平成23年2月20日(日) シネ・ヌーヴォ(1000円) ☆4.0 1970年 監督:ベルナルド・ベルトルッチ 出演:ジャン・ルイ・トランティニャン、ステファニア・サンドレッリ、ドミニク・サンダ、ピエール・クレマンティ、ガストーネ・モスキン、ジュゼッペ・アドバッティ 若い哲学講師のマルチェロ(トランティニャン)は少年の頃、彼を犯そうとした男を射殺した罪悪感に今もさいなまれていた。その苦しみから解放されるためファシズムを選択した彼に、パリ亡命中の恩師である教授を調査するよう密命が下る。ハネムーンを口実にパリに赴いたマルチェロと妻ジュリア(サンドレッリ)は、快く教授に迎え入れられた。だが、恩師の若妻アンナ(サンダ)には目的を悟られてしまい、敵意を抱かれると同時に深い仲にもなってしまう。やがて、別荘に向かう教授夫妻は、マルチェロの目前で暗殺されるのだが……。 “体制順応主義者(原題)”のいびつな生き方を、ベルトルッチはなめらかな官能で包み込み、深い余韻を与える。雪の森での暗殺シーンなど映画史に残る美しさだ。(あらすじと解説はallcinemaより) これは美しい映画だった。青みがかった色合いが美しい。白と黒のコントラストが美しい。女優も男優も役者が美しい。ファシスト支配下のローマとパリが舞台である。ベルトルッチの最高傑作と評されることもある本作。何故だかこれまで見る機会がなかった。個人的には「ラストタンゴ・イン・パリ」こそベルトルッチの最高傑作と考えているのだが、本作も決して負けていなかった。今回、シネ・ヌーヴォの「映画の國名作選 イタリア編」にて上映されていたので、喜び勇んで見に行ったのである。 少年時代の、同性愛と殺人という異常な体験、精神病院に入院している父、薬物中毒で使用人の運転手と関係している母。これらの異常な環境から、大人になってからの主人公マルチェロの精神状態は非常に歪な状況にある。とても40年以上前の映画とは思えない。映像が洗練されている。わざと斜めに撮った構図や切り返しショットの転換のモンタージュ。とにかく巧い。映像の迫力に圧倒される。 特に印象的だったのは女性同士のダンスシーンと集団でのダンスシーン。ダンスの輪にとりこまれる主人公。そして何より暗殺シーンでのアンナ(ドミニク・サンダ)の鬼気迫る様相。雪深い森の中、名も知れぬ複数の暗殺者に教授が殺戮される。それを自動車の中でじっと見つめるアンナ。殺戮が終わると車の後部座席のマルチェロに窓ガラスを叩きながら何かを訴える。悲痛な訴え。対するマルチェロの無表情さ。歪んだ彼には暗殺すらできなかった。逃避することしかできないマルチェロ。森の中を逃げまどうアンナ。アンナも教授の道連れになって殺される。 そして終幕、ムッソリーニの失脚とファシズム政権崩壊の夜にマルチェロは盲目の友人といっしょに街に出て、少年時代に自分と性交を持った男と出会う。自分が射殺したはずなのに。そして、「こいつはファシストだ!」と叫ぶ。反ファシストの教授暗殺の指令を受けた主人公の“体制順応主義者(原題)”の苦悩を、ファシズムの崩壊とともに自らの価値観が崩れたとき、少年時代のトラウマの真実が明らかになるというからくり。日本語タイトルよりイタリア語の原題の方がピッタリくる。めくるめく美しい映画だ。
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うう〜、これは公開時に観て、その後何度も観ました。
少女の頃はただただドミニク・サンダの魅力にハマり、背景などわからないままでしたが、何度も観ている内に、映像マジックに隠された人間模様にわくわくしました。
2011/3/2(水) 午前 6:45
未見ですね。ドミニク・サンダは女性に人気あった。どちらかというと怒り顔だよね。
2011/3/2(水) 午前 7:33 [ esu**i123 ]
しばらく観てないですが大好きな映画です
やはりストラーロのキャメラワークですよね
コレでノックアウトされて以来虜になんです
『暗殺のオペラ』も『ある愚か者の悲劇』も
美しいですよ
2011/3/2(水) 午前 11:08 [ HK ]
ドミニク・サンダ。とても美しい人だと思っていました。
この作品にも出演しているのですね。
映画史に残るほどに美しい「雪の森での暗殺シーン」など、
見てみたいです。
2011/3/2(水) 午後 9:43
『暗殺の森 (Il Conformista)』ではタンゴを重要な場面に使われていますが、『ラスト・タンゴ・イン・パリ』も然りですネ。ベルトリッチはタンゴ狂みたいですネ。女性同士のタンゴを踊る場面には官能的な要素が倒錯して鮮やかでした。
2011/3/2(水) 午後 10:03 [ ホワイトルーク ]
メロディさん、映像マジックに隠された人間模様こそこの映画の見どころというわけですね。見返すたびに再発見がありそうなそんな映画です。私も機会があればまた次回2度目の鑑賞をしようと思います。
2011/3/3(木) 午前 5:36
esupai123さん、ドミニク・サンダは男性にも人気があったと思います。当時はロードショーやスクリーンなどの映画雑誌で人気ベストテンに必ず入ってましたね。
2011/3/3(木) 午前 5:37
HKさん、カメラワークだけでなく映像的に何か独特の処理をしているんじゃないでしょうか。この映画の色調の美しさは特筆ものでしたね。なお、その2作は未見です。是非見てみたいですね。
2011/3/3(木) 午前 5:40
alfmomさん、暗殺シーンもそうですが、上の写真のドミニク・サンダがステファニア・サンドレッリとダンスをするシーンの美しいこと。また、トランティニャンもまた美しい。俳優の魅力と洗練された映像美が楽しめる映画でした。
2011/3/3(木) 午前 5:43
ホワイトルークさん、ご指摘の通りだと思います。タンゴを取り入れたはこの監督の嗜好もしくはこだわりでしょうか。タンゴの音楽が見事にマッチして官能的な映像表現だったですね。
2011/3/3(木) 午前 5:48
ドミニク・サンダとステファニア・サンドレッリの妖しい雰囲気が印象に残っています。ジャン=ルイ・トランティニャンがクールでした。
ドミニク・サンダは、なんといってもデ・シーカの「悲しみの青春」ですね!
2011/3/3(木) 午後 0:57
fpdさん、この当時ドミニク・サンダは日本でも大変人気がありました。非常に美しく撮られていましね。私はデ・シーカの「悲しみの青春」は未見です。ぜひ見てみたいと思います。
2011/3/4(金) 午前 5:42
お忙しい中、わざわざコメントありがとうございます。
体制順応主義者の情けない主人公のラスト。すべてのシーンに胸騒ぎが充満している映画、いいですね。TBさせてくださいね。
2011/8/1(月) 午後 10:17
シーラカンスさん、官能的で残酷で退廃的でスタイリッシュなカメラ。いい映画ですね。特にタンゴのシーンと暗殺シーンの画面が綺麗でした。主人公の内面についてはいろんな解釈ができそうです。
2011/8/29(月) 午前 5:25