして意識のレベルを下げてしまえば、もう少し辛い時間が減ったかもしれません。
けれども、それが本当に○Tの為なのか? ○Tの意志なのか?私には判断がつきませんでした。
私には、あの時の○Tの「嫌だ」と言った言葉は「まだ楽になる気はない」と受け取れたのです。
だから、最期まで戦わせてあげたかった・・・・

その気持ちをA君は理解してくれました。

でも、○Tはそれに満足してくれただろうか? 本当にそれで良かったのだろうか?

その答えは、家に帰って来た時の○Tの顔にありました。
Dがその顔を見て言いました。
「ねえ、Mちゃん、見てよ、親父の顔・・・・笑ってるよ!」

本当にこちらが思わず笑ってしまう位、その顔は笑っていました。
笑い過ぎな位でした。

もうこうなったら、残った方はこう思うしかありません。
「これで良かったんだね!」

そして、悲しまなくて良いんだね?

○T、葬儀はDがきっちりやるよ。 見ててね!

その時

2007年3月24日(土) 午後8:40〜9:05

Mちゃんと私が惚けた様に病室に居る所へ、息子のDが彼女のTMちゃんを連れて入って来ました。

Dは、ベッドで眠る○Tを見るなり、「親父〜!」と言うと、いきなりそばに駆け寄り、手を握りしめ泣き始めました。

私は「へ?」と思い、心の中で「なんだよ〜、D〜、まだ泣く所じゃないでしょ〜。 さっきやっと落ち着いて寝たばかりなんだからさ〜、まったくも〜」とつぶやきました。

Dはまだ手を握ったまま「親父〜!」と叫んでいます。

ああ・・・もう・・・やれやれ・・・じゃあ、仕方ない、ちょっと起こしてやるか。
又ああやって動き始めても、今度はDも居るし・・・

私はDの反対側に回って○Tに声を掛けました。
「○T〜! Dが来たよ〜」
何度か声を掛けましたが、なかなか目を覚ましません。
私の声はどんどん大きくなりました。

「○T〜!!」

次の瞬間、○Tは大きく目を開きました。
ほっとしたのもつかの間、○Tの左で手を握りしめているDの姿を目で探すと思っていた私には信じられない事が起きました。

大きく開いたその目が、もう動かないのです。

さすがに間抜けな私にも、これが普通ではない事に気づきました。
「私、ナースステーション行って来る」
そう言って、ナースステーションへ駆け込むと「様子が変なんです!」と叫びました。

その私の様子に驚いた看護師さん達がバタバタと病室へ走りました。
一人は心電図のモニターを引きづりながら。

私が先に病室へ駆け込み、○Tのベッドの足元から見た光景・・・それは○Tの開いた目がそのままグレーに濁り、○Tの手を握りしめながら訳もわからないまま泣き崩れているD、その背中に張り付く様にしているTMちゃん、反対側にMちゃんが固まった様になっていました。

逝ってしまった・・・・・の?

モニターを引きずって入って来た看護師さんも、それを見た瞬間に「あ」と言う顔をし、それでも一応はそれを○Tの体につけ、モニターの画面を私の見えない位置に振ると、そのまま出て行きました。
「先生を呼んで来ます。」

変わったばかりの先生が病室に入って来ました。
ベッドに横になっている○Tを見、それから私達の方を見て、鼻に入っていた酸素のカニューラに手を伸ばしました。

「外してよろしいですか?」

それは、もう○Tに酸素が要らなくなった事を意味し、同時にもう○Tが息をしていない事を意味しました。

本当は「いやだ!」と言いたかったです。
けれでも、もう○Tが息をしていないのはわかります。

私達が頷くと、先生はそれをそっと外し、目を確認し、聴診器で確認をしました。
お決まりの腕時計を見て「9時5分・・・」と言い、黙礼をして病室を出て行きました。

Mちゃんは「なんでアンタが先に逝っちゃうのよ〜! まだ一緒にこれから温泉とか行こうって言ってたじゃない!」と叫んでいます。
Dはただひらすら、病室に入って来た時と同じ様に「親父〜! 親父〜!」と呼び続けています。

私は心の中でつぶやきました「私を置いて行かないで。」

けれども、私はそれと同時に、とても不謹慎だとは思いましたが、ほっとした気持ちにもなりました。

○Tの魂が自由になった様にも感じたからです。

でも・・・・・ねえ、○T、これで良かった?

