しみじみと朗読に聴き入りたい

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前回からの続きです

● 逆に、登録商標であっても、その商標登録が不正目的によるものである場合には無効原因があるとして取消の対象となる場合もありますし、無効取消にまでは至らないまでも、その商標権行使が権利濫用として許されない場合もあります。
 このことは、最高裁判例で確定しています。同判例では次のように述べられています。
 
「商標登録に無効理由が存在し,それが本来登録されるべきでないものであったのにもかかわらず,過誤により登録された場合には,仮に無効審判請求により無効とされることがなくても,そのような無効理由が存在することが明らかな商標権に基づく請求は,衡平に反し,権利の濫用として許されない」(最高裁平成10年(オ)第364号同12年4月11日第三小法廷判決・民集第54巻4号1368頁参照)。
  
 
 「金子みすゞ」の商標登録がなされたのは平成12年ですが、本来は、人物名は商標登録はできなかったはずです。
 
第四条  次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
八  他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)
 
 にもかかわらず、多くの人名登録がなされてしまっていたことは、商標行政の怠慢だと私は思いますが、遅ればせながら、原則として歴史上の人物の人名登録は認めないこととしたことは良かったと思います(しかも、公序良俗違反として)。

 しかも、平成12年の商標登録当時、JULA出版局による著作権主張や使用了解要求などが既に問題視されて時期ですから、もしその出願の事実が明らかになっていたら、「不正利用目的」として拒絶査定がなされていたのではないかと想像します。仮に全集を出版していたり、遺族の了解を得ていたとしても、夏目漱石の長男による商標登録申請が、著作権失効に代替する権利確保が目的だということは明らかであったがために拒絶されたわけですから、関係者が異議を申し立てていれば、この「金子みすゞ」のJULAによる登録申請も同様に拒絶されたものと思います。

 商標登録の事実がいつ判明したのかわかりませんが、もし無理筋の要求を受けたのであれば、それを以て無効審判請求をすることもできたのだろうと思いますが、そのようなところまでは一般的には考えつかないでしょうし、時間・労力的にも困難だったことでしょう。以下の記録をみても、なんの異議申立てや審判請求もなされていないことがわかります。
 
 
● 出願当時は、他人の事業を妨げる不正目的によるものかどうかは、にわかには判断しがたいところがあって、無効理由が明らかな取消対象になりうるかどうかは、微妙だったかもしれません。
 しかし、最高裁判例は、無効理由がない場合であっても、権利行使の態様によっては、権利濫用として許されない場合があると述べています。
 
仮に,商標登録に商標法46条1項所定の無効理由が存在しない場合であっても,登録商標の取得経過や取得意図,商標権行使の態様等によっては,商標権の行使が,客観的に公正な競争秩序を乱すものとして権利の濫用に当たり,許されない場合があると解すべきである」(最高裁昭和60年(オ)第1576号平成2年7月20日第二小法廷判決・民集44巻5号876頁参照)。
 
● したがって、まっとうな事業が、もしJULA出版局の商標権の主張によって不当に妨げられるようであれば、以下のような対応でこれを防御することができることでしょう。 
 商標権侵害にそもそも当たらない旨を主張する。
ほとんどの場合に、出所の誤認混同をもたらすような使用態様ではないでしょうから、商標権侵害には当たらないと思います。

無効審判請求を行う。
仮に登録商標の同一・類次範囲に入るとしても、不正競争目的であれば無効審判の対象になり得ます。商標登録は、一般的には5年経過すれば無効審判請求ができませんが、不正競争目的のような公益的事由の場合には、期限は定められていません。

 権利濫用の主張をする。
  無効理由が存在しない場合であっても,登録商標の取得経過や取得意図,商標権行使の態様等によっては,商標権の行使が,客観的に公正な競争秩序を乱すものとして権利濫用になりますから、それらの理由を説明する。
 
※ なお、JULA出版局自身が、この登録商標を自ら、出所識別機能として使用しているのでなければ、3年間の不使用で取消審判対象になりえます。ただ、それが認められるのは、その申立人がその商標を使いたいとして登録申請している場合ですので、現在ではそれは認められませんから、結果として不使用の取消審判対象にはならないと思われます。しかし、その不使用の事実は、上記の②③の主張を側面的に補強する材料になると思われます。使用の事実の証明責任は、商標権者にあります。
   以下のような商品区分で、JULA自身が何か製造販売したり、商標使用許諾しているのでしょうか・・・。

  「食肉、魚、野菜、豆腐その他食料品等」
 「金銭・有価証券・保険・不動産等の取引」


● 更には、先方の対応如何では、独禁法の「私的独占」として排除勧告を申し立てたり、損害賠償請求を行うことも可能でしょう。
 商標関係での不正競争目的の事件として有名なのは、「函館新聞事件」です。1994年に函館新聞社が新規参入してくることを妨害するために、北海道新聞が、考えられる新聞名をすべて商標登録申請をしたという事件です。特許庁で拒絶査定となりましたが、公取委は私的独占行為として排除勧告をしています。更には、道新の関連会社を使った参入妨害により、損害賠償請求がなされ最終的には、裁判所の勧告により和解となっています(2億円超の賠償金を支払い)。
 
 もし、JULA出版局の出版物と誤認混同が生じないようなごく一般的な形での詩集の出版や、評論集の出版を妨げるような請求や行為がなされるのであれば、この函館新聞社と同じような対応を検討することも選択肢でしょう。
 
● 既に触れたように、「著作権」侵害であるかのような風説を流して事業妨害をするのであれば、それは、刑法上の「偽計業務妨害」、不正競争防止法上の「信用棄損行為」に該当する可能性が大きいと思われます。いずれも、刑事罰の対象となります(=要するに「犯罪行為」だということです)。
 

 
 ・・・蒲鉾業者が包装紙に金子みすゞという文字やその詩や写真(=著作権切れの写真)をあしらうことを、矢崎氏が商標権を盾にして渋るがために、その了解を得るために右往左往しているなど、にわかには考えられないのですが、実際にそういうことになっているとすれば、由々しき事態だと思います。
 
 次回、昨年12月1日号の週刊文春記事をもとに、更にコメントしたいと思います。
今まで、彼らを好意的に見ていた部分が全部吹っ飛ぶような話が書いてありました。彼らの話を信じてきた人々にとっては、愕然とする内容ではないでしょうか・・・。

 改めて、
 
  「金子みすゞの詩は、公共財産であり、だれもが自由に楽しむことができる  ものである」

 ということを、定着させる必要があると痛感した次第です。

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