しみじみと朗読に聴き入りたい

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 金子みすゞをめぐるJULA出版局や矢崎節夫氏の「私物化」批判についての週刊文春の記事を、図書館でコピーしてきました。
 初めにこれを読めば、もっと手っ取り早かったような気もしますが、貸し出し中でなかなか入手できなかったために、逆に自分で考える時間ができてよかったのかもしれません。
 その週刊文春の記事内容には驚きました。ひどい話です。あとで、ポイントを要約紹介しつつ、コメントするようにしますが、商標登録の話も、記事中に触れられていました。
 その商標登録の話をまず書きたいと思います。
 
●金子みすゞに関する商標登録を見つけたのは、私としては偶然のことでした。
「金子みすず」の名前で、JULAらが商標登録するというようなツイッターがあったので、検索してみたら、「商標審決データベース」での審決サイトがヒットしました。これは別の企業が申請したもので、特許庁で拒絶査定を不服として、「登録査定拒絶不服請求」をしたというものです。  

 
 平成17年に「ビール、清涼飲料類」と指定商品として商標登録申請したものの、著名性に便乗し私的独占を目的とするものとして公序良俗に反する不正目的による申請だと判断され、拒絶査定されたものです。
 それは当然だろうな、と思いつつ、他にはないのだろうな・・・と思って念のため、特許庁の商標検索サイトで、調べてみたのです。
 以下のサイトで、一番上の欄で、左側を「商標(検索用)」にして、右側の欄に「金子みすゞ」と入れて検索してみてください。1件ヒットと出ます。
 
 
 検索結果をみると、【権利者】は、「株式会社ジュラ出版局」だったのですから驚きです。平成11年7月に出願し、約1年半後の平成12年12月に登録になっています。その商標権が有効な「指定商品区分」は3区分となっています。多数の例示が書いてありますが、ざっくりと要約すると次のような商品群です。

「紙類、詩集その他の印刷物、写真、書画、文房具類等」
「食肉、魚、野菜、豆腐その他食料品等」
「金銭・有価証券・保険・不動産等の取引」
 
●登録商標というのは、多数ある商品区分のうち、登録した区分だけに有効という制度になっています。これらの指定商品群を眺めて、最初の区分は、きっと、詩集その他の書籍の独占を意図していることは容易に想像されます。夏目漱石の子供や孫がやろうとしたことと同じ発想でしょう。

 その次の、肉、魚等の食品類というのはなぜだろう?と思ったのですが、週刊文春の記事を読んで氷解しました。地元の山口県の蒲鉾業者が包装紙に金子みすゞの詩や写真を載せることが(その包装紙が破られることが)耐えられないとして許さなかったとありますから、その関係でしょう。
 次の有価証券・保険・不動産等の取引関係の区分は何を目的としているのでしょう? 「記念館」とは関係ないとは思いますが、もし、それが念頭にあったとしたら完全な思惑違いですね。
 
 いずれにしても、著作権が切れている童謡作家の名前自体を商標登録するという発想は、私物化を目的としていると想像されても仕方ありません。
 著名人の名前での登録がまったくないのか、というと必ずしもそういうことでもなく、過去登録された例も少なくありません。しかし、最近はそれがトラブルとなって、地元自治体が取消請求をして認められたり、特許庁自身も原則として今後は認めないとする審査指針を発表しています。自治体が悪用されないように独占管理しようとして出願する例もありますが、退けられています。
 
<各種報道>
 
<特許庁による歴史上の人物についての商標登録申請審査指針>
 
 
●さて、商標登録をするというのは、自分で独占したい、他人に使わせたくないと思ってやるのででしょうが、その商標権は実際には他人の詩集その他の書籍の出版を妨げたり、食品等の土産物での詩等の使用を拒否する法的根拠には全くなりません。
 「商標」というのは、あくまで「出所の誤認混同を防ぐ」(出所識別機能)が主たる柱であり、それに関連して、品質保証機能や広告宣伝機能を有するもので、それらを事業に活用する独点的権利を保証するのが「商標権」です。
 ですから、出所識別機能が損なわなければ(=その商標権者が発行・販売し、する予定のものと誤認混同するものでなければ)、何ら使用に制約はないのです。
 書籍のタイトル(題号)に対して、商標権侵害や不正競争防止法違反(商品主体混同惹起行為)を主張する例がありますが、ことごとく退けられています。
 
