未婚の未亡人、泣いたり笑ったり

今は亡き同居人○Tと、未婚の未亡人の珍道中人生

闘病記ー今日も絶好調!

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2006年11月6日(月)〜2007年3月24日(土)
同居人○Tの全てを賭けた、最初で最後の闘病記を、未婚の未亡人の私がつづります。
ぷぷっと笑って、でも時には大まじめな彼の闘病記です。
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2007年3月6日(火)

酸素 +?
放射線 骨の部 6回目

洋服屋の展示会は年に4回あり、大抵はこのころに次の年の秋物の展示会があります。
私が行く展示会は1件だけですが、それをこの日にしたのは訳がありました。

○Tが、仲良しのYKちゃんと川崎大師へ行く事になっていたからです。
それならば、私が少し早く家を出ても、○Tが一人でいる時間が少なくて良いと思っていました。

川崎大師には毎年YKちゃんと節分の前に出かけていました。
今年は、その頃に体調を崩し入院をしていたので、YKちゃんは待っていてくれました。
「『待っている』って言われるのももしかして、オヤジには負担かな? 余計な気を使わせちゃうかな? ねえ、M_ちゃん、どう思う?」とYKちゃんは気を使ってくれていました。

「うん、でもYKちゃんはどうなの?」と私が聞くと
「私はオヤジと一緒に行きたいさ〜」と言うので、
「それなら、『退院するまで待ってる』って言ってあげてよ。」と私は言い、YKちゃんも
「うん! わかった! そうする!」と待っていてくれました。

そして、この日はもう一人、いつものYっちゃんも誘って、三人で出かける事になっていました。
この三人は何故か本当に仲良しで、以前には三人で北海道までスキーに行った事もある位です。
オヤジに二人の女の子(?)のトリオは、周りからはどんな風に見えていたのでしょうか??

私が展示会に行くと、仲良しのその会社の女の子が声を掛けて来ました。
「どう? 何か変わった事はない?」
もしかして、私に疲れが見えていたのかもしれません。 ○Tの事も知っている彼女には、よく○Tの愚痴も聞いてもらっていました。

「Tさんは元気?」と言われ、私は前回の展示会の時にすでに○Tが入院していた事を話しました。

「だからね、実は前回の展示会なんて何つけたんだか、実はあんまり覚えていなかったんだよ〜」と私が苦笑いして言うと、
「そうだったんだ〜・・・どうも様子がおかしいと思ってたんだ〜。 心配だね。 でも、頑張って! まだ先はわからないんだし! 諦めちゃダメだよ!」と励ましてくれました。

展示会場を出てから、すぐに私はメールを入れました。

タイトル「気をつけてね」
「放射線無事終わった? お参り気をつけて行ってね。 私は展示会終わってこれから浅草橋に行く所」

すぐに返事が来ました。
「今 たいしだ。」

どうやら無事に川崎大師に着いている様でした。

私はそこへは一度も行った事はありませんが、確か階段があると聞いていました。
二人のお伴は、そこをあの”ポチ”を持って上り下りをしてくれた様です。

「俺、この車にしてからちゃんと写真撮っていないんだよね〜」と言う○Tの言葉で、Yちゃんは「じゃあ、私が撮ってあげるよ」と言って車と一緒に写真を撮ってもらいます。

「酸素付いてるんじゃ、カッチョ悪いな〜」と言って、その間だけは酸素も外してお茶目に笑っている○Tがいます。

「でも、この後苦しくて慌てて酸素付けたんだよ〜」とYちゃんは言っていましたが、これも又、まさかこれが最後の外での写真になるとは思っていませんでした。


私が家に帰ると、YKちゃんはもう帰ってしまっていましたが、Yっちゃんはまだ家にいてくれて、二人で川崎大師での話をしてくれました。

「Tさんね、お昼は凄く食べたんだよ」
Yっちゃんが嬉しそうに報告してくれました。

「それで、何て言うお札にしたの? まさか商売繁盛じゃないでしょうね〜?」と私が言うと、○Tは貰ってきたお札を見せました。
そこには”病気平癒”と書かれていました。
「で、私のは?」と聞くと、
「これこれ」と出して来たお札には”身上安全”と書いてありました。
初めて見た言葉だったのですが、「相手の事を祈願するのは、これなんだって〜」と○Tは言っていました。

