平成21年10月18日(日)DVD ☆4.5 1931年 監督:キング・ヴィダー 出演:ウォーレス・ビアリー、ジャッキー・クーパー、アイリーン・リッチ、ロスコー・エイツ、エドワード・ブロフィー、ヘール・ハミルトン、マーシャ・メイ・ジョーンズ かつては世界チャンピオンだった主人公アンディ(ウォーレス・ビアリー)は、酒と賭博に溺れて今ではすっかり落ちぶれてしまっていた。そんな父を「チャンプ」と呼び慕うディンク(ジャッキー・クーパー)は彼の一人息子である。腕っぷしは強いが意志が弱く、いつまでたっても生活を建て直すことができないこの中年男は、幼い息子のために輝かしい自分を取り戻していこうとする・・・。 1979年に同名でリメイク(フランコ・ゼフィレッリ監督、ジョン・ボイト主演)されていて、おそらくリメイクの方がオリジナルよりも有名だと思う。今回鑑賞したのは1931年のオリジナル版でキング・ヴィダー監督の手によるもの。筋書きの方はリメイク・オリジナルともほとんど変更はないが、演出は多少味付けが異なる感じがする。うまく言葉で説明できないのだが、こちらのキング・ヴィダー版の方が、ストレートかつシンプルで力強い印象だ。 私が今までの映画人生でいちばん大泣きした映画がリメイクの「チャンプ」である。もともと涙腺は弱い方なのだが、特に子役もの・スポーツものはダメだ。どうやっても涙が止まらなかった。映画が終わってもしばらくは泣き続け、鼻をかみ過ぎて痛くなるくらいだった。今なお、まるでパブロフの犬のように、リッキー・シュローダーとジョン・ボイトの顔を思い出すだけで涙腺回路にスイッチが入って瞳の奥がうるうるしてくる。だから、レンタル店でこのオリジナルの方を見つけたときに、借りようかどうしようか逆に躊躇してしまった。 しかし、この映画は私にとって鑑賞しておかなければならない作品だった。なぜなら、小津安二郎が本作から影響を受けているという事実があるからだ。「出来ごころ」とか「東京の宿」とか、戦前の小津作品のうち「喜八もの」と呼ばれる坂本武主演の人情喜劇シリーズには、子ども連れのやもめが登場する。子どもは当時の天才子役である突貫小僧(青木富夫)が演じている。そんな主要登場人物の設定と親子間のユーモラスなやりとりには、この「チャンプ」から翻案されているということらしいので、大の小津ファンとしてはそのあたりを是非とも確かめておきたかった。ということで、少々複雑な心境ながら借りてくることにしたのである。 さて、観終わっての感想。案の定、目の前が涙でかすれて見えなくなるくらいに感動した。ティッシュペーパーの箱半分くらいを一気に消費してしまった。映画館でなくて自宅でよかった。飲んだくれでギャンブル好きのダメおやじでありながら、息子への愛情は人一倍。息子はそんな「チャンプ」が大好きで大好きでたまらないのだ。そういった親子愛をキング・ヴィダー流の冴えた演出力でユーモアを交えながら描き出している。これは家族愛の様々なかたちの中でも特に父親の尊厳について問いかける映画である。父親と息子とのかかわり方の根本は時代を超えても変わらない。そんな普遍的な感動を素直に伝えてくれるのである。当時の小津が多大な影響を受けたというのも納得の出来栄えであった。 DVDの冒頭、淀川さんが、リメイクのゼフィレッリ版も悪くないけれど少し甘ったるい、というようなことを解説していた。だが、私にとってはどちらも甲乙つけがたい仕上がりに思えた。両方とも単なるお涙頂戴作品の域を超えた秀作であると断言できる。
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オリジナルは観てないですね。子役で泣かす手法はチャップリンも使った。。。。
2009/11/2(月) 午前 7:12 [ esu**i123 ]
これは知りませんでした
ジョン・ヴォイトのやつはリメイクだったんですね!
こっちの方がドライな感じですが(記事からのイメージ)
ここだけの話、ヴォイトのやつは淀長さんが言うように
甘ったるくて苦手なんですよね
観たいなーこれ、普通に観られます?