 
 上記のサイトで紹介されている裁判所の判決にある通り、
 
『商標の使用が商標権の侵害行為であると認められるためには,登録商標と同一又は類似の第三者の標章が,単に形式的に指定商品又はこれに類似する商品等に表示されているだけでは足りず,その商品の出所を表示し自他商品を識別する標識としての機能を果たす態様で使用されていることを要するものと解すべきである。』
 
 ということなのです。要するに、単に「金子みすゞ」という登録商標の文字が物理的に書いてあったとしても、それが、JULA出版局が発行している詩集や出版物と同一のものだと誤認混同するような使い方をした場合に、侵害となるということになります。全く同じタイトルで詩集を発行したら、商標権侵害や不正競争防止法違反になる可能性大ですが、そうでない限り、「金子みすゞ」をタイトルに含んだり、どこかに文字として記載しても何も問題にはなり得ないのです。
 
● 著作権切れの作家名を商標登録して、公共財産に帰せしめずに引き続き独占したり利益を得ようという行為については、夏目漱石の事例が有名です。これについては、以前も記事で紹介しました。
 
  http://blogs.yahoo.co.jp/teabreakt/52857977.html  夏目純一氏の例
  http://blogs.yahoo.co.jp/teabreakt/56874724.html  一般財団法人の例

 
 本当に出版人としての品格に関わる話で、文芸界に身を置いている者で、この件を知らない人間はいないでしょう。漱石の長男による商標登録申請は世間の顰蹙を買った事件ですから、これと同じことを金子みすゞの詩集の出版社がやるとは、どいういうことなのでしょうか・・・。
 
●上記で、商標権の効力について、書籍タイトル(題号)での使用の場合についての判決文を紹介しましたが、これは題号に限らず一般的に当てはまる原則です。 
 たとえば、週刊文春の記事によれば、
 
「地元名物の蒲鉾の包装紙にみすゞの詩や写真を載せたいとの要望が出た時も、矢崎氏は「みすゞさんの詩が破り捨てられるのは我慢がならない」などの注文をつけ、関係者も幾度も“おうかがい”を立てなければならなかったという。」
 
 とありますが、前述の商標権侵害の考え方の一般原則からみれば、蒲鉾の包装紙に著作権の切れた詩や写真を載せるのは、商標権侵害にはなり得ません。
 もし、JULA出版局が、土産物で「金子みすゞ」という名前の食品を製造販売するなり、他人にその食品類について商標を使用許諾していた場合、他人がそれを食品類の商品名称の中に使って、それがJULA出版局が製造販売されているものだと誤認するような使い方であった場合に初めて、商標権侵害になるのであって、そうでなければ侵害にはなりません。

「金子みすゞの贈り物」というような「商品名」だと問題になりうる可能性もないではありませんが、単に、自分の社で製造販売している蒲鉾の包装紙に、金子みすゞ作と書いてどれかの詩や写真を載せても、誰もそれによって、JULA出版局が製造販売しているものだとは誤認しませんから、商標権侵害にはならないでしょう。あるいは「みすゞ」という字でデザインしたような背景に、自社の製品名を書くというのも問題はないでしょう。結局、
 
「出所の誤認混同を生じるか否か?」
 
 これが、商標権侵害か否かの判断を左右する基本的基準になるのです(出所の誤認混同を招くと一般的に認められるのが「類似」範囲ということになります))。もちろん、商標権をめぐる事例は多々ありますから、ケースバイケースの判断になり、断定はできませんが、「出所を識別させ、その独占的使用によって信用を蓄積していく」というのが登録商標の基本的役割ですので、それを損なわないような使われ方であれば、不正目的でない限り侵害にはならないと思われます。

                                     続きます
 

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