夜はシェフ○TとアシスタントYっちゃんの海老フライでした。
○Tはそれを1本、ご飯はお茶碗に3/4ほど食べると、お腹いっぱいになっていました。

Yっちゃんが帰ってから
「やっぱり長距離運転は疲れるな〜。 無理だな〜、もう」とこぼしていました。

川崎大師までが長距離だなんて・・・私の母の住む伊豆高原迄を日帰りで行っていたのはほんの1年前だったのに・・・・

「そうだね〜、ちょっと遠かったね〜」と相づちを打った私でした。

恒例の川崎大師に行けて良かったね。
久しぶりの楽しいお出かけだったもんね。



実はこの日のお出かけが、最後の楽しいお出かけになってしまっています。

温泉でも伊豆でも、まだ行けるチャンスはあると思っていました。
放射線が終われば、もう少し暖かくなれば・・・・・

ただ、私の中では、放射線の効き目が出るまでに、もしかしたら間に合わない事もあるかもしれない・・・と言う不安を拭いきる事が出来ないでいたのも事実です。

けれども、それでも、私はまだチャンスはあると思っていました。









 

最後の打ち合わせ

2007年3月5日(月)

酸素 +?
放射線 骨の部 6回目

骨への放射線も半分が終わり、この週でおしまいです。
この日は、午後から息子のDを連れて、得意先に出かける事になっていました。

前の日に髪を切ったのもこの為です。
「病人だからって、小汚くしてちゃダメなんだよ。 こうゆう時こそ、きちっとしなくちゃ」と言っていました。

その得意先とは、前から色々と話をつけなければいけない事がありました。
それが11月の入院ですっかり延び延びになっていたのを、ついにこの日にしに行ったのです。
”ポチ”を連れて出かけて行った○Tには、きっと迫力があったでしょう。
キチンと話をつけて来た様です。
今後、息子のDがこれから先、仕事をやり易い様にレールを敷きに行ったとも考えられます。
そして、実際に、この話し合いが、○Tの最後の仕事になりました。

自分がいなくなって、一番心配だったのは、自分の会社の事だったのではないでしょうか。
いえ、会社そのもの・・・と言うよりも、息子Dの行く末だったに違いありません。


ちゃんと話をつけられて良かったね。
でも、まさかこれが最後の仕事になるなんて、私は思っていませんでした。
○Tはひょっとして思っていたのかな?
いやいや、貴方の事だから、そんな風には思っていなかったと思います。
でも、この時に行っておいて大正解だったね。


その話を終えて、○TとDは、二人で夕方の早いうちに又しても武○小○へ寄り、回転寿しに寄ったと話していました。

「あれ? Dってお寿司嫌いじゃなかったっけ? 生のお魚食べないんだよね?」と私が言うと、
「うん、嫌いだったけど、最近は少し食べるんだよ〜」とDは言っていました。

以前に○TがDと一緒に回転寿しに言ったと言う話を私にした時には
「Dとじゃ、回転寿しと言っても凄い金額になりそうだね〜」と笑った私に、○Tが
「いや、あいつとじゃそうはならないんだよな〜、なんたって刺身嫌いだからさ。 カッパと卵で済むから良いんだよ〜」と言っていたのに・・・いつの間に”成長”したのでしょうか?

「親父ね、それで6皿も食べてたんだよ」
Dは、私があまり食べない事を気にしているのを知っていて、一所懸命にアピールしていました。

「こいつなんてさ、あんまり食べられないからって、よく回転寿しでご飯残したりするんだよな〜、 で、上の刺身だけ食べちゃうんだぜ」
と、○TはDに私の回転寿しでの”秘密のお作法”を暴露しました。

「え〜! それは酷いな〜、勿体ないじゃない!」
「な〜、そう思うだろ〜?」
私は二人に叱られてしまいました。
まったく! 余計な事をDに言わなくていいの!

