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本屋大賞ノミネート作品11作品のうち、現在8と2/3作品を読了。残すは2と1/3作品。
と、ここで、図書館に予約していた宮部みゆき著『ソロモンの偽証第Ⅲ部』と冲方丁著『光圀伝』が、
同時に順番が回ってきた。喜び勇んで取りに行ったが…たった2冊なのに4〜5冊分の重量感
大賞発表までの全作品制覇は無理でも、どっちから読むか悩む〜。
気持ちは逸るけど上滑りな読み方はしたくない。どっちも楽しみだったからなぁ。
『64』横山秀夫
間も無く時効をむかえる幼女誘拐殺人事件。D県警広報室の三上は、その事件の遺族に警察庁長官が訪問する段取りを命じられる。事件当時担当していた三上は複雑な心境のまま訪ねるが…。
「刑事部」対「警務部」、「中央」対「地方」の構図が複雑に絡み合う様が、刑事畑の長い広報官三上の葛藤を通して描かれているところがうまい。もやもやする葛藤のなかで自分は何をすべきかを見つけるのはなかなか難しい。組織内で自分の属する場所を意識するのは当然だが、それに縛られて思考が停止してしまうことは危険だなと感じた。 余談だけど、真犯人…なんとしても落として欲しい。三上の娘…どうなったんだろう。 隠蔽が表沙汰になった県警のその後(三上の対応)も含めて後日談があれば(無いと思うが)読みたい。 久しぶりの横山さんの新刊だったけど、ほかの作品ほどのガツンと感が足りなかったので(ひどい理由)、
星4つに近い、星3つ★★★。
『海賊とよばれた男』百田尚樹
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石炭が主要なエネルギー源だった時代。石油が次世代の新たな重要燃料資源となるとの展望をいだいた明治生まれの国岡鐡造は、いずれは大きな貨物船を持って世界を相手に商売をしてみたいと思った。しかしそれは艱難辛苦に満ちた厳しい道のりだった…。実在の人物をモデルに描いたノンフィクション小説。
上巻では大戦後、焼け野原の東京から始まり昭和20年〜22年の国岡商店の苦難を、そしてそこから鐡造の生まれた明治18年へ戻り鐡造の青春時代を追う。下巻では昭和22年以降近年までが描かれている。
国岡商店の社是『人間尊重』は国岡鐡造の強い信念であり、それゆえ商店には就業規則もなければ、出勤簿もなく、クビも定年もない。鐡造の口癖は社員は家族同然。だから信じて当然だという。一方で、自分の信念を貫くためには喧嘩は厭わず徹底的に正論を追及するので同業者や関係者には強い反感を抱くものも多かった。こんな人物、ノンフィクションでなければ、出来過ぎの完璧仕事超人だと、まるで作り物のように感じただろう。 いかに困難にぶつかっても、どんなに大きな障壁が妨げようとも、絶対不可能と言われたことも、信念で貫き通す。生半可な信念ではない。常に命がけ。思えば『永遠の0』は特攻隊員たちの命がけの人生を描いていたが、彼らが命を預けた戦艦も戦闘機も、それを動かしていたのは石油だった。いまでは我々の生活に石油は欠かせないものとなっているが、その石油を巡って一人の日本人の人生を賭けた壮絶な戦いがあったことに驚愕。 余談だけど…石油を取り巻く情勢には疎いため、鐡造のモデルが誰なのかを知らずに途中まで読めたのは幸運だった。というか、読書の途中でほかの方のレビューの最初に「これは○○をモデルに書かれた」と実名が書いてあったのが目に入ってしまったため、鐡造の国岡商会が近年まで繁栄したのか潰れてしまったのかが分かってしまい、先を読む楽しみが削がれてしまったのは残念。星3つに近い星4つ★★★★。 どちらも硬派な作品。史実に基づいたものと完全なフィクションという違いはあるが、主人公の仕事に対する誠実さが共通していて、読んでいて思わず背筋がピンっと伸びた。彼らを支える家族や周りに集まる人々も立派な人たちばかり。日本にこんなに真面目な仕事人間はどのくらいいるんだろう。
