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2007年3月20日(火)
酸素 +?
朝は温めたパンにバターを塗ってやっと少し食べ、水薬のモルヒネ、オプソを飲んでいました。
「痛い?」と聞く私に「うん、でも今コレ飲んだから大丈夫だよ」と答えていました。
「仕事行って来るね、ね、大丈夫?」
「大丈夫だよ。 今日はYが来てくれるし」
「うん、じゃあ行って来るよ。 行って来ま〜す」
毎朝私は出かける前に、○Tのほっぺにkissして行くのが日課でした。
○Tが先に出かける時には「行ってらっしゃい」のkissを、一緒に暮らす様になってから必ずしていました。
面倒臭い時には、お互いのほっぺたをくっつけるだけの事や、投げkissで済ませる事もありましたが、それは、私にとってはとても意味のある儀式でした。
「もし、出かけた後にどちらかに万が一の事があって、それが最期の別れになっても後悔しない様に、笑顔で見送る」ためでした。
もう、いつかこの儀式も出来なくなってしまう時が来るのだ・・・と私は何度かこのころには思っていました。
今度の木曜に受診に行って、きっと入院になってしまうのだろう・・・そして、その時には多分、もう二度と○Tはここには戻って来れないだろうと思っていました。
そう思ってはいたのに、何故か私は、私の居ない間に○Tの身に何か起きるとはほとんど思っていなかったのが不思議です。
店からは2度メールを出しました。
タイトル「少しはマシ?」
「胃が痛いのは少しはマシになってる事を祈る♡」
タイトル「昼寝してるの?」
「Yっちゃんと昼寝でもしてるのかなあ?」
Yっちゃんが来てくれているのがわかっていた事もあって、返事が来ない事もそれほど不安な事でもありませんでした。
先週も火曜日に来てくれていたYっちゃんとは、多分この日も一緒にコタツに入って昼寝をしていたのでしょう。
かなり頻繁に家に来てくれていたYっちゃんは、後になって「会う度にやせて行っていたけど、言ったら悪いと思って言えなかった・・・」と言っていました。
ところが、これも不思議な事に毎日ずっと一緒だった私にはその変化がわかっていませんでした。
ちょっとやせたけど、そんなもんかな〜?と言うのが正直な感じでした。
私は何を見ていたのだろう???
見たくない、認めたくなかったのかもしれません。
○Tが先生の説明であまりにも悪い事を、まるで聞いていなかったのと同じ様に、私もこのあまりにも悪い変化に目をつぶってしまっていたのでしょうか?
退院して来てから、○Tが本当に元気でいたのは最初の10日位でした。
その後は、明らかに食欲もなく、外に出る事もなく、声も出し辛く、呼吸は苦しくなるばかりで、酸素の量はじりじりと増やさざるをえなくなっていました。
お風呂に入っても自分で洗う事が辛く、私に何度も体を洗って欲しいと頼み、着替えも立ったままでは危なっかしくなって来ていました。
洗面所でも、洗面台に片手を付いて歯を磨き、顔を洗う時には肘を付く様になっていました。
そして昨夜から遂に薬をいっぺんにいくつもを飲み込む事が出来なくなり、この日は私に「一つずつ飲めば〜?」と言われて素直にそうしていました。
ガタガタと悪くなって来ているばかりの○Tを、ここまで見て見ぬ振りをしていた私・・・気づけよ!
いえ・・・気づいていても認めたくなかったのです。
そしてそれに呼応するかの様に、○Tも不安の中、「まだまだ!」と思っていたはずです。
夕飯時にまで居てくれたYっちゃんとこの晩も一緒にテーブルに付きました。
○Tは、昼間にバナナを食べていたそうですが、それ以外には水だけだった様です。
「○Tは何か食べれる?」と私が聞くと
「おにぎりがいいな〜。 小さ〜いので良いんだ。」と言いました。
「小さいってどれ位?」私は赤ちゃんの拳くらいの大きさのを作りました。
「いや、食べきれないかもしれないから、もっと小さいの」
「じゃあ、こんな?」と私が作ったのはお寿司の軍艦巻き程の物でした。
「うん、それで良い。 のりも巻いて」
私は普段食べる切ったのりの缶から一枚出して、その本当に小さなお握りにのりを巻きました。
それを○Tの前に置くと、○Tはそれをしばらく黙ってみつめていました。
大きすぎたのかな?と私は不安になって、一緒になってそれをみつめました。
すると、○Tはそれを睨みつけながら言ったのです。
「これは俺が食べるの!」
Yっちゃんと私は意味がわからずに、ポカンと○Tの顔を見ました。
「そうだよ、○Tのだよ。 誰も手は出さないよ。」
私がそう言うと、○Tは言いました。
「これは、俺の食べ物なの! 癌に食わせる訳じゃない!!」
そう言った○Tの形相には鬼気迫るものがありました。
Yっちゃんと私は、小さくうなずくのがやっとでした、
○Tはその小さなお握りをつかむと、口に入れ、必死で飲み込みました。
食後にオプソを飲み、10時半には布団に入り、2時半頃トイレに起きた時に、始めて○Tは立ち上がる時によろけました。
勿論普通に布団から起き上がる事も出来ずに、両腕で必死で起き上がっていました。
そして、寝ている間に何度か息を吐く時に大きな声を出していました。
それに驚いた私は最初は声を掛けましたが、○Tには全く苦しいとも何とも自覚はなかったらしく「なんだよ〜、気持ち良く寝てたのに〜」と叱られてしまいました。
あら、失敗・・・
お風呂上がりでも、手足が氷の様に冷たく、マッサージの為に椅子に座って私の膝にその足を乗せる時に手で持ち上げなくてはならなくなっていたのも、いつからだったでしょうか。
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