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滑り込みの今月3本目の記事は、まったくお久しぶりのギター書庫。
今日は音の話なのでオデオファンもどうぞ。
さて、日本の若手ギタリストでは、村治佳織さん、大萩康司さんなどの活躍が目立ちます。いずれも奏者としての技量は高く評価していますが、“ギターらしい美音”という点では、個人的に満足できません。
「甘さ、艶やかさ」が足りないのです。これは私が音楽に求める価値観であり、スピーカーの音の好みと共通するものがあります。もちろん、機能美を最優先する人もあり、何が正解・・・というものでないことは言うまでもありませんが。
本日とりあげるのは谷辺昌央さん。
まずはその演奏ぶりを・・・。クラシックギターとは言っても、ラテン諸国の曲は身近な音楽として気軽に聴けるものも多く、下の動画もそんな一曲です。
谷辺さんについては、ずいぶん前からお名前と力量は聴き及んでいましたが、ブロ友mottoさんが主宰されているギター鑑賞サークルで生の演奏を聴かせていただく機会があり、実感として好印象を得ました。
先日届いたのは、彼のCD『すべての人のための祈り』〜ラテン・フォルクローレの煌めき という1枚で、動画で奏されている「フリア・フロリダ」も収録されています。
気難しそうなアルバムタイトルとジャケットデザインで、商業的には損をしているように思うのですが、旋律の甘さでとろけそうなレイスの「もしも彼女が尋ねたら」やヘンティル・モンターニャのコロンビア組曲2番(この中の「ポロ」は、思わず体がリズムをとってしまうノリの良さ)、フォルクローレの本流とも言えるユパンキの代表曲など、南米音楽の果実が目いっぱい詰め込まれています。ちなみに使用楽器は、2007年製のサンチャゴ・マリンです。
彼の音楽は端正で透明感がありながら、ときに情熱のほとばしりも感じさせる魅力的なもの。とりわけ、高音を美しく鳴らそうとする意思は、私がギターに求めるものと合致して有難し。
美しい音を奏でるギタリストとしては、一昨年早逝された稲垣稔さんがおられたのですが、私にとって、谷辺さんはその枯渇感を埋めてくださる得難い奏者となりました。
余談になりますが、美しい演奏を聴かせてくださる感謝の一方で、谷辺さんのプロフィールに記される「東京大学卒業」には引っ掛かりも・・・。その引っ掛かりというのは、演奏家の経歴に学歴など書くのは野暮だ、というピュアリズムではなく、「親御さん、進路でがっかりはしなかったろうか」という、この歳にして言える余計なお世話なんです。(^^;
というのも、以前から不思議に思っていたことなのですが、名の知れたクラシックギタリストの中には京都大学工学部とか早稲田大学理工学部(理論核物理)など、とりわけ理系の研究者として一流になれたと思われる大学・学部で学んだ人がゴロゴロ。
“末は博士か大臣か”という、秀才に対する期待表現がありますが、ギターは他の人に任せて、研究に没頭した方が・・・と、親御さんの失望だけでなく、国家としての知的損失に結びつけてしまう私は考えすぎでしょうか。
これはギターが、中・高の部活など、他の楽器(ピアノやヴァイオリン)に比べ、比較的高い年齢から始めることの多かった楽器だったことに起因していたのでしょう。
対して、今日の若いギタリスト層は村治佳織さんのように生まれた時からギターが身近に・・・と、他の楽器並みに早期教育をした人が増えつつあり、分岐点で研究者よりギタリストを選ぶというジレンマを抱える人は少なくなっているようではあるのですが。
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