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BOOKS♪
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昔から読書家だったわけではありませんが、いまでは本のない生活なんて考えられない!と思っています。
ミステリ中心に愛読しているなかで、充実した読書時間を過ごせた、おススメの本を紹介したいです。
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本屋大賞って、誰もが知っていて放っておいても売れそうなベストセラー作家のものはあまりノミネートされない(もしくは大賞には選ばれない)ってイメージがあります。実際、そうでもないみたいですが。以下の作品はいずれも作家や代表作は知ってるけどなかなか積極的に読もうとしたことのない作家さんたち。自分では選べない作品に、こういう機会に触れ合えるのはいいな。
『ふくわらい』西加奈子
風変わりな紀行作家の父を持つ鳴木戸定は、希少な体験を通して幼少期を過ごし、今では出版社の編集者として癖のある作家にも淡々と対処し簡潔な日々を過ごしていた…。定の幼少期の強烈な体験は、ともするとキワモノ扱いされそうな題材だか、主眼は、定やプロレスラー作家、同僚などの登場人物らが自分の心を見つめて突き詰めて解き放つことにあるように思う。またその過程に清々しさがあって、登場人物らはお世辞にも爽やかとは言えないのに読後感が意外と爽やかだった。★★★
『晴天の迷いクジラ』窪美澄
生き方、人生に自信を無くしたり迷ったり悔やんだり、そんな人にオススメしたい、優しい再生の物語。
過去があって今の自分がある、そう思える今の自分にはそれほど強い共感はないけど、若い頃に読んだらハマっただろうな。名前が素敵な野々花社長の過去にはあまり同情できないけど。★★★
『きみはいい子』中脇初枝
継父に虐待され痩せ細った小学生、幼い頃実母に絞め殺されそうになり母が痴呆になっても許せない女性、新任教師が受け持った小学一年生の学級崩壊、自らの虐待体験から娘に辛く当たってしまい苦しむ女性…。
子供は誰も悪くない。もともと悪い子なんていない。「きみはいいこ」ってひとこと言って肯定してもらえたら、救われる小さな心。 この本が話題になるのだから、こういうテーマって身近な問題なんだな…と改めて思うと本当に切ない。★★★ いずれも普通の人の周りに起こりそうな内容だったりテーマなので、心を遠くに飛ばしてハラハラドキドキする読書が大好きな自分には、いったん内面を見つめて周りを見回してみようよ!と現実に引き戻された感がありました。こういう本を読むと気持ちにちゃんと向き合う時間があるのもいいなぁと思ったり。でもやっぱり私は、読書時間には非日常を味わえる海外の翻訳ものや事件もの、時代もの、パズル本が好きだから、自分だとなかなか選べないなぁ。(そういう意味では警察関係者は警察小説なんか読まないんだろうな)
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もともと高くない読書用のアンテナが以前にも増して低くなってしまってから、新しい作者さんの開拓や本との意外な出会いをする機会がこの2年くらい減っていました。
本屋大賞のノミネート作品は、10作品ほどと数もそれほど多くなく、なおかつ全国の書店員の方の目利き?で選ばれた本なので、そんなアンテナの低い自分にとっては本を選ぶときの参考になります。