Dが帰ってから、私は夕飯の支度をし始めましたが、○Tは「寿司食ったのが遅かったから、お腹がすかない」と言って、この日の夕飯はパスをしました。

ちょっと気の張る打ち合わせで疲れたのかな?
私はそんな風に思っていました。
いえ、正確には思う事にしていました。

前に放射線を当てていた左のオマケのガンの所にくっきりと、当てていた場所がわかる程、痕が浮き上がって来ていたのはこのころだった様に思います。
それは、まるで定規を当てた様に四角い痕でした。
四角の中だけが、日焼けをした様に黒くなっています。

「は〜、ネットで調べたら、そんな風になるって書いてあったけど、本当になるんだね〜」と感心して私が言うと、「そんなにハッキリわかるの〜?」と○Tも興味津々でした。
でも、脇腹なので、本人には見えないので、つまらなそうでした。

写真でも撮っておけば良かったと、今になって思いますが、実はネットで調べて私がこのころ知った事は、それだけではなく、私にはどうやらそんな余裕がなかった様です。

ただひたすら、毎日が無事である事に必死でした。

布団に入って
「又明日〜」と言って○Tの布団を3つ叩き、明日の無事を祈るのが日課になっていました。

2007年3月4日(日)

酸素 +?

朝の3時頃、一度トイレに起きてから又布団に戻って来た○Tでしたが、7時には起きて、今度は又コタツへ移動していました。

朝ご飯に温めたパンとチーズだけで、あまり元気がありません。
「あれ? 食欲ない?」
と私が聞くと、
「食べてるじゃないかっ! そんなにイジメルなよ!」とかなりの剣幕でした。

びっくりして私が目を白黒させながら、体温計を取ろうとすると、今度は
「熱だって、自分で計ってるよっ!!」

これだけを聞くと、○Tがいきなり怒った様に見えますが、実は私が無言で「もう少し食べなよ〜」と態度で示していたのが○Tに通じていたのでしょう。
○Tがいきなり怒鳴る事などは、昔から慣れてはいましたが、病気をしてからは、ほとんどありませんでした。

「いや、ごめん、ちょっと言っただけだよ」と私が言うと、○Tはしばらくコタツで横になっていました。
そして、私は黙って、自分のお弁当用にお握りを2つ握りました。

後は海苔を巻くだけだ〜と思った所で、○Tはむっくりとコタツから起き上がると「腹減ったな〜」と言って、そのお握りを2つともペロリと食べてしまいました。
「え?・・私のだったのに〜」と口を尖らせて言う私の顔を見て、○Tは笑っていました。

○Tはいつもそうです。
私が何かを言って○Tを怒らせても、それについて弁解の余地を与えてくれます。
この時も、私が意地悪で言った訳ではないと思い直してくれた様でした。
でも、本当はそんな態度を取っていた私にこそ、問題があったのだと思います。
そして、この先も私は気をつけていながらも、○Tに何度か嫌な思いをさせてしまいました。

「もっと食べて欲しい」・・・・それは「もっと生きていて欲しい」と言う私の願いでした。


この日は○Tは、いつもの美容院に髪を切りに行く事になっていました。
私が店に居ると、「今から行って来るね」と”ポチ”を連れて○Tが顔を出しました。
「ねえ、3階まで上がれるの〜? ポチ連れてなんてさ〜。 一緒に行ってあげようか?」
美容院は駅前で、私の店からは普通なら1分位の所です。 かなり急な階段を上がる事を考えると、心配でした。
「大丈夫だよ〜。 ダメなら一度2階で休むからさ〜」
そこの2階の喫茶店も昔からの仲良しです。 ○Tがそこの前で休んでいても、助けてくれる事はあっても文句は出ないとは思いました。

「じゃあ行って来るね」と言って○Tはポチを連れて駅前の方に歩いて行きました。
私は店の外に出て、人ごみで見えなくなるまで○Tの後ろ姿を見送りました。


1時間ほど経って○Tは帰って来ました。

「いや〜〜〜!!!  死ぬかと思った〜〜〜!!」サッパリと短くなった頭で、○Tは笑っていました。

おい! まだそりゃ早いよ!

