ヒッチさんの映画鑑賞日誌

邦画のベスト1は「二十四の瞳」

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あにいもうと

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平成22年3月1日(月)CS
☆3.5
1953年
監督:成瀬巳喜男
出演:京マチ子、森雅之、久我美子、山本礼三郎、浦辺粂子、船越英二、堀雄二、本間文子、潮万太郎、宮島健一、山田禅二、河原侃二

東京の近郊の田舎の町。両親(山本礼三郎・浦辺粂子)は川べりで小さな商店を営んでいる。そこへ、長女もん(京マチ子)が奉公先の東京から学生(船越英二)と関係し身重で帰って来た。小さな村では彼女を巡る噂話が絶えない。その醜聞のため妹のさん(久我美子)は恋人との結婚をあきらめることになる。荒くれ者の兄の伊之助(森雅之)も腹を立てひと暴れ・・・。

「やな兄貴だけど、あんな顔でも見たくなる時があるからね。」もんの台詞が胸に残る。本作は室生犀星の同名小説の2度目の映画化で、成瀬巳喜男が兄と二人の妹との複雑で深い愛情と葛藤を繊細かつ力強いタッチで描いた傑作と紹介されている。調べてみると、最初の映画化は、 丸山定夫・竹久千恵子主演で木村荘十二監督による1936年の作品だった。その後、何度か映像化されているようだ。

すれっからしのもんを演じた京マチ子は、この映画では兄役の名優・森雅之を凌ぐほどの存在感を示した。男に尽くしながらもその男に捨てられ、身も心もボロボロになって故郷に帰ってくる。自暴自棄な素振りをみせて憎まれ口をたたきながらも、心の平安を家族に求めている。そういったアクの強い役柄をやらせたらこの人は本当に上手い。森雅之とは「羅生門」での共演が印象的だが、本作では兄妹という設定。森は気性の荒い労働者で三兄妹の長男という役柄だ。小さな頃から可愛がっていた妹を孕ませた学生を殴り飛ばす。不器用で力強くストレートなキャラクターを好演した。久我美子の演じたさんは、もんとの対比で、外見は清楚でも一本芯の通った女性として描かれる。

この兄と二人の妹の愛憎模様が物語の中心である。そこに、昔は土地の名士として名を馳せながらも今では落ちぶれて酒ばかりくらっている山本礼三郎の父親や、浦辺粂子のいつものように素朴で人情味あふれる母親が絡んでくる。また、船越英二の学生役はなよなよとしたおぼっちゃま風。真面目というより情けない男だ。成瀬が珍しく大映で撮った映画だから、この人が出演しているのだが、他社の役者でも観察して適役として配役しているのには感心させられる。それぞれのキャラクターの対比が鮮やかで成瀬の演出は実に巧みである。

ただ、見ているうち、伊之助のもんに対する少し偏重した愛情表現にやや腑に落ちないところがあった。さんのことはこども扱いで、もんには感情むき出しの対峙の仕方をする。まるで、伊之助ともんの間には兄妹以上の関係があったのかとも思わせるようなそんな描き方である。タイトルの「あにいもうと」は伊之助ともんとの関係を示しており、さんはその二人を引き立たせるスパイスとしては多少弱いような位置づけである。

しかし、そういったやや不安定で歪な家族の間柄も、つきつめれば成瀬らしいところで、愛するがゆえに愚痴をこぼし、時には罵りあい、それでもなお切っては切れぬ兄妹の深い情愛を丹念に織り込んである。あにいもうと、お互いがそれぞれ自立しながらも、最後の心の落ち着き場所として家族を頼る。だから、もんの台詞が胸に残るのである。
 

閉じる コメント(7)

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浦辺粂子さん懐かしいですね。私がテレビドラマなどで観ていたときは、いいおばあちゃん役しか知らないのですが、この映画だともう少しお若くて、「お母さん」といった感じなのでしょうね。

2010/3/10(水) 午後 7:37 [ てんなん ]

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てんなんさん、私も子供もの頃のテレビドラマではお婆ちゃん役の印象が強いですね。さすがに50年以上前の映画ですから、このころはお母さんでした。でも老けたお母さんですね。昔から老け役が似合うようです。

2010/3/11(木) 午前 5:54 ヒッチさん

久我美子は美人女優って言われてたの?

2010/3/13(土) 午前 8:58 [ esu**i123 ]

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esupai123さん、微妙なところでしょうね。少なくとも現代的な美形ではありませんが、当時は「また逢う日まで」の大ヒットで、国民的女優という位置づけだったことは確かです。

2010/3/14(日) 午前 7:49 ヒッチさん

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この映画好きですね。家族のそれぞれの描き方がうまいです。成瀬監督らしさが際立っていました。私も伊之助のもんに対する愛情は兄弟の愛情を超えているように感じました。TBします。

2010/3/27(土) 午後 10:32 シーラカンス

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いい映画でしたね。こういう家族の在り方を演出させると成瀬は誠に上手い。そういう味わいが分かる年代に差し掛かってきたということでしょうか。TBどうもありがとうございました。

2010/3/28(日) 午前 7:24 ヒッチさん

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シーラカンスさんの記事経由から訪問しました。
最近見ました。
伊之吉のもんに対する近親相姦的な愛は感じられます。
ただ、偏重した愛情表現というよりも、自分が悪者になることによって、他の家族からもんが優しさを得られると思って、無理やり邪険にしたとすれば、それもそうかなと思いました。
そんな深読みは不要かもしれませんね。^^

2013/6/12(水) 午後 2:40 ギャラさん

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