今年のノミネート作品は11作品。ノミネートされる前から図書館で予約待ちのもの、普段は絶対に自分では選べないような傾向のものもありました。作品は11だけど、上下巻や3部作のものもあり、しかも分厚い。選考する書店員泣かせだというTLを見かけたのも納得。
間もなく大賞の発表があるそうですね。(確か、4月9日)
まだ入手できなくてノミネート作品全作品を網羅できてはいないけれど、読んだ順に感想をまとめてみました。
長くなりそうなので、まずは3作品。
『楽園のカンヴァス』原田マハ
アンリ・ルソーの絵画の真贋を見極めて欲しいと、伝説の美術コレクター、コンラート・バイラーから招かれた二人の研究者、MoMAのアシスタント・キュレーター、ティム・ブラウンと日本人研究者の早川織絵。彼らはその邸宅でMoMA所蔵の「夢」と酷似した作品「夢をみた」と対面し衝撃を受ける。そして真贋を見極めるヒントとなる、ある書物を毎日1章ずつ読み、7日めに真贋の講評をするよう依頼される。彼らはそれぞれに抱える事情に悩み、書物の内容に心動かされながらも、決断のときは近づいていくのだか…。
本を置くのも忘れて一気に読んでしまうほど吸引力がものすごい勢いの作品に久しぶりに出会った。 アンリ・ルソーについては何一つ知らなかったけど絵は見たことがある。 その程度の美術に決して詳しくはない自分だが、キュレーターや監視員、美術館の運営や企画展のからくりなど美術業界のことが分かりやすく描かれていてすんなり物語に入っていけた。近代美術が好きな人には特にオススメ。 ほかの作品でも作家が業界について詳しくリサーチして様々な職業の人々を描くのはよくあるし調査が徹底的だったり表現がリアルだったりあるいはその両方で「巧く」描けてると感じる作品は多いけど、この作品の場合は単に巧いなんて言えない、それ以上の著者の情熱を感じる。美術に関わる仕事に携わる登場人物、ルソーやピカソなど実在の芸術家たち、さらには「絵画」そのものに対する著者の並々ならぬ熱い愛に溢れていて、ただ事ではないほどにグイグイ気持ちを持っていかれた。 特に作中作であるルソーをめぐる芸術家や当時を生きるフランスの人々の物語に心奪われた。売れなくてもひたむきに描き続けるルソーの生真面目さ、若きピカソの豪胆さ、ルソーに思いを寄せられる若い人妻ヤドヴィガと夫のジョゼフがルソーの絵に触れるにとともに変化していく様が興味深く、最終章は胸が熱くなること必至。そして高齢なコレクターがあの人だったなんて…。 作中の言葉にも心を動かされた。 例えば“アートを理解するということは、この世界を理解するということ。アートを愛するということは、この世界を愛するということ”。 “この作品には、情熱がある。画家の情熱のすべてが。…それだけです”。 これから絵画や芸術作品と向き合い鑑賞する機会があったら、この言葉を思い浮かべたい。 芸術が持つ魅力を言葉で昇華し伝えてくれたこの作品は、文句なしの五つ星★★★★★!! 『百年法』山田宗樹
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大戦で原発6発落とされ壊滅状態の日本。そこに米国発の不老技術と「百年法」が導入された。不老化した者は次世代へ道を譲るべく百年後に基本的人権を全て失う…即ち死…。パラレルワールドの日本だが、抱える問題は現代の日本に通じる。超高齢社会、少子化、保身政治家ばかりの政治不信、経済難。どこまでもストイックな官僚に好感が持てる。彼はこの世の中をどう変えていこうとするのか?国民の選択は?重大な転機をサクッと飛ばして後日談にしてしまう語り口は、はしょりすぎな気がしてはじめは馴染まなかったけど、このボリュームなら止むを得ないかな。終わりなき不老化社会はどうなってしまうのか。あっという間に下巻へ。