「もうさ〜、3階なんて上がれないな〜」
「だって、ポチまで付いてるんだよ、体だけでも大変なのに、あったり前じゃない!」

「そうだよな〜・・・ほんと。 上がりきったら、息苦しくて苦しくてさ、ZIに酸素上げて貰っちゃったよ。 口も聞けない位だったんだよ。 ほんと、死んじゃうかと思った〜」
「ねえ、ZIちゃんもビックリしてたんじゃない?」

「うん、ビックリしてた。」
「で、帰りは降りれたの?」

「ZIが酸素持って下まで降りてくれたんだ。 助かったよ。」
「それは良かった〜。 もう大丈夫なの?」

「うん、もう全然平気。 それにしてもな〜、いや〜、ホントにビックリしたよ〜。『今度からは下まで迎えに降りるから、下に着いたら電話して!』って言われちゃった。」

後でこの日の事をZIちゃんに聞くと「ホントに死にそうだったんだから〜、ビックリしちゃったよ〜!」と言っていました。
お騒がせして申し訳ない!

でも、○TはZIちゃんのカットを気に入ってたよ。
髪を染めている頃は、「あいつ、顔に付いたカラーをちゃんと落としてくれてないな〜」とか文句を言いながら、その晩でも頭を洗っていたりしてたけど、カットやシャンプー、そして、男のくせに(?)細かい所まで気配りの出来るZIちゃんの接客にもいつも感心していました。
「耳毛も切ってもらったんだ〜」と私の気づかない所までお手入れしてくれた時は嬉しそうだったよ。
勿論、この最後のカットも気に入ってました。
ありがとうね!
(でも、私の髪を乾かしながら、間違って耳に指入れて「あ、サービス!」って言うのは止めてね、痛いんだから〜!)

2007年3月3日(土)

酸素 +?

前の晩あまり眠れなかった○Tは、朝の5時から起きてコタツに移動し、しばらくするとテレビをつけていました。
心配した私が声をかけると「昨日昼寝なんかしちゃったからな〜」と言っていました。

私が後から起きて行くと、シェフ○Tが朝食を作り始めました。
「今日はホットサンドにしてみよう」と言って、チーズやレタス、ソーセージを挟んで焼いていました。
勿論、私の分もです。
私は勿論美味しく食べたのですが、○Tは「思った味にならなかった・・・」と何やら不機嫌そうです。
食べ終わると、だるそうに又コタツに行き転がっていました。

「今日はMちゃんが来るんだ〜。 こないだ頼んだ眼鏡取りに行くの。」
転がりながらも、○Tはこの日も出かける算段をしていました。

「眼鏡ね〜、どんなの作ったの?」
「ちょっとね、カッコイイんだよ。 渕が上だけなの、色は赤でね・・・」

「渕が上だけ? ん? 良くわかんないな〜」
「帰って来たらみせてあげるね。」

「うん、そ〜してちょうだい。」

私はそのまま仕事に出かけました。

○Tの老眼鏡はこれで3つ目です。
50歳になったばかりの頃に最初の眼鏡を作りました。
私達は眼鏡とは本当に縁遠かったので、初めて作りに行った時に、そのお値段にビックリしたのですが、ずっと眼鏡をしていた母に聞くと「それは安い方だ」と笑われました。

「あ〜、目の悪い人達って、いつも大変な出費をしていたんだね〜」と私達はその時改めて「目が良い」事に感謝をしていました。

その最初の眼鏡を胸ポケットに入れてどこかに落として来て、2つ目を作り、その度が合わなくなって来たので、ついに先週新しい眼鏡を作りに行っていたのでした。

そう言えば、3月3日はおひな様だな〜・・・ああ、私の自慢のおひな様、今年は出し損なっちゃった・・・じゃあ、せめてひなアラレでも買って帰ろうかな〜・・・などと思いながら、帰るコールをすると、「お萩を買って来たよ」と言うので、「この時期にお萩??」と思いながら帰りました。

もしかして、Mちゃんが一緒だったから、他にひな祭りらしいお菓子でも買って来てくれたかと思い、帰ってみると・・・・
「お萩と柏餅買って来たの」と○Tはちょっと自慢げです。

