「伊福部くん、どう、今度、早坂って男と会ってみない?」 「どんな人ですか?」 「君と同じ年齢で、北中の出身だよ。今は日の丸舞踊団でピアノを弾いてるそうだ。早坂くんは作曲もやっててね。金魚を見ても楽想が湧いてくるんだそうだ」 この一言が伊福部の興味を誘った。 伊福部は絵画にも興味があった。札幌二中では「めばえ画会」という絵画グループに入っていたほどである。絵を見ると音楽の発想が湧くというのは、音楽と同じく絵画が好きな人間に違いない。 ひょっとすると、自分と同じ興味をもった人間かもしれない。どんなタイプの人で、どんな音楽が好きなのだろう? まあ、会ってみようか。そんな気軽な気持ちで顔を合わせたのである。 「早坂です」 相手の男はぺこりと顔を下げた。背は高いが、痩せて浅黒く顔色はあまり良くない。しかし何とも飄々とした感じのする人だ、と伊福部は第一印象をもった。 学校の話から、音楽の話に話題は移った。 「え、君はドビュッシーに関心があるの?」 伊福部は驚いた。当時はドイツ音楽が主流で、ドビュッシーを知っている人間など、自分の周りには皆無といっていいほどいなかったからである。 「かじってるだけなんだけど、大好きなんだよ。君も?」 「僕はラヴェルが好きなんだが、ドビュッシーの音楽ももちろん素敵だね」 それから話は一気にはずんだ。それまで自分の貯めていた思いを吐き出すように、ドビュッシーのこと、音楽のことを、夜のふけるまで延々と話し込んだ。 自分の思いを受け止めてくれる人がいるということは、何と素晴らしいことだろう。若い二人は、そんな気持ちを素直にもてた。 『黒澤明と早坂文雄<風のように侍は>』(西村雄一郎・筑摩書房) 「自己に忠実であれば、必然的に作曲家は民族的であること以外に、ありようはない」 すでに以下投稿した記事タイトルで、おおよそは言い尽くされていると思うのだけれど。 http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/62422019.html 伊福部昭の芸術5『楽 協奏風交響曲/協奏風狂詩曲』。落語『寿限無』の「パイポ パイポ パイポのシューリンガン」に聞こえてしょうがない心的高揚もたらす執拗な拘りのオスティナート。 http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/57192882.html 伊福部 昭『宙(ちゅう)・SF交響ファンタジー』(1995)。「自分の作品リストからは削りたい。」たぶん本心でしょう。民族派たるの古色蒼然とした、しかしスケールのあるオーケストレーションは愉しめる。 http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/43003543.html 強烈な沸き立つ民族(民俗)感性のほとばしりをオスティナートの高揚に聴く伊福部昭の『ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ』(1961) http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/36422284.html 伊福部昭の<信>を聴く「タプカーラ交響曲」(1955)と「バイオリン協奏曲第二番」(1978) 『譚 ― 伊福部昭の芸術1 初期管弦楽』 2. 土俗的三連画 (1937) 3. 交響譚詩 (1943) Akira Ifukube - Ballata sinfonica 1Mov. 伊福部昭 - 交響譚詩 (1943)(第1譚詩)
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