しみじみと朗読に聴き入りたい

素晴らしい朗読が聴けるサイトやCDを発掘してご紹介します。著作権関係の意見も発信しています。.

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以上のように、疑問点は、次から次に湧いてきますが、矢崎氏やJULA出版局の「著作権」についての趣旨説明を信じたとしても、現在の状況は全集出版当時から大きく変わっており、彼らが言っていた目的は既に十分達していると思います。
 
①当初、著作権や出版権の主張の背後にあったであろう、「JULAの全集・選集があるからこそ、世間にその詩が伝わっているのであり、人気が出たからといって他社が勝手に参入されては、JULAの全集等が立ち往かなくなる。世に出すための赤字だけが残って、これから売れ出すという時に他社に収益源を奪われてはかなわないから、疑似著作権による関与、JULAの出版権的権利を認めてほしい」 といった危機感と切実な願望があったことは、理解はできないわけではありません。

 しかし、その後の推移で、JULAのみすゞ関連の出版物は圧倒的な存在となっており、「出版権」「著作権」の主張の背後にあったであろう競合本の発行により全集やみすゞ本の発行が立ち往かなくなるという事態をもはや考えられないものになっています。矢崎氏編による新たな新仮名遣いによる新全集が、2003年秋から2004年春にかけて出版され、今も継続発行されるなど、JULAのみすゞ本の発行は盤石なものになっています。他社による出版を排除する実質的必要性は失われてしまっています。
 
②また、遺族への還元という点でも、200418日付の読売新聞の金子みすゞ特集連載によれば、「舞台、映画、ドラマ、そして展覧会。みすゞに関する本も200万冊以上が出版され、今や人気は衰えることを知らない。」とありますから、遅ればせながら95年以降に「著作権料」を支払うことにより目的は十分に達せられたことでしょう。
 
③そして、今では、JULA出版局によるサイトだろうと思いますが、「金子みすゞ詩集」と言うサイトで、約360編の詩がアップされています(JULA出版局のロゴがついていて、転載を禁ずると書いてあります)。
 
 
 ネットでアップしても、詩集の売れ行きには影響しないとの判断があったからこそ、こうして多数の詩がネットで無償公開されているのでしょう。2001年の開設です。

  <補足>高遠信次氏から、このサイトはJULAのものではないと思われる旨のご指摘をいただきまし        た。下記コメント欄をご覧ください。 

④また、全集にはるかに先立つ先駆的な詩集である『繭と墓』の復刻版も出版されていて、アマゾンで簡単に買うことができます。30編が収録されています。また、金子みすゞが投稿していた『赤い鳥』や『童話』などの童謡雑誌の復刻本も販売されるようになっています。「日本の古本屋」などの古本サイトにアクセスすれば、容易にたどりつくことができます。どこかの図書館で閲覧は可能ではないでしょうか。それらに掲載されている詩は、JULAの全集に拠らずともアクセスすることはできるようになっています。
 
●ここまでの段階に至ったのであれば、著作権法の原則になじまない異例の運用を他人に強いる必然性は完全に失われています。
 「みすゞ本とそれを発行するJULAを存続させたい」、「それまでの赤字を一掃し黒字転換させたい」というやむにやまれる事情で異例の運用に協力してもらったということであれば、その必要性がなくなった時点で、その運用を打ち切るのが筋でしょう。
 今や誰でもが、自由にみすゞの気に入った詩を引用して感想とともに紹介しあうこと、自らの視点に立った詩の分類、編集をして詩集を出版すること、みすゞの詩をもとにした演劇シナリオを作って上演すること、好きな詩を選んで朗読集を出すこと、等々を、矢崎節夫氏やJULA出版局には何らの気兼ねもせずに行うことを、矢崎氏とJULAは認めるべきです。

 「著作保存会の了解をとるように」「転載を禁ずる」との文言が、自由にみすゞの世界を楽しみたいみすゞファンにとってどれだけ心理的重荷になっていることでしょうか。
 
 個人によるみすゞの数編の詩を紹介するサイトであっても、「金子みすゞ著作保存会の許可を得て掲載しています」とか、「現在保存会に使用を申請中です」「著作権の制約があって、ここでは掲載できません」とか、あちこちに書かれている状況は異様ですし、「詩の掲載は保存会の許可を得て下さい」と、矢崎氏らの代理人のようなことまで書いている個人サイトも少なからずあるのをみると、正直辟易してきます。
長門市や他の一部自治体、文科省もそれにならっているのも問題です。
「金子みすゞ著作保存会」のこと自体を調べようと思って、グーグルで検索すると、ヒットするのは、そんなサイトの文言ばかりです。いつまで検索結果ページをめくっていっても、肝心の保存会情報は得られないので、検索を断念しました。
 著作保存会の了解をとるということに疑問を投げかけながらも、「よくわからない」と困惑しているファンの姿をみるにつけ、彼らの罪は大きいと思います。

 
●金子みすゞ自身が投稿・公表した詩以外の作品が世に伝わったことについて、矢崎氏とJULA出版局の貢献を認めることは誰もがやぶさかではないと思いますから、その点に「敬意」を払うということであれば、その詩を利用する場合に出所を記載することで、十分に目的は達せられると思います。
ただ、商標権取得による他人の事業の妨害や、他人の使用・研究・鑑賞への干渉等の実態がわかってしまうと、せっかくの「発掘」の功績も色褪せてしまいました。
 