2009/11/2(月) 午前 8:48 [ HK ]
小津さんに影響を与えた作品。気になります。
そこまで、ヒッチさんを感動させ、泣かせた映画。
感覚が近いので、私もそうなるかもしれません。
オリジナルを見たいですが、無理かもしれないので、リメイクの方を探してみようかと思います。
2009/11/2(月) 午後 9:10
これのリメイク版の方は小学生のとき、学校で上映されたものを観た記憶があります。映画を観て泣いたのは生まれて初めてでした。
2009/11/2(月) 午後 11:20 [ てんなん ]
ジョンボイド版しか知りませんでした。
キャスティングで落ちたライアンオニールが悔しくて
同じボクシング映画『メーンイベント』を作ったんですよね
2009/11/3(火) 午前 0:29 [ きらきらくん ]
ヒッチさん、おはようございます
嘗て、此の映画を見た方が涙、涙の連続だったと語っていました。
感動的な映画だったようですが出演者の演技力も好かったのでしょうね。
2009/11/3(火) 午前 5:29
esupai123さん、チャップリンの「キッド」でも、もちろん大泣きでした。父子愛を描いた秀作はサイレント時代からありました。
2009/11/3(火) 午前 5:33
HKさん、こちらのオリジナルの方が30分以上短いので、テンポよく簡潔な感じがしました。このDVDは「淀川長治監修世界クラシック名画100選」というもので入手はしやすいと思います。ツヤタなら比較的大きめの店には置いてあるかもしれません。
2009/11/3(火) 午前 5:39
alfmomさん、機会があればオリジナル・リメイクとも見比べてみられたらいいと思いますが、どちらも基本的なストーリー展開は同じです。リメイクの方が有名ですからレンタル店にはまず置いてあると思います。
2009/11/3(火) 午前 5:42
てんなんさん、学校で上映されていましたか。感受性の強い小学生の時期に観るのと大人になって再鑑賞するのとまた違った感想を持つことができるかもしれません。機会があれば再鑑賞をお勧めします。
2009/11/3(火) 午前 5:47
くろさわさん、そのライアン・オニールのエピソードは全然知りませんでした。興味深い話ですね。「メーンイベント」の方は内容をかなり忘れてしまっているので観直したくなりました。
2009/11/3(火) 午前 5:49
禁断の果実さん、お早ようございます。出演者(特に子役)の演技力もさることながら、脚本自体が優れているんだと思います。リメイク・オリジナルで監督の演出は多少異なりますが、どちらも大泣きさせられる作品です。
2009/11/3(火) 午前 5:52
ジョン・ボイト版で泣かされた記憶があります。
あの頃、病気で死んでしまう泣きの映画が大流行だったような。
「ラストコンサート」「クリスマスツリー」「ジョーイ」なども同じ時代ですよね。
2009/11/10(火) 午後 8:51
懐かしいですね。そういえば「ジョーイ」でも大泣きしましたよ。「ラストコンサート」はどんな映画だったか思い出せないです。おそらく未見だと思います。
2009/11/11(水) 午前 5:44
私はリメイク版しか観ていませんが、リッキー坊やのけなげな姿とラストシーンに涙してしまいました。
ヒッチさんのおかげで、オリジナル版の詳細を知ることができました。
リメイク版ですが、TBますね!
2010/7/3(土) 午前 10:45 [ スコみは ]
リメイク版もオリジナル版もどちらも素晴しい作品でした。こちらのジャッキー坊やの方もリッキー君に負けず劣らず熱演していましたよ。機会があればご覧になってみてくださいね。
2010/7/4(日) 午前 8:21
へぇ〜、小津監督に影響を与えた作品でしたかァ〜。
それは知りませんでした〜。
自分もオリジナルとリメイクは甲乙付け難いです。
どちらも子役が命でしたよね。(笑)
こちらもTBやっときます!
2010/8/21(土) 午後 7:20
Kazさん、どちらも子役の健気な演技には泣かされました。周りの大人がしっかり演技しているから単なるお涙頂戴にとどまっていない。そこが両作品とも素晴らしいところでしょう。機会があればこの映画の影響を受けた小津作品の方をご覧になってみてください。いろんな新発見があると思います。TBありがとうございました。
2010/8/22(日) 午前 7:01