ヒッチさんの映画鑑賞日誌

邦画のベスト1は「二十四の瞳」

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告白

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平成22年6月11日(金)
TOHOシネマズなんば(1300円)
☆4.0
2010年
監督:中島哲也
出演:松たか子、岡田将生、木村佳乃、橋本愛、西井幸人、藤原薫、芦田愛菜、黒田育世

とある中学校の1年B組、終業式後の雑然としたホームルームで、教壇に立つ担任の森口悠子(松たか子)が静かに語り出す。「わたしの娘が死にました。警察は事故死と判断しましたが、娘は事故で死んだのではなくこのクラスの生徒に殺されたのです」教室内は一瞬にして静まりかえり、この衝撃的な告白から物語は始まって行く・・・。(あらすじはシネマトゥデイより)

原作は湊かなえの同名ベストセラー小説で、私は未読である。現在上映中の新作映画の中では、おそらく最大の話題作であろう。この映画、いろんな人の映画ブログで非常に評判がいいようなので見てみることにした。中島哲也監督は、「下妻物語」や「嫌われ松子の一生」で分かるように、独得の漫画のような感覚を活かしたテクニックを持ち味とする映像作家である。だから、できればDVDよりも劇場のスクリーンで確認しておいた方がよかろうと思ったのである。あまりネタバレしないように感想を書いておきたい。

さて、見終わって・・・、いやあ強烈だった。登場人物の誰一人として共感できる先がないのに、全く救いのない展開なのに、物語にグイグイ引き込まれてしまう。これは原作のせいなのか、それとも中島監督の演出術のなせる技か、あるいは松たか子の迫真の熱演のせいだろうか。2時間があっという間で、映画が終わった後、どっと疲れて私は大きくため息をついてしまった。

いい映画というのは、犯罪映画であっても、バイオレンスであっても、犯人や悪役にも感情移入できるように作られている。時には警察や被害者よりも犯人に肩入れしてしまえるような魅力的な人物像を描き出している。ところが、この映画はそうではない。導入部こそ、松たか子演じる森口先生の淡々とした身の上話の告白に同情し、罪のない幼い女児の命をまるで虫けらをひねりつぶすかのように亡きものにした犯人Aと犯人Bへ対する嫌悪や憎悪の感情が湧きおこってきたが、事はそんなに単純ではない。

いじめ、過保護、モンスターペアレンツ、心の病、KY、引きこもり、ケータイ、ネット、未成熟、個人主義、無関心・・・。このクラスは壊れている。いかにも現代教育現場の負の部分を寄せ集めながら、スタイリッシュな映像で淡々とつないでいく。今回は派手な原色でなく、少しトーンを押さえ目にしているのが返って効果的。ところどころ、目を背けたくなるような暴力描写も含まれているのだが、流れる血の色が鮮烈な赤でなくてどす黒いのが印象的だ。担任の先生は美人で熱血教師もイケメン。生徒たちもアイドル雑誌から飛び出してきたような粒揃いの37人。徹底的に映像美にこだわっている。

しかし共感できない。それがこの映画の個性的なところであって、まるで「新世紀エヴァンゲリオン まごころを、君に」のようだ。森口先生の「な〜んてね。」という台詞は、アスカの「気持ちわるい。」に通じる。ただ、安直にエロ・グロ・残忍に逃げていない。伏線の張り方や、全体のバランスや構成が絶妙で緊張感をしっかり持続させている。

映画だからデフォルメして作られているわけであって、現実にはこんな中学校もこんな教師も生徒もあり得ない。共感はできないが何故だか理解はできる。ああ、そんな自分が怖い怖い。劇場は20代くらいの若い人であふれていた。女性客が多いのも少し意外だった。R−15指定の映画だけれど、現実の13歳が見たらどう思うのだろう。今ドキの中学生ってヘンな子ばかりでないはず。ぜひ彼ら彼女らの感想を聞いてみたいと思った。




●タイトルは同じでも映画とは全く関係ありません。好きな曲です。
 中島監督の次回作には、是非この曲を映画化して欲しいと思いました。
 

閉じる コメント(32)

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alfmomさん、もし機会があればご覧になった方がいいと思います。alfmomさんの感性には響くところが間違いなくあると思います。昨年の作品なら筋書きやプロットは全く異なりますけど「母なる証明」に近いです。というより、韓国映画の匂いがしますよ。

2010/6/14(月) 午前 0:18 ヒッチさん

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たんたんさん、スゴイ映画でしたね。竹内まりあの曲は箸休めのつもりで記事に付け加えました。決して好みの映画ではないのですが、完成度の高さはさすがに中島演出ですね。R-15は必要無しと思います。今ドキの中学生はちゃんと理解できるでしょうから。