 次回以降、矢崎氏やJULAに何ら気兼ねすることなく、「金子みすゞ」を公共財産として、その詩の世界を自由に楽しむことができるような環境にするための方策などについて考えていきたいと思います。
                           

※ 時系列で整理してみました。
 
1980年  著作権失効
1981年  矢崎節夫氏が、みすゞ実弟の上山雅輔氏から、遺稿集等を入手。娘の上村ふさえ氏とも、雅輔氏を仲立ちとして知りあう。
198312月 朝日新聞社会面に、みすゞ遺稿集の「発掘」が報じられる。
19842月 金子みすゞ全集が、JULA出版局から出版(与田準一氏編)。限定千冊。
 同 8月  全集初版完売により、写真製版により増刷(千冊)。
 同 8月  矢崎氏編による第1選集「わたしと小鳥と鈴と」出版。

1989年 実弟の上山雅輔氏死去。
1993年3月 矢崎氏『童謡詩人 金子みすゞの生涯』をJULA出版局から出版。
同年4月〜 朝日新聞の天声人語でみすゞの詩が3編取り上げられ、マスコミの番組が続き注目を集める。本格的ブームが始まる。
1994年  国語教科書の多くにも翌年度からのみすゞの詩が採用決定。
       矢崎氏、絵本・童話5冊を出版。講演は例年の2倍の50回に。

1995年  2選集や「ふうちゃんの詩」などが出版。
1995年頃 娘の上村ふさえ氏に「著作権料」(印税)が支払われ始める。同氏は、母親に捨てられたと
     の思いが払拭されたこともあり、以降積極的に交流会等に参加。
      第1選集が、累計約30万部に。   
 
1998年  ハルキ文庫が初めて、金子みすゞ著作保存会の許諾を得て、文庫本詩集を発刊。
1999年7月 JULA出版局が「金子みすゞ」で商標登録申請(出版物、肉魚他の食料品、有価証券等の3区分)
2000年12月  商標登録が認められる。
200310月〜20044月  矢崎氏監修による新装本の金子みすゞ童謡全集が発刊。
 
 ※ 金子みすゞ著作保存会の設立時期は不明。
                                     続く

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「金子みすゞ詩集」というサイトはJULA出版局が開設したものでないと思われます。その根拠は、
1.ロゴマークが違う。JULAのロゴマークは背景が茶色で、うさぎのイラストが本の上に書いてあります。
2.HPのアドレスからは個人が開設したように判断される。
3.JULAの開設ならばみすゞの写真が掲載されるはずだし、みすゞの発掘について、矢崎氏の功績が長々と書かれると思われる。ところがここには矢崎氏の「や」の字も出てこない。
4.リンク先に「みすゞこうぼう」があるが、矢崎氏のここへの圧力を考えれば、JULAの開設するサイトでここがリンク先として掲載されるとは考えられない。
5.そしてこれが最大の理由ですが、全集や選集を発売しているのに、無償で詩を公開するよう「度量」はJULAにも矢崎氏にもない。もしあれば、みすゞの商標権を登録しようなどという姑息なことはしない。

私はこのようなサイトがあっても何ら問題ないと思いますが、JULAのロゴマークまで作り、JULAが作製したかのように誤認させるのはやりすぎでしょう。 削除

2012/2/26(日) 午前 1:00 [ 高遠信次 ] 返信する

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コメント有難うございます。確かに、ご指摘の点からするとJULAのサイトと考えるのは難しいですね。個人の方が運営しているのであれば、ロゴは外したほうがいいですね。記事本文の当該部分に、高遠様のご指摘があった旨、補足として記載させていただきました。引き続き、お気づきの点があればお願いできれば幸いです。

2012/2/26(日) 午前 8:50 [ teabreak ] 返信する

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11回にわたる掲載、お疲れさまでした。その情熱と緻密な論の展開に心から敬意を表します。貴殿に刺激され、私もブログに「金子みすゞの詩の公開について」をさらに書き、このブログのことも触れましたので、お立ち寄りください。 削除

2012/2/28(火) 午後 3:51 [ 高遠信次 ] 返信する

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有難うございます。中原中也記念館の試み、興味深く拝見しました。
引き続き、書いていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

2012/2/28(火) 午後 8:28 [ teabreak ] 返信する

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昔から金子みすゞの作品がネットに出ていないので不思議に思っていましたが、丁寧な説明で良くわかりました。

しかし、金子みすゞの作品が純粋無垢である分、より一層、どろどろとした嫌なものが心に生まれてしまいました。
金子みすゞもふさえさんも、争いを嫌う心優しい方なのでしょう。
それが、金子みすゞの悲劇的な最期に繋がった気がします。

ありがとうございました。 削除

2018/7/31(火) 午後 10:54 [ タケ ] 返信する

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> タケさん
投稿有難うございます。金子みすゞの世界とは対極の世界をご紹介してしまったようで、申し訳ありません。

もうおそらく、この記事で紹介した当時のようなごたごたはなくなっているものと信じたいですが、いずれにしても、金子みすゞもふさえさんも、そのごたごたには本来何の関わりもありませんから、純粋な詩の世界に浸っていただければと思います。

2018/8/1(水) 午前 0:45 [ teabreak ] 返信する

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