国政は大統領の独裁により歪み、百年法から逃れて密かに生き続ける「拒否者」たち、大統領許認可を受けて政界にしがみつく不老政治家たちが増え、大きな社会的歪みは日本を衰退の一途へ。そして謎の奇病が流行り始めた…。
上巻では文章に違和感(芝居の台本みたいで雑)があったがそれも気にならなくなるほどに、ストーリーが力強くてページをめくる手が止まらなくなった。下巻では、不老化手術を受けずに拒否者らと生きるケンと、大統領を補佐しつつ国難に立ち向かう遊佐を中心に物語が展開。死が当たり前でなくなったら人間はどうなってしまうのか。どこまでもストイックで私情を挟まず、国のためなら自分の評判を落としかねない決断をできる遊佐の政治家としての行動、言葉は、今の日本に切実に必要だと感じた。最終章で彼が語る言葉に著者の主張が強烈に反映されている。この膨大なストーリーは全てこれを語るために用意されてたんだなぁ。 読後しばらくはこのパラレルワールドで受けた衝撃の余韻に浸って考えてしまったので星4つ★★★★。 『屍者の帝国』伊藤計劃×円城塔
屍者を動かす技術が確立し労働力として人々の生活に欠かせない存在となった19世紀末、「屍者の帝国」を調査するためイギリスからインドへ派遣された諜報員ワトソンが目にしたものは…。
本屋大賞にノミネートされた作品なので手にとった、初めての作家。遺作に友人の芥川賞作家(だっけ?)が追記した作品ということで話題になったそう。19世紀に活躍した歴史上、作中の人物たちには馴染みがあるし(マイクロフト・ホームズが英国諜報機関のMだったり)、「ドラキュラ紀元」を彷彿とさせて、19世紀末の英国という時代背景は自分好みだし冒頭はなんだか面白そうな書き出しだったけれど、全体的に冗長でくどく途中で飽きてしまい自分には合わなかった。好きな人にはうけるんだろうけど…。これが大賞とったらガッカリだなぁ。言い過ぎかもしれないけど星は★★。
しょっぱなから、かなり評価に差がでてしまった…。これはこれで貴重な体験。
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昨年末は、近年翻訳出版されたジェフリー・ディーヴァーの作品「バーニング・ワイヤー」「追撃の森」「007 白紙委任状」の3作をまとめて読みました。
3作品の中で、一番最初に入手していたのは「007」でしたが、下の感想にも書いたように途中で気分が乗らなくてしばらく寝かせてました。続いて「追撃の森」も出版されたのだけど、ディーヴァー本を積読しているというファンとしてはあるまじき行為をしている後ろめたさから読むのを躊躇して…そうこうしているうちにリンカーン・ライムものの新作が出て、これはもう我慢できない!とばかりに一気に読んでしまい、その勢いで他の2作も立て続けに読むという、まさにディーヴァー祭りのような贅沢な状態でした。結局、読んだ順に面白かったという結果になってしまったのが、少しもったいなかったかな。間をあけて読めばもっとありがたみが増したのかも(苦笑)。 ジェフリー・ディーヴァー三昧!
やっぱりライムは鉄板!不動の面白さ!
「バーニング・ワイヤー」★★★★★
本 / 文藝春秋 / 477ページ / 2012年10月11日発売
マンハッタン内の変電所で電気による爆発ー“アークフラッシュ”ーが発生し、付近に停車中だったバスの乗客らに複数の死傷者が出た。何者かによる故意に起こされた事故だった。犯人の狙いは、個人か、電力会社か、それともアースデイに合わせた環境テロか?NY市警はリンカーン・ライムに捜査の指揮を要請した。ライムは、過去に取り逃がした殺し屋ウォッチメイカーをメキシコ警察と連携して追跡中だったが要請を受けた。だが現場から採取した物的証拠から手掛かりが殆ど見つからず、さらに犯人から次の犯行を予告した脅迫状が届く…。