病気になるまで甘い物はほとんど食べなかった○Tが、最初の入院からプリンやゼリー、ケーキなどを食べる様になっていました。
それでも、実は和菓子はまだあまり食べる事がなかったのです。
それが、自分で買ってまで、和菓子を食べようとしていたのが私には微笑ましくて笑ってしまいました。
そう、○Tはチャレンジャーなのです。

「でもさ、なんで柏餅なの?」
「え、おひな祭り・・・」

「あのさ、柏餅は五月の節句でしょ〜」
「あ、あれ? 両方あったんだけど、売り場のお姉さんに『どっちが良いかな?』って聞いたら『柏餅いかがですか?』って言われて・・・」

そこで私は一緒にいたMちゃんに「Mちゃ〜ん! なんで『桜餅じゃないの?』ってそこで言ってくれないのよ〜」と文句を言ってみたのですが、「ん? う〜ん、だって一人で買ってたんだもん。 YMちゃんが(Mちゃんは○Tをこう呼びます)食べたいんだと思ってたから・・・」

「まったく〜・・・でも、ま、良いか」
私達は食後のデザートにお萩と柏餅を少しずつ食べました。
「俺がアンコ食べるなんて、信じられないな〜、もう何十年振りだろう〜」と本人も言っていました。

出来上がって来た老眼鏡は、フレームが上だけの物で、ちょっとシャレた感じでした。
「本当はね、もっと違うのが良かったんだけど、中近両用だとレンズが入りきらなくてさ、これなら下にフレームが無いから、普通よりもちょっと縦が長くなるけど、ちょっとカッコイイでしょ?」と、○Tは嬉しそうに新しい眼鏡を見せてくれました。

「うん、いいじゃん、これ、私にも似合いそうだね。 あ〜、私もやっぱりそろそろちゃんとした老眼鏡欲しいな〜。 作ろうかな〜」
「うん、いいよ、俺が作ってやるよ。 今度一緒に作りに行こうな。」

この日、○Tはどこか痛いとか、そんな事は一度も口にしていませんでしたが、どこか機嫌が悪そうに見えました。
体重は54.7キロと先週と変わりはありません。

お風呂に入って又しばらくUNOをして遊びました。
ちょっと声が出辛くなっていた○TとUNOをする時は、「自分の番だよ」と声を出して言う代わりに、胸をトントンと叩いてお互いにアピールをしていました。
声を出さなくても、目でや仕草だけで充分に遊ぶ事が出来るんだ、とちょっと新しい発見でした。

○Tに残された時間がもうあまりない・・・と私は二人の昔からの私の友人に話を伝えた時に、その一人からこんな言葉をメールでもらいました。
「M_、淡々とね」

見送る方にとっては、これが一番大切な事だったと思います。
けれども、私はまだ自分が「見送る」と言う事についての覚悟は出来ていなかった様に思います。
退院してから、少しずつ落ちて来ている様に見えている食欲が、私には気がかりでした。

2007年3月2日(金)

酸素 +?
放射線 骨の部 5回目

「お腹がすいた〜!」と元気に起きた○Tでした。

「今日は保険のオバハンが来るんだ」と言って、又早めに放射線に出かけました。

○Tの通う病院は、他の科は全てが予約になっていて、予約を入れた日に行くと、受付は診察券を機械に入れ、そこで受診の前に必要な検査などの項目がプリントされて出て来る様になっています。
ところが、放射線治療だけはまるでそれがないのです。
適当な時間に行って、順番にやってくれるのです。
治療の時間自体はほんの10分あるかないかなので、ほとんど待つ事はない様でした。

お昼前位には家に帰って来て、又自分でお弁当を買いに出たと言っていました。
「でもさ、不味くてあんまり食べられなかった」と言って、冷蔵庫にしまってありました。
「それから何してたの?」と私が聞くと
「コタツで昼寝しちゃった」と言っていました。

この晩は私が作ったサバの塩焼き、カブの味噌汁、ご飯、レタスとトマトのサラダなどを少しずつ食べていました。

「お前さ〜、よくカブ買って来るけど、俺本当はカブって好きじゃないんだよ」

え・・・そうだったの??
そういえば、シェフ○Tはあんまり自分では買って来なかったね・・・
でも、前にスープに入れたりして美味しそうに食べてなかった??