ちゃっちゃとやれよ〜

2007年3月24日(土) 午後8:00〜8:40

真新しいトレーナーを体の上に掛けて、ほんの5分もしないうちに、○Tはもうそれをどかそうとしました。
「もう、いいの?  そうか、気が済んだんだね」
私はそれを又元の所へ戻しました。

○Tは、まだ落ち着きなく、体を動かしていました。
その様子があまりにも変なので、私はナースステーションへ行きました。

すると、看護師さんが「座薬のモルヒネを用意しましょうか?」と言い出しました。
「へ? いや、苦しいんだか何だかはわからないんです・・・」と私が言うと、看護師さんは病室へ来てくれました。

「Tさ〜ん! 血圧測りますね〜」と声をかけると、○Tは腕を出しました。
座薬を入れると、一気に血圧が下がってしまうので、その前に確認をしなくてはいけなかったのだそうです。

「でも・・・血圧が下がってしまうって言う事は・・・」私は次の言葉が恐ろしくて聞けませんでした。

「もう、大部下がって来ていますね・・・一応先生に確認をして来ますから」

私は○Tに聞きました「痛いの? 苦しい?」
○Tはまだ「いや・・・」と言いました。

「座薬入れてもらう?」私が聞くと、「ううん、いらない」とほとんど無表情です。

そして、又「起こして」とか「前に出して」とか言い始めました。
顔には苦痛を感じている表情はありません。
ただ、とても辛そうには見えていました。

看護師さんが戻って来て、もう一度血圧を確認しました。
「とりあえず、座薬の用意をする様に先生から指示が出ています。 ただ、そうすると意識は下がってしまう事はありますけど・・・」

いやだ! 私は心の中で叫びました。
まだ○Tと話がしていたい!
まだ○Tは、こうして話をしているじゃない!

「苦しいのは止めてやって欲しい。 安らかな最期を・・・」なんて口では言ったくせに、私はいざとなったら、決心が付きませんでした。
第一、○Tが本当に苦しいのかどうかも、私には判断が出来ませんでした。
さっき聞いた時には○Tは座薬は嫌だと言いました。

どうしたら良い?
私はどうした良い?
貴方の命を私が決めて良い? 決めなきゃダメ?? 
楽になって欲しいけど・・・もう二度と貴方とは話せなくなるかもしれないなんて・・・そして、もう二度と貴方と会えなくなってしまうかもしれないなんて・・・それが”今”だなんて・・・

決心はつきません。

「ねえ、○T、どうする?」私はもう一度○Tに聞いてしまいました。
「座薬入れたら、楽になるらしいよ・・・入れてもらおうか?」
すると、○Tは横になったままなのに、この時ハッキリと言いました。
「要らない・・・オプソ飲む」

私が居ない間に、オプソを飲んだとMちゃんに聞いていました。
「○T・・・一時間経ってからじゃないと・・・まだ経ってないんじゃない?」
私がそう言うと、○Tは声を振り絞る様にして言いました。
「経ってる!」

私は又ナースステーションへ走りました。
すると、そこには今日はもう帰ったはずのA君が居ました。

「オプソ飲みたいって言っているんですけど・・・」
A君の後ろでは、ナースステーションの奥でさっきの看護師さんが「今、もうすぐ座薬の処方箋が出ますからね〜」と言う声がしています。

「前に飲んでからどれ位経ってますか?」
「・・・・1時間・・・弱・・・」

「1時間弱ですか〜・・・・・・・・・」
「・・・・・・」

「わかりました! 飲ませてあげて下さい」

私は病室に走って戻りました。
「○T、オプソ飲もう!」

○Tがそれを飲み、次に水を飲みたいと言うので、私はボトルを○Tの口に近づけました。
ところが、そのボトルの口を少しゆるめてあったのを忘れ、私は○Tの顔から肩にかけて水をこぼしてしまいました。

