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Oxford(大学都市)
Stratford-Upon-Avon(シェークスピアの生地)
『中古車の修理』 1985年11月03日
昨日の土曜日、天気も好く絶好の旅行日和だった。Oxfordへ行くつもりで朝九時にホテルを出発した。ハイウエーに入る前にタイヤの空気圧や潤滑油を点検し、ガソリンを満タンにした。Oxfordはロンドンの北方にあるが、南にあるM5ハイウエー(ロンドン環状道路)に向かう。一般道路をロンドンに向かったのでは時間がかかる。ハイウエーは時速130キロで走れるし、渋滞もない。
ロンドンは緯度も高いため太陽の角度が、冬季は特に低い。正面から差し込む太陽が眩しい。英国では少なくとも一家に一台車を持っており、庭があっても道路が広いので住宅地内の道路は駐車場代わりになる。その車の多いことに驚かされる。日本と違うところは、市内の繁華街を除いて、一歩郊外に出ると意外に空いていて、まず渋滞はない。
今日は、一緒に駐在している三人を乗せているので、アクセルが重い。出発前に皆で車を洗うことになっていたのに、若い者たちが手伝おうとしない。前日皆で車を洗うことを伝えてあったにも係わらず、一人は二日酔いだとぬかすし、もう一人は寒いといって出てこない。「ガソリン代を払えばいいんだろう」程度にしか考えていないようだ。私が車の整備をしている中に、もう一人の中年の人が車を綺麗に洗ってくれた。終わった頃、若い二人が「寒い寒い」といいながらホテルから出てきた。文句はいってみたが、何の効き目もない。興奮してはこれからのドライブに差し支えると思い、それ以上の小言はやめた。その代わり、ガソリン代を後で徴収する時に洗車代も余分に貰えばよいと、その場は知らん顔をした。スタンドでの洗車代は£1(約400円)。
ハイウエーも空いている。M25 も快適だ。M40 も気持ち良く流れている。ハイウエーは無料。長距離の旅行にはガソリン代だけで済むので有り難い。一時間半で Oxford に到着した。シェークスピアの故郷であるStratford-Upon-Avonにゆきたいという希望者が多かったので、西に向かって約40分走った。
Stratfordに着くと、意外に多い観光客に驚かされた。Stratford は小さな落ち着いた観光都市という感じがする。まずシェークスピアの墓のある古びた教会を訪ねた。風があり冷たかったので、土産物屋に入った。錫銅合金のビールのジョッキを£13 (\4300) で買った。その他絵葉書と町の説明書も買った。コーヒーを飲んでいると2時半になってしまった。もう帰路につかねばならない。英国は10月27日より冬時間に切り替わり一時間遅くなった。夏時間のままだと真冬では二時半には夕闇が迫ってしまう。このヨーロッパ時間についてホテルのメイドに意見を聞いてみると「馬鹿げている」と言う。「多分、伝統や歴史に固執する官吏や学者がその存在を誇示するためにそうしているのだろう」という。「一時間遅らせる必要が現実に必要かどうか分からないが」と私も同調した。
働くことより生活を楽しむことの好きなヨーロッパ人には、早く暗くなると戸外で楽しむ時間が少なくなり、屋外での労働の能率が落ちると考えるのは早計かも知れないが、多分当たっているだろう。暗くなるのが早くなると、土曜・日曜の行動に大いに影響する。ゴルフは四時までしか出来ないし、観光は早めに切り上げなければならない。しかし『郷に行っては郷に従え』の喩えどおり気にしないことにした。
英国は、イングランド、スコットランド、ウエールズに大別出来る。イングランドの殆どの地層は、ヨーロッパ大陸と切り離されたので四億年以上と古く、ブラジル大陸と同じように、1〜2km毎にゆるやかな起伏がある。年間雨量は日本の半分と多くはないが、緑の原野と立木があちこち見え隠れする。原野には牛や羊がのんびりと草を食んでいる。川らしい川は殆ど見当たらない。かといって、乾燥しているわけではない。曇り空が多いので、地表はいつも湿っている。やはり田園風景はターナーの絵画のように素晴らしい。このような風景を手軽に眺められるのも自動車だから出来る。車の中は外の寒さとは無関係で、この季節はドライブに限る。英国の天気はいつもぐずつき、時々雨が降るという観念があったが、時にはそんな考えが間違いであったと感じさせるような晴天が続くこともある。
翌日、独りで11時頃ホテルを車で出発し、リッチモンドパークへ出掛けてみた。二日ほど晴天が続いた。公園は縦横5kmもあり、中央に大きな池がある。鴨、白鳥、かもめ、バン等の水鳥が多い。見物人がパン屑を投げたり、人懐っこく手から餌をとったりしている。木立の中や水辺で写真を撮り二時間ほど過ごした。今日は、久し振りに食料の買い出しに行きたかった。日本の食料品はロンドンの中心街で売っているが、初めてのロンドン市内へのドライブで道に迷うことを覚悟で出掛けた。公園からSuttonへ引き返し、電車に乗り換えて行くのが安全な方法なのだが、車でこのまま行けば十分足らずの距離にあり、どうしても車で行ってみたかった。まず地図をしっかりと頭にいれた。走ってみると意外に簡単だった。インスタント食品を主に、約30ポンドの買い物をした。寿司もあり、夕飯は久し振りに日本食になった。ほうじ茶を入れ寿司を頬張る。醤油と酢付けのショウガの味を楽しんだ。これで二日間の休日は終わった。
来週はタイヤを取り替え、故障している温度計を直し、紛失したオイルキャップを取り付けてもらうよう頼むことにしよう。多少の出費を惜しんで命を無くすようなことがあってはいけない。£150 は覚悟せねばならないだろう。仕事も遊びも楽しみながらやりたいものだ。 もう夜の11時を過ぎた。シャワーを浴びて寝る時間だ。多少疲れが残っているが、体重は増えているような気がする。他に娯楽がないので、仕方なく毎晩テレビを観ている。Take-Away(持ち帰り店)で中華料理を買い、電気釜で御飯を炊く。ホテルの部屋に備え付けの電気ポットで湯を沸かしインスタント味噌汁をすする。簡単な炊事やTake-Away での買い出しも含め一時間は必要で多少気が紛れる。毎日が、あっという間に過ぎてゆく。
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ロンドン滞在記
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