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もともと高くない読書用のアンテナが以前にも増して低くなってしまってから、新しい作者さんの開拓や本との意外な出会いをする機会がこの2年くらい減っていました。
本屋大賞のノミネート作品は、10作品ほどと数もそれほど多くなく、なおかつ全国の書店員の方の目利き?で選ばれた本なので、そんなアンテナの低い自分にとっては本を選ぶときの参考になります。
今年のノミネート作品は11作品。ノミネートされる前から図書館で予約待ちのもの、普段は絶対に自分では選べないような傾向のものもありました。作品は11だけど、上下巻や3部作のものもあり、しかも分厚い。選考する書店員泣かせだというTLを見かけたのも納得。
間もなく大賞の発表があるそうですね。(確か、4月9日)
まだ入手できなくてノミネート作品全作品を網羅できてはいないけれど、読んだ順に感想をまとめてみました。
長くなりそうなので、まずは3作品。
『楽園のカンヴァス』原田マハ
アンリ・ルソーの絵画の真贋を見極めて欲しいと、伝説の美術コレクター、コンラート・バイラーから招かれた二人の研究者、MoMAのアシスタント・キュレーター、ティム・ブラウンと日本人研究者の早川織絵。彼らはその邸宅でMoMA所蔵の「夢」と酷似した作品「夢をみた」と対面し衝撃を受ける。そして真贋を見極めるヒントとなる、ある書物を毎日1章ずつ読み、7日めに真贋の講評をするよう依頼される。彼らはそれぞれに抱える事情に悩み、書物の内容に心動かされながらも、決断のときは近づいていくのだか…。
本を置くのも忘れて一気に読んでしまうほど吸引力がものすごい勢いの作品に久しぶりに出会った。 アンリ・ルソーについては何一つ知らなかったけど絵は見たことがある。 その程度の美術に決して詳しくはない自分だが、キュレーターや監視員、美術館の運営や企画展のからくりなど美術業界のことが分かりやすく描かれていてすんなり物語に入っていけた。近代美術が好きな人には特にオススメ。 ほかの作品でも作家が業界について詳しくリサーチして様々な職業の人々を描くのはよくあるし調査が徹底的だったり表現がリアルだったりあるいはその両方で「巧く」描けてると感じる作品は多いけど、この作品の場合は単に巧いなんて言えない、それ以上の著者の情熱を感じる。美術に関わる仕事に携わる登場人物、ルソーやピカソなど実在の芸術家たち、さらには「絵画」そのものに対する著者の並々ならぬ熱い愛に溢れていて、ただ事ではないほどにグイグイ気持ちを持っていかれた。 特に作中作であるルソーをめぐる芸術家や当時を生きるフランスの人々の物語に心奪われた。売れなくてもひたむきに描き続けるルソーの生真面目さ、若きピカソの豪胆さ、ルソーに思いを寄せられる若い人妻ヤドヴィガと夫のジョゼフがルソーの絵に触れるにとともに変化していく様が興味深く、最終章は胸が熱くなること必至。そして高齢なコレクターがあの人だったなんて…。 作中の言葉にも心を動かされた。 例えば“アートを理解するということは、この世界を理解するということ。アートを愛するということは、この世界を愛するということ”。 “この作品には、情熱がある。画家の情熱のすべてが。…それだけです”。 これから絵画や芸術作品と向き合い鑑賞する機会があったら、この言葉を思い浮かべたい。 芸術が持つ魅力を言葉で昇華し伝えてくれたこの作品は、文句なしの五つ星★★★★★!! 『百年法』山田宗樹
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大戦で原発6発落とされ壊滅状態の日本。そこに米国発の不老技術と「百年法」が導入された。不老化した者は次世代へ道を譲るべく百年後に基本的人権を全て失う…即ち死…。パラレルワールドの日本だが、抱える問題は現代の日本に通じる。超高齢社会、少子化、保身政治家ばかりの政治不信、経済難。どこまでもストイックな官僚に好感が持てる。彼はこの世の中をどう変えていこうとするのか?国民の選択は?重大な転機をサクッと飛ばして後日談にしてしまう語り口は、はしょりすぎな気がしてはじめは馴染まなかったけど、このボリュームなら止むを得ないかな。終わりなき不老化社会はどうなってしまうのか。あっという間に下巻へ。
国政は大統領の独裁により歪み、百年法から逃れて密かに生き続ける「拒否者」たち、大統領許認可を受けて政界にしがみつく不老政治家たちが増え、大きな社会的歪みは日本を衰退の一途へ。そして謎の奇病が流行り始めた…。
上巻では文章に違和感(芝居の台本みたいで雑)があったがそれも気にならなくなるほどに、ストーリーが力強くてページをめくる手が止まらなくなった。下巻では、不老化手術を受けずに拒否者らと生きるケンと、大統領を補佐しつつ国難に立ち向かう遊佐を中心に物語が展開。死が当たり前でなくなったら人間はどうなってしまうのか。どこまでもストイックで私情を挟まず、国のためなら自分の評判を落としかねない決断をできる遊佐の政治家としての行動、言葉は、今の日本に切実に必要だと感じた。最終章で彼が語る言葉に著者の主張が強烈に反映されている。この膨大なストーリーは全てこれを語るために用意されてたんだなぁ。 読後しばらくはこのパラレルワールドで受けた衝撃の余韻に浸って考えてしまったので星4つ★★★★。 『屍者の帝国』伊藤計劃×円城塔
屍者を動かす技術が確立し労働力として人々の生活に欠かせない存在となった19世紀末、「屍者の帝国」を調査するためイギリスからインドへ派遣された諜報員ワトソンが目にしたものは…。
本屋大賞にノミネートされた作品なので手にとった、初めての作家。遺作に友人の芥川賞作家(だっけ?)が追記した作品ということで話題になったそう。19世紀に活躍した歴史上、作中の人物たちには馴染みがあるし(マイクロフト・ホームズが英国諜報機関のMだったり)、「ドラキュラ紀元」を彷彿とさせて、19世紀末の英国という時代背景は自分好みだし冒頭はなんだか面白そうな書き出しだったけれど、全体的に冗長でくどく途中で飽きてしまい自分には合わなかった。好きな人にはうけるんだろうけど…。これが大賞とったらガッカリだなぁ。言い過ぎかもしれないけど星は★★。
しょっぱなから、かなり評価に差がでてしまった…。これはこれで貴重な体験。
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こんばんは!
「楽園の・・」は前から気になっていました♪
TEAさんの記事によりさらに読みたい気持ちがグンとアップ!!
面白そうですね〜。
読みたい本がたまっていますが絶対に読まなくちゃ。。
2013/4/6(土) 午後 7:41
RINさん、こんばんは☆
久々の更新でご無沙汰しているのにコメントくださってありがとうございます♪
そうですか!さすがRINさん、アンテナ高いですね。
私は本大にノミネートされるまで全然知りませんでした。
8割のノミネート作品を読みましたが、密かにこの作品に大賞を取ってほしいと思っています(*^。^*)
2013/4/7(日) 午後 10:36