自分で買って来たお弁当も、今までは「美味しい」って言ってたはずの物なのに・・・何か変じゃない?

夕飯を食べると又胃が痛いと言い、少し元気がない様でした。
それでもいつもの時間になっても眠くならない○Tでした。
そして、色々な話を始めました。

「抗癌剤って、いつまで続けるんだろう?」
「何故酸素がないと苦しいんだろう?」
「声が出難いのは、どうしてなんだろう?」
「寝たきりになるのは嫌だ」

私はこの質問に何一つ○Tが納得する様な答えは出来ませんでした。

この時だったと思うのですが、「寝たきりは嫌だ」と言った後に、
「余計な延命はしないでね」と○Tは言い、私は「わかってるよ」と笑顔で答えました。
「Dにもそう言ってあるからな。 まあ、お前は大丈夫だと思うんだけど、Dがな〜・・・いざとなったらわからないからな〜、アイツが一番・・・」と苦笑いしていました。

「今日来た保険屋に聞いたら、俺が入っているのは生命保険もあるから、それは会社に入るってさ。 金額聞いて、ちょっと安心したよ。」
「ふ〜ん」
私はまるで興味がない様に答えました。
それが入る時の事は、まだ考えたくなかったからです。
けれども○Tはかなり熱心にそのお金の中から、私が会社に貸していたはずの物を返してもらう様に言っていました。

そして、この少し前から”ガンに効く”と言う玉川温泉が我が家では話題になっていました。
かなり遠いのと、山の奥にあるので、○Tは行ってみたいけど、今は”まだ無理かな”と思っていた様です。
それなら近場でも良いから、どこか温泉に行きたいと話していました。

「でもさ、一人じゃ行けないよな〜、これじゃあ・・・」
「TKZが一緒にって言ってたじゃん」

「そうだけど、本当は皆と行きたいんだよな〜」
「そうか・・皆とね」

「でもさ、皆と一緒に行くんだったらさ、俺少しは皆におごりたいんだよ。 だけどさ、今、お金ないもんな〜」
「うん・・・おごるのは無理かも・・・」

「来週Yと川崎大師に行く約束したんだ」
「うん、聞いてるよ、やっと行けるね。 いつもみたいに私の分もお札頼むね。 今年は何をお願いしようかな〜? 健康祈願? いや、私の健康を願ってもしょうがないんだよね、え〜っと”家内安全”?? いや、これも違うな〜。 ○Tは何にするの?」

「俺? ”商売繁盛”かな〜?」
「はあ〜? ”健康”に決まってるでしょ〜?!」

「だって”繁盛”しないと温泉にも行けないもん」
「”健康”じゃなかったら、”繁盛”もしませんけど〜?」

「う〜ん・・・そうか〜。 まあ、行ってから考えるよ」

この後、○Tは入院している間に、お姉さんのKKさんとお兄さんの奥さんKSさんが私が毎日病院へ通っていた事をほめてくれていたと話してくれました。
「あったり前じゃ〜ん」と私が言うと、
「そうかな?」と、○Tは3年前に亡くなったお兄さんの事を思い出していたみたいでした。
「アンタさ〜、骨折ったとか、盲腸位なら私だって行かないよ〜。 もうさ〜、命掛かってるんだからさ、当たり前でしょ〜」とほめられてちょっと照れくさかった私は力一杯抵抗してみました。
「でもさ、兄貴だって命掛かってたんだよ」
「も〜、うるさいよ〜! アタシが行きたくて行ってたんだから、良いでしょ! もう1時半だよ〜! 寝ようよ〜」

「何だか久しぶりにお前とゆっくり話したな・・・」
そう言われて、私ははっとなりました。
退院して来てからも、私は○Tの体調を気にするあまりに、まるで病院と同じ様なリズムの生活をさせて来ました。
その方が、○Tの体調には良い事だと思っていました。
けれでも、それは○Tにはとっては却って嫌な事だったのかもしれません。

ごめんね。

ちょっと反省しつつ、布団に入ると先に寝てしまったのは、私の方でした。
また明日ね、○T。


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