「あ、ごめんごめん!」動揺しまくった挙げ句に、こんな時に水をかけてしまうなんて・・・タオルはどこだ〜?!とキョロキョロした時でした。
○Tの履いているジャージの股にシミが出来ているのを見つけました。

「あ・・・やっちゃったね・・・ズボン取り替えようか、パンツも、先に」
私はMちゃんに声を掛けました。
「下だけ着替えさせちゃおう。 Mちゃん手伝って〜」
「OK!」

「じゃあ、私体持ってるから、脱がして」
「はいよ!」

こうして二人掛かりで、○Tの下を着替えさせている間、○Tも必死で起き上がっていてくれました。
けれども、すっかり重くなってしまった○Tのお尻の下に、なかなキチンとズボンが収まりません。
○Tは、服を着る時でもそう言う所がキチンとしないと、とても嫌がる質です。
パンツが下でたぐまっている事など、絶対に嫌なのです。
それを知っている私達は、なんとかそれをキチンをしようと格闘していました。

すると、その時です。
「ちゃっちゃとやれよ〜」
○TはモタモタするMちゃんと私に向かって言ったのです。

Mちゃんと私は顔を見合わせて「へ?」と言いながら、「ありゃ〜、言われちゃったね〜」と苦笑いでした。

何とか無事に着替えを終えた頃には、オプソが効いて来たのか、○Tはすっかり落ち着きました。
ベッドを倒す前に、一度だけ首をかく様な動作をしました。
「かゆくなった?」と私が聞いても、それには答えずに、○Tはすぐにかくのを止め、そのまま目を閉じると、眠ってしまいました。

「ああ、やっと落ち着いたね〜」
私達は、まだ残っていたお弁当を片付け、しばらく格闘の余韻を味わっていました。

「まったく〜、何が『ちゃっちゃとやれよ』だよね〜」
思い出して二人で苦笑いをしながら、健闘を讃え合いました。

「何だかYMちゃん、汗かいているみたい〜」と○Tの体に触ったMちゃんが不思議そうに言ったのは、この前後だったと思います。
私の父の最期に、体まではわかりませんでしたが、手の甲に汗の様な物をかいて、まるでお風呂につかりすぎた時の様になっていたのを思い出しました。

嫌な感じはしましたが、この時ですら、私達にはまだ明日があると思っていました。


オプソを飲んだのは午後8:40・・・そろそろDが来ても良い頃でした。

おNEWの青いトレーナー

2007年3月24日(土) 夕方〜午後8時頃

Mちゃんが来た時には、もう暗くなり始めていたと思います。

病室に入って来たMちゃんも、まだ私が仕事にいる時間のはずなのに病室にいた事を不思議に思ったみたいでした。
「何だか目を離せなくなっちゃってさ〜」と私が言うと、「そうなんだ〜」と言って、持って来た荷物を降ろしました。

「Mちゃんが来たら、交代しようと思ってて、電話しようと思ったら、携帯の電話わからなくて・・・」
「そうだったの〜。 電話くれたらもっと早く来たのに。」

「でさ、私これから一度家に帰って洗濯とかして来るよ。」
「うん、わかった。」

「夜中から明け方までずっと『起こして』とか『やっぱり寝る』とか、忙しかったんだよ〜。 もしかして、又そうなるかもしれないけど、慌てないでね。 それと、ここにトイレとオプソの時間書いてあるから・・・トイレはもう随分行ってないんだ・・・。」
私は、今朝の話をして、それからかゆい時に塗るオイルとか、お水とかの説明をして、病室を後にしました。

その間、○Tはほとんど起きなかったと思います。

私は家に帰ると、又家の中の○Tの気配を探しました。
まだある・・・私は確信していました。 まだ大丈夫。

洗濯を始め、自分のお泊まり用の支度をし、気分は「シャワーでも浴びちゃおうかな〜」と言った所でした。
「でも、今晩はMちゃんが居てくれるから、早めに帰って来て、ゆっくりお風呂に入れば良いや」

洗濯をしている間に、私は息子のDにメールを入れておきました。
確か、今日は病院に顔を出すと言っていたのですが、「来るなら早い方が良いかも」と出しました。
Dからの返事は「危ないんですか?」と言った様な内容だったと思います。