2010/6/14(月) 午前 0:22 ヒッチさん

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サムソンさん、おっしゃるとおり、構成が非常に巧いです。だからズシリとくるんですね。この監督の映像センスには最後まで引き込まれてしまいました。

2010/6/14(月) 午前 0:25 ヒッチさん

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メロディさん、「ぱちん」でしたね。人生は壊れやすくはかないものなのです。映像にするとこの映画のような感じでしょうか。原作にかなり忠実なんですか。ますます興味が出てきました。

2010/6/14(月) 午前 0:27 ヒッチさん

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kenさん、意外な復讐の手法はサスペンス的な要素も取り入れながら、プロットの中で評に上手く活かされていました。人間の弱さ=誰でも持つ負の部分、そこを刺激してくれる作品だったと思います。

2010/6/14(月) 午前 0:30 ヒッチさん

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くるみさん、ますます原作に関心が出てきました。いずれ読んで比べてみたいと思います。さて、原作は映画に勝てるでのでしょうか。反対かな。映画は原作を凌いでいるのでしょうか。

2010/6/14(月) 午前 0:33 ヒッチさん

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のびたさん、この映画の優れているところはそこなんですよね。見る人の(誰でも持っている)負の部分を刺激しているんです。中島マジックと松たか子のコラボが見事でした。

2010/6/14(月) 午前 0:35 ヒッチさん

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もっさん、大人もこどももどこかヘンなんですけど、もしかして自分の身近で現実に起こり得るかもしれないと思わせるところがありますよね。そこがこの映画の怖いところです。

2010/6/14(月) 午前 0:37 ヒッチさん

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HKさん、評判どおりの衝撃作でした。中島監督はもともとはテレビCMの人だから、映像の作り方、見せ方が非常に巧みです。私は中島演出は好きとか嫌いとかでなく、いつも面白いと思います。

2010/6/14(月) 午前 0:43 ヒッチさん

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esupai123さん、そんな少年Aでも、「昔はワルだったなあ。」と振り返る時期が来るんですよ。30年後くらいにね。

2010/6/14(月) 午前 0:45 ヒッチさん

母親殺しを強要されても?!元担任が死刑囚でも?!
マトモな就職先は無理だ。人生終ってる。再犯の可能性大だろう。30年後くらいにね・・・前半30分以後が悪すぎる。無理に引きのばしてるが、生徒虐待エンタメとしてはなかなかだろうwww

2010/6/14(月) 午前 7:36 [ esu**i123 ]

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たしかにここまで特殊な状況だと無理かも・・・。でもちゃんと反省して罪を償ってもらいたいと思います。理想論かもしれませんけどね。

2010/6/15(火) 午前 6:02 ヒッチさん

水曜日の夕方に行ったら、まわりはほとんど女性客ばかりで、女性デーだと気がつきました。
あまりのすごさに、エンドクレジットで席を立つ観客がほとんどいませんでした。
いやあ、すごい。

2010/6/25(金) 午前 1:29 [ 鉄砲弥八 ]

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鉄砲弥八さん、強烈な映画でしたね。原作ファンに女性の方が多いというのもあると思います。私は未読ですが、映画も小説もどちらも見たという人は周りにけっこういますよ。

2010/6/25(金) 午前 4:28 ヒッチさん

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コメントはいろいろあって、原作は気持ち悪いとかあるでしょうが、いまのところ邦画では一番のお勧めで、観ないと損という映画でした(笑)。TBお返しします。

2010/6/25(金) 午前 6:46 fpd

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fpdさん、確かに見ないと損という映画でしたね。はやくもこれを今年の邦画のベストワンに考えていらっしゃる方もいますね。TBどうもありがとうございます。

2010/6/26(土) 午前 6:09 ヒッチさん

登場人物の誰一人よく洋画で言う「アメリカの良心」みたいな
人間がいない。それが学校と言う箱の怖さのようでした。
TBしますね〜

2011/1/29(土) 午後 4:33 pony

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ポニーさん、映画だからこんなデフォルメもあっていいと思います。現代教育現場の問題点を浮き彫りにしつつもエンタテインメントに徹している。実に怖い映画でした。TBありがとうございます。

2011/1/30(日) 午前 7:56 ヒッチさん

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原作を読んでいても、最後まで惹きこまれました。かなりデフォルメされていますが、少なからずありえるような気がしました。お返しTBしますね。

2011/2/26(土) 午前 7:21 シーラカンス

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シーラカンスさん、原作と比較された方の話を何人かから聞いたことがありますが、原作とはまた違った面白さがあったという意見が多かったです。この監督の演出力のと役者の演技力の高さの証明でしょうね。TBありがとうございます。

2011/2/27(日) 午前 7:48 ヒッチさん

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