リンカーン・ライムシリーズ第9作。やっぱり大満足です!一気に読まずにはいられないほど面白いけど、翻訳を待ち望んでようやく出たんだから一気に読むのはもったいない、そんな心地よいジレンマに陥りました。
「人間の心臓を止めるにはたった100mA、ヘアドライヤーの消費電力の百分の一の電力で足りる。」
“電気”が今回の厄介な敵の武器。あまりにも身近な武器。
アークフラッシュの被害が恐ろしげで、様々な悲惨な現場をくぐり抜けて来たサックスまで怯えさせる。電気という、その脅威を忘れて便利さだけで身の回りに溢れているものを、ここまで上手く使いシリーズ史上でも強烈な印象を残したディーヴァーに拍手! クラウドゾーンの捜査など従来とは違った手法も交えながら、擦れたシリーズ愛読者の予想や期待の斜め上をいくtwistedな展開も見事。なかなかライムお得意の科学捜査が活かせなくてヤキモキさせられるんだけど、終盤にはスカッと爽快感が得られる結末。犯人とライムの会話は分かり合える者同士のシンパシーで溢れていて、常識的に被害者たちのことを考えたらあり得ないんだけど、いい雰囲気になっちゃったのはご愛嬌。 さらにシリーズファンは、最終章の8ページに一番衝撃を受けたのでは?うーん、これで次の新作も目が離せない。 そしてこのシリーズの醍醐味であるリンカーン・ライムチームの面々の活躍ぶりも、惰性に陥ることなく存分に堪能出来た。 このシリーズの新作を読む時は、巻頭の登場人物表にじっくり目を通して誰が出てくるのかをチェックするのも楽しみのひとつ。今回は自分がお気に入りの、2丁拳銃のアノ人が載ってなかったので若干ガッカリしてたんだけど…チラッと要所で登場してくれたのでラッキー。 今回の登場人物の中ではプラスキーが不運続き。今までもかなり貧乏くじを引いてきたけど…あまりにも可哀想でディーヴァーは彼を虐めるのを楽しんでるんじゃないかと疑う程。まぁ、例の被害者の身元が分かってからのルーキーの態度は感心できないけど。ライムの叱咤が効いてくれるといいなぁ。 FBIの覆面捜査官デルレイの巻き返しは、彼の本領発揮であっぱれ。というかむしろ、一旦落ち込んだ彼の尻を叩いた人がよかった! あぁ、なんだか、プラスキーの初登場やらウォッチメイカーやら、そもそも初期のライムやライムチームが出来ていく過程をもう一度読み返したくなった! The Burning Wire/2010/Jeffery Deaver ノンシリーズならではの楽しみ♪
本 / 文藝春秋/ 572ページ / 2012年06月08日発売
人里離れた湖畔の別荘から警察への緊急電話。女性警官ブリンがひとりで様子を見にいくと夫婦の死体があり、犯人二人組の男達に狙われ追われてしまう。彼らから逃げる夫婦の友人と途中で合流し、森の中を逃げることに…。
逃げるブリン達女性二人組と、追撃する男性二人組との駆け引きにハラハラさせられ通し。
読みどころはいろいろあるけれど、一番の醍醐味は、タフで知恵者のブリンと、職人気質な犯人ハートとの、騙し合い。
正義と悪、警察と犯人という相入れない二人が、相通ずる思考回路で分かりあってしまうところなんか、まるでリンカーンライムとウォッチメイカーみたいじゃないの!なんて、ディーヴァーファンなら思うのでは。
ラストが若干物足りない(というか、ある人の結末が呆気ない)気もするけど、このボリュームで飽きさせないのはさすが。
ノンシリーズものでは「獣たちの庭園」が一番好きなんだけど、それを上回るほどではなかったかな。惜しい。
The Bodies Left Behind/Jeffery Deaver/2008 JB×JDは吉と出るか?
「007 白紙委任状」★★★ 本 / 文藝春秋/ 456ページ / 2011年10月13日発売
世界一有名なスパイ、ジェームズ・ボンドをあのジェフリー・ディーヴァーが描いた!