危ないと言われれば、危ないし、そうでもないかもしれないし・・・
結局は電話で話をしました。
「ちょっと様子がおかしいんだ」と言う様な事を私は言ったと思います。

洗濯を家の中に干して、私はコンビニでお弁当を買い、Mちゃんにメールを入れると、
「今、すやすや眠っています」と言う返事でした。

私は原チャリに、○Tの着替え、私のお泊まり道具、買ったお弁当を積んで病院に戻りました。


私が病室に入っても、○Tは眠ったままでした。
「じゃあ、お弁当食べようか〜」とMちゃんと二人でお弁当を広げて食べ始めてしばらくたった時でした。

私達の話す声に気づいたのか、○Tが目を覚ましました。
うるさかったのかな? 私はそんな風に思っていました。

「起こして〜」と言いながら、手を上げています。
Mちゃんと私は、お弁当を置いて、二人でベッドの脇に立ちました。

「せ〜の!」二人で○Tの腕を持って起こしました。

「いや、もうちょっと体を前にして・・・」
「ん? 前?」
「よいしょっ」

「足がぶつかってる・・・」
「あ、ほんと」

あの夜中と同じ様な事を繰り返しました。
そして、そんな事を延々と繰り返しているうちに、○Tの体はどんどん重くなって行きました。

もう腕を引っ張って起こす事は出来なくなり、二人で背中に腕を回し、しっかりと抱き起こさなくては起きられない程でした。

「あ、起きたついでだから、何か飲む? ゼリーはどう?」私が言うと、
「うん」と言って、開けた○Tの口にほんの少し入れました。

「お薬もあるんだけど・・・飲めるかな?」
ゼリー飲料をスプーン半分ほどをやっと飲み込んだ位の○Tが、錠剤を飲めるかどうか、心配でした。

「飲むよ」と○Tが言うので、それを舌の上に乗せると、Mちゃんがいつものボトルでお水を口に入れ、「ごっくんして」と声を掛けました。
「Mちゃん、ちゃんと飲んだか見てくれる?」と私が言うと、Mちゃんは○Tに
「YMちゃん、”あ〜ん”して」と又声を掛けました。

開けた口を覗き込むと、錠剤は舌の下に入っていただけで、飲み込まれてはいませんでした。

「出して! Mちゃん!」
Mちゃんも慌てて、口の中に手を突っ込んでそれを取り出しました。

ついに飲めなくなってしまった・・・・・

もうこのころの○Tの意識がどうだったのか、まるでわからないのですが、少し落ち着いた所で、○Tは言いました。

「もう一枚着ようかな〜?」
○Tはいつもの長袖のTシャツとジャージを履いていました。
病室はかなり暖房が効いていたのと、このころの○Tは横になっていても布団ははいでしまっていました。

「寒いの?」と私が聞くと、「ううん、別に寒くはないんだけど・・・」○Tの視線が洋服を掛けてある棚に動きました。
そこには、まだ○Tが着ていない、新しい春用のZIPUPのトレーナーが掛けてありました。
入院の朝、私が恩着せがましく「私が買って来た奴ね〜」と言っていた物です。

「そうか! ○T、あれを着たいんだね! 新しい奴ね!」
私がそう言うと、○Tはこっくりと頷きました。

ところがそれを羽織らせようとしても、もう○Tの腕は動きませんでした。
仕方なく、Mちゃんと私は、それをそのまま○Tの体の上に掛けました。

「似合うよ! ○T! そのブルーね、似合うと思って買ったんだよ〜」と私が言うとMちゃんも
「あ〜ら! お似合い!」と声を掛けました。

昔だったら、あまり似合わなかった青い色、とっても良く似合ってるよ。
それは春用だから、これから又それを着て、お花見もしようね。

病院の下の、桜で有名なM川の川岸には、もうお花見用の提灯がぶる下がっているって、昨日ZIちゃんが言ってたよ。
この病室からは、背伸びしないと見えないけど、きっときれいだよ。


午後8時過ぎ頃、○Tはまだ私達と話をしてくれていました。

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