英国政府通信本部が傍受したメールが示唆する大規模な攻撃計画。その期日まであと1週間足らず。計画の内容を探りそれを阻止すべく、英国諜報界が指令を出したのはジェームズボンド、暗号名007。謎の男「アイリッシュマン」を追ってセルビアに飛んだボンドは手がかりをわずかにつかんだものの逃してしまう…。はたしてアイリッシュマンの関わる計画とは何か? は〜。最近のディーヴァーの作品では久しぶりに★3つにしてしまった。
ディーヴァー作品は出るたびにとても楽しみで即買いに走りますが、本作は新たな試みで期待もしていたのに、読み始めたらなんだか気が乗らなくて、あろうことか途中でいったん本を置き、数か月も寝かしてしまった…こんなこと一気読み必至のディーヴァー作品ではありえなかったのに。 というのもボンドの女好きな性質が個人的にどうもしっくりこなかったから。007は映画でいくつか観ていてそれなりに面白いと思っていたんだけど、ディーヴァーの作品の登場人物にはあまりいないタイプだから彼の作品だと思って読むと違和感があったのかもしれない。ディーヴァーは既存のキャラより自分で作り上げるキャラの方が断然面白い、と思う。 でもそれにもだんだん慣れてきて、話の後半、舞台が南アフリカへ移って敵に潜り込んでからの展開になってきたら、ディーヴァー得意の捻りの連続にいい感じに翻弄されてストーリー自体は面白くなってきた。敵の心を鷲掴みにするあるプラン、よく考えたなと思ったり。最後は「そっちか〜」という黒幕でまんまと騙され満足満足。 Carte Blanche/Jeffery Deaver/2011 …と、まぁ、なんだかんだ言いながら、贅沢なディーヴァー三昧を楽しんだひとときでした。
「XO」「More Twisted」など、まだまだ翻訳待ちの作品があるので、今年もディーヴァーから目が離せません。
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あけましておめでとうございます!
半年ぶりのご無沙汰をしてしまいました。
みなさんお変わりないでしょうか? 本年もどうぞよろしくお願いいたします(*^。^*)
と、ここで反省…
昨年は一昨年以上に投稿が少ない、寂しいブログとなってしまいました。 読書熱は冷めていないつもりでも、アンテナが低くて評判の本を入手しようというフットワークも悪くて、結果的に読めたのは…いつもの半分以下。 そんな少ない読書量の中から、昨年までに読んだ中で特に印象に残った本――某読書ログでの評価★5つを付けたもの――をピックアップしたいと思います。 ★まずひとつめはこちら
光
著者:道尾秀介
本 / 光文社 / 384ページ / 2012年06月08日発売
「あのころ、わたしたちは包まれていた。まぶしくて、涙が出る――。
都会から少し離れた山間の町。小学四年生の利一は、仲間たちとともに、わくわくするような謎や、逃げ出したくなる恐怖、わすれがたい奇跡を体験する。さらなる進境を示す、道尾秀介、充実の最新作! 」 小学生の利一は、クラスメイトの清貴が、みんなで可愛がっていた野良犬ワンダを殺したとクラスメイトの宏樹らに責められている場に出くわす。果たして真相は…?
今という時間がギュッと濃厚だった気がする少年少女時代。 劣等感、優越感、後ろめたさ、勇気、いろんな感情がむき出しのまま自分に押し寄せてきた。主人公が体験し、感じたことは、かつて自分や親しい友達が味わったことのありそうなことばかりで、苦く、痛々しく、そして微笑ましくもある。 温かみのある物語が、道尾さんお得意の捻りをスパイスにして、ときにハラハラさせながら進んでいく。 今までの道尾さんの作品の中で3本指に入るくらいお気に入りになった。 ★そして話題作のこちら
舟を編む9978人が登録★4.18
本 / 光文社 / 259ページ / 2011年09月17日発売
「玄武書房に勤める馬締光也は営業部では変人として持て余されていたが、新しい辞書『大渡海』編纂メンバーとして辞書編集部に迎えられる。個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていく。しかし、問題が山積みの辞書編集部。果たして『大渡海』は完成するのか──。言葉への敬意、不完全な人間たちへの愛おしさを謳いあげる三浦しをんの最新長編小説。 」
大きく出遅れてようやく読めたけど、これ、すっごくいい!!辞書編纂という一見地味な仕事を、魅力的なストーリー、人物たちに焦点を当てつつ、見事に描いていて、どんな仕事にも通じる大切な仕事への心意気が伝わった。こうしてのんべんだらりと言葉を書き散らかしているけど、改めて言葉って人と人との繋がりに欠かせないものだな、なんて思ったりして。最後はハンカチを片手にご用意あれ。しをんさんの作品は初期の二冊くらいしか読んでなくて、なんとなくそれが苦手だったから、本作の高評価を目にしてもなかなか手が伸びなかったけど…早く読んでおけばよかった。
★一時期、東野圭吾さんの作品ばかり続けて読んでいた時があって、その中で一番ぐっときたのがこちら
時生 (講談社文庫)
本 / 講談社 / 544ページ / 2005年08月12日発売
不治の病で命が失われつつある息子、時生。時生の父親が、20年前に同じくトキオと名乗る不思議な少年と共に過ごした短い日々を回想する話。若くて未熟などうしようもない青年だった主人公を、トキオがそばで励まし見守る姿は、どちらが親か分からないが(トキオ君できすぎ)、不思議な絆が感じられる。最後は涙無くしては読めない。最後のセリフで繋がった。東野圭吾さんの理詰めの推理ものが好きだけど、ファンタジー要素の強いこの作品にも、参った。何故?どうやって?という疑問もつじつま合わせはいらない。ひとに勧めたくなる傑作。
★こちらはちょっと昔の本だけど個人的好みに大ヒット
日の名残り (ハヤカワepi文庫)
本 / 早川書房 / 365ページ / 2001年05月発売
イギリスの邸宅で戦前戦後ダーリントン卿に仕え、今はアメリカ人の主人に仕える初老の執事スティーブンスが、かつての同僚を訪ねる小旅行の道すがら、過ぎ去りし日々の思い出を振り返る…。イギリスの古き良き貴族の暮らしを舞台裏から支える執事の回想という形で事細かに描かれ、また旅先では静かで慎ましい美しさを持つ英国田園風景を堪能できる英国文学。1989年、イギリスで最も権威ある文学賞ブッカー賞受賞作。
アンソニーホプキンス主演の映画を先に観ていたが、英国の邸宅や上流階級の暮らし、風景を視覚的に楽しむことができ、イメージを壊すことなく映像化されていた。作品の余韻は原作には敵わないけれど。 語り手の執事スティーブンスは筋の通った人間らしさがあり、魅力的。偉大な執事とは何か、品格とは?と常に自問自答し生真面目で抜群に有能な執事ながら、人との心の触れ合いや感情表現は不器用すぎて、時に痛々しいほど。 自らを律して語るため動揺や悲しみを直接的表すことはないが、そのかわり彼の感情の発露を第三者の発言から推測させるような表現が巧い。 例えば、ダーリントンホールで海外からの客をもてなす重要な接待中に父が危篤と知りながら平常心を装っていた場面(NHK英語で英文学を楽しむ番組でも取り上げられた箇所) また、旅の終わりに見知らぬ男性に身の上話をしている時(p349引用) 感情を抑圧しているだけで、感情が希薄なわけではないのは、執事として敬愛していたダーリントン卿や、女中頭のミス・ケントンへの思いに表れている。 そんな風に生きてきたスティーブンスが旅の最後に出会った言葉がいい。(p350引用) 「人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日で一番いい時間なんだ。」 「私を離さないで」を読みファンになってからイシグロ作品はいろいろ読んできたが、本作が一番のお気に入りになった。オールタイムベストに入れたい一冊。 The Remains of the Days/Kazuo Ishiguro/1989 どの本も楽しく充実した読書時間を過ごせた本ばかり。
今年はどんな本に出会えるか、